あくびの役割
「あくび」とは、口を大きく開けながら数秒かけて深い呼吸をする運動のことを指し、人は1日に7〜8回程度、あくびをするとされています。 このあくびには、目を覚ます覚醒効果や、血流を増やして新鮮な血液を脳へ送る役割などがあると言われています。
ですが反対に、覚醒から睡眠へ変化させる時にもあくびが出たり、緊張状態から解放されてリラックスする効果があるとも言われています。つまり、あくびの役割についてはまだ解明されていないことが多いのですが、覚醒や睡眠、緊張、リラックスなど、脳の状態を変化させるスイッチの役割をしていると考えられています。
あくびが出る原因
あくびは、脳の視床下部(ししょうかぶ)という、自律神経の調整などをする部位の中にある室傍核(しつぼうかく)という場所が指令を出すことによって起こると言われています。 では一体、どのようなタイミングであくびが出るのでしょうか。1:睡眠不足
あくびは、脳を睡眠状態から覚醒状態に切り替える時に出ると考えられています。あくびをすることで覚醒の脳波であるβ波が出るため、睡眠不足の時にあくびをすることで眠気を覚ますというわけです。 車の運転中や会議中など、絶対に寝てはいけないタイミングでも出やすくなります。それは、脳が眠い状態から覚醒状態に近づけるためと考えられています。 また人は退屈を感じると眠気が誘発されるので、退屈なシーンであくびが出る人も多くいます。2:酸素不足
眠くなくてもあくびが出る場合は、脳が酸欠状態になっているからかもしれません。脳の酸欠状態とは、呼吸によって十分な酸素を取り込めず、脳への酸素が不足している状態です。
例えば、満員電車や締め切った部屋などに多くの人が密集すると、酸素濃度が薄くなり、呼吸が浅くなりやすいです。酸素不足は決して珍しいことではなく、誰にでも起こり得ます。 また、貧血や車酔いなどの体調不良によって、あくびの量が増えることもあります。あくびは、より多くの酸素を取り込むことができるので、酸素不足を補おうとする一種の生理現象とも考えられます。
生あくびとは?
あくびには、冷たい空気を深く吸い込むことで、脳の温度を下げたり、脳の覚醒を促す効果などがありますが、眠い時に出るあくびとは別に、眠気が無いにも関わらず出る「生あくび」と呼ばれているあくびもあります。どちらも明確な原因が解明されていない生理現象ですが、生あくびには、眠気を覚ますあくびとは違う役割があり、病気のサインの可能性もあると言われています。
生あくびは病気のサイン?
眠くないのに、頻繁に生あくびが出る場合は、病気の可能性があります。それぞれに該当する自覚症状があり、急に生あくびが増えたと感じる場合は、病気の予備軍またはすでに発症しているかもしれないので、すぐに医療機関を受診しましょう。1:脳梗塞(のうこうそく)
脳梗塞は、脳に酸素や栄養を送る脳血管が詰まり、脳に障害が起こる病気です。 脳は場所によってそれぞれ役割があるため、障害の起きた部位によって症状が異なりますが、一般的に、手足の運動や感覚まひ、話しにくさ、注意機能の低下、フラフラするなどの症状が起こります。2:脳腫瘍(のうしゅよう)
脳腫瘍は、頭蓋骨内に腫瘍が発生する病気です。 腫瘍によって脳が圧迫されることで、さまざまな機能障害を引き起こすため、脳梗塞と同様の症状が起きます。また脳腫瘍によって血管が詰まりやすくなるため、脳梗塞を併発する可能性もあります。3:貧血・低血圧・狭心症
脳は、血液によって運ばれる酸素や栄養によって正常な機能を維持することができています。 そのため、貧血(血液に赤血球が不足している状態)や、低血圧(血圧低下によって血液が十分に行き届かない状態)、狭心症(心臓を取り巻く血管・冠動脈が細くなって血液が流れにくくなった状態)などでは、脳に異常をきたすことがあり、一般的に、目の粘膜や爪が白い、立ちくらみ、疲れやすいなどの症状が起こります。 貧血や低血圧は我慢できてしまうケースもありますが、放置したままにはせず、改善を図りましょう。4:睡眠時無呼吸症候群(SAS)
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、眠っている間に一時的に呼吸が止まったり低呼吸になる病気です。 睡眠時に無呼吸や低呼吸になることで酸素濃度が低下し、脳も体も酸欠状態に陥るため、睡眠の質が悪くなります。そのため、睡眠時間が確保できていて自分ではしっかり眠っているつもりでも、脳が休まらないので、いつの間にか寝不足の状態となってしまいます。
頻繁なあくびや日中に耐えられないほどの眠気がある場合は、一度、寝具や睡眠環境を見直してみましょう。睡眠の質を高めることで、睡眠時無呼吸症候群を改善することができたり、満足のいく睡眠を得ることができる可能性があります。
5:その他
上記でご紹介した4つの病気の他にも、偏頭痛や熱中症、車酔い、更年期障害などの体調不良でも、生あくびが増える可能性があります。 ただの生あくびと思わず、症状に心当たりのある方は、医療機関を受診してください。予防法
退屈そうだったり怠けているように見られてしまう、あくびを予防する方法をご紹介します。1:先ずはしっかり睡眠
頻繁にあくびをする原因の中で最も多いのが睡眠不足です。自分では眠気を感じていなくても、実際には睡眠不足に陥っている場合もあります。 睡眠時間が足りず日中に眠気を感じる場合は、睡眠時間を長くするか昼寝をしましょう。“6時間睡眠が2週間続くと、脳のパフォーマンスは、ひと晩徹夜した時と同程度になる”と言われているほど、睡眠不足と日中のパフォーマンスには密接な関係があります。
ですが、しっかり睡眠時間を確保していても、睡眠の質が悪いために寝不足に陥っているケースもあります。反対に、睡眠の質が高ければ、少ない睡眠時間内でも効率的に体や脳を休めることができ、翌朝、頭がクリアな状態を維持することができるので、集中力アップ、イライラしない安定したメンタルなど、仕事のパフォーマンスにつながる効果が期待できます。 体に合わない寝具や、快適でない睡眠環境では睡眠の質が低下してしまうので、深い睡眠を得られる枕やマットレス、寝室の環境などを意識してみましょう。
2:適度な運動
デスクワークやゲームなどで長い時間同じ姿勢を続けていると、血行不良になって酸素が全身に行き渡らなくなるため、あくびが出ます。血流を促すために、小まめに立ち上がったり、ストレッチや軽い運動を取り入れましょう。 日々の生活に適度な運動を取り入れて筋肉をほぐすことで、寝つきがよくなるので、睡眠不足解消にもつながります。3:深呼吸
深呼吸は体内に多くの酸素を取り入れることができるので、酸素不足によるあくび予防に効果的です。 お腹を膨らませるようにゆっくりと鼻から息を吸って、お腹を凹ませるようにゆっくりと口から息を吐き出しましょう。10回程度、腹式呼吸を繰り返すことで、全身に酸素が行き渡り、酸欠状態が改善します。 何かに集中している時は呼吸が浅くなりやすいので、仕事の合間などに取り入れましょう。4:鉄分の摂取
鉄分が不足すると、体内に酸素を運搬する役目を担っている「ヘモグロビン」が少なくなり、貧血状態に陥りやすくなります。貧血になると、全身の細胞に酸素が行き渡りにくくなるので、頭痛やだるさ、肩凝り、息切れやめまいなどの症状が起きます。貧血を防ぐために、鉄分を豊富に含む食材を意識的に摂取しましょう。 成人男性の鉄分の摂取目標は、1日あたり7.5mg~1mgとされています。食品にすると、鶏レバー100g、あさり200g程度になりますが、食事で摂取するのが難しい場合は、鉄剤やサプリメントを服用しましょう。
ただし、鉄は過剰摂取の弊害もあるので、適正量を心がけてください。 鉄分には、体に吸収されやすい「ヘム鉄」と、吸収されにくい「非ヘム鉄」の2種類があり、十分な量の鉄分を摂取するには、両方をバランスよく摂取することが大切です。また、たんぱく質やビタミンCが含まれる食材と一緒に摂ることで吸収率が上がるとされています。 ヘム鉄が豊富な食材 煮干し、レバー、しじみ、あさり、ほたて、牡蠣 非ヘム鉄が豊富な食材 小松菜、枝豆、水菜、ほうれん草、サニーレタス、ブロッコリー