目が覚めるとベットから体が半分出ていたり、枕がズレて頭が落ちていたり……寝相の悪い日が続くと、しっかり熟睡できていない気がして心配になってしまいます。
ですが、起きた時に「自分は寝相が悪い?」と感じても、十分な睡眠をとれている場合もあります。 この記事では、寝相の良し悪しや、寝相の悪さが及ぼす悪影響、寝相が悪くなる原因と改善方法について解説しています。
そもそも寝相とは?
一般的に「寝相が悪い」とは、朝起きたときに眠りについた位置からかなり移動をしていたり、枕や掛布団などの寝具をきちんと利用できてないことを指します。
また、一見同じように考えがちですが、「寝相が悪い」と「寝返りを打っている」というのは別物です。 ずっと同じ姿勢で寝ていると、客観的には快適に眠っているように見えるかもしれません。
しかし寝返りには
- 血流の循環や体温調節
- 背骨の歪み調節
- 寝姿勢のリセット
などの効果があるので、睡眠中に動くこと自体に問題はなく、むしろ必要なことです。
一般的に、人は一晩で平均20〜30回寝返りを打つと言われており、質の高い睡眠に寝返りは必要不可欠なので、寝相が悪いことを一概に悪いとはいえません。
対して「よい寝相」とは、睡眠中も自然に直立したときのような、理想的な寝姿勢を保てている状態です。仰向け寝では、背骨がなだらかなS字状カーブになる姿勢が、横向き寝では、背骨と床が真っ直ぐ平行な姿勢が理想と言われています。
さらに重要なのが、後頭部から首、肩にかけてゆるやかなS字カーブが再現されていること。首のS字カーブが再現されていないと、首や肩に余分な負荷がかかったり、気道が圧迫されて呼吸が苦しくなってしまいます。
高さや硬さが合っていない枕では、枕や軸がブレて身体がだんだん斜めになってしまいますが、枕が合っていれば身体の軸がブレないので、何度寝返りを打っても元の位置に戻れます。
つまり、動かないことがよい寝相なのではなく「必要な寝返りを打っても正しい姿勢に戻れること」がよい寝相といえます。
寝相の種類
一般的な寝相の種類は大きく分けて3つあります。注意が必要な寝相もあるので、普段どのような姿勢で寝ているかをチェックしましょう。
理想の寝姿勢に関しては、下記の記事でも詳しく解説しています。
理想の寝姿勢とは?仰向け、横向き、うつ伏せ寝のポイントを徹底解説
仰向け型
最も一般的な寝相で、布団に背面をつけて天井を向いた寝姿勢です。仰向け型には、手脚を広げた「大の字」のほかに、両腕を頭の後ろに回す姿勢や、脚を組んで眠る姿勢などもあります。
バンザイ寝は要注意
仰向け型で気をつけたいのが、両手を上げた状態の「バンザイ寝」。バンザイ寝が多い方は、肩や背中の筋肉が凝っている可能性があります。
無意識に腕を伸ばしてしまうのは、腕を伸ばすと気持ちがよく、たくさんの空気を取り込めるからといわれています。
これは裏を返すと、
- 普段は肩や背中が凝っている
- 猫背や肥満、鼻づまりなどで普段から呼吸が浅い
などが当てはまるということです。
しかし、ずっと腕を上げたままだと筋肉が固まることで血行不良になり、結果的にさらなる肩こりを引き起こしてしまいます。さらにバンザイのポーズは顎を引いた状態になるため、いびきや睡眠時無呼吸症候群になるおそれもあります。
横向き型
その名の通り、横向きの寝姿勢です。手脚が伸びた状態の姿勢のほか、膝を曲げる姿勢や、身体を丸めてお腹を隠すように寝る「胎児型」があります。
うつ伏せ型
お腹が下を向いた寝姿勢です。首を曲げて顔を枕に押し付ける形になり、身体の歪みにつながりやすいため、あまりおすすめはできません。
寝相が悪い原因
寝相の悪さは、眠りの浅さが影響していると考えられています。
子どもの場合
睡眠には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」があり、寝返りを打つのは眠りの浅いノンレム睡眠のときです。子どもの睡眠周期は40〜60分と、90〜120分が平均である大人に比べて短いため、その分寝返りを多く打ちます。
また、子どもは体温調節機能が完全に発達していません。こもった熱をうまく逃すことができないため、寝返りを打つことで体温の調節をしています。
これらの原因により、子どもは寝相が悪くなってしまうのです。
大人の場合
精神的な不安やストレスがある
不安やストレスは自律神経のバランスが乱れる要因です。
自律神経は、活動モードで優位になる「交感神経」とリラックスモードで優位になる「副交感神経」の2つがバランスよく保たれることで構成されています。
不安やストレスが原因で交感神経が優位になっていると睡眠時にも影響し、眠りが浅くなります。 その結果、寝相が悪くなってしまうことがあります。
病気がある
持病が寝相の悪さに影響している場合も少なくありません。代表的な例は腰痛や肩こりなど、痛みをともなう持病です。睡眠中、痛みの症状を和らげるために体勢を変えようとすることで寝相が悪くなってしまうことがあります。
その他、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、皮膚掻痒症なども睡眠が浅くなる原因で、結果として寝相の悪さにつながるケースが多く見られます。
また、寝相の悪さが、以下のような病気の症状として現れているという可能性も考えられます。
睡眠時無呼吸症候群 | 睡眠中に呼吸が一時的に止まってしまう病気。呼吸が止まると、酸欠状態となった身体に酸素を補うため心拍数が高まって睡眠が浅くなる。 |
レム睡眠行動障害 | 夢のなかでの出来事と同じ行動をとってしまう病気。大きい寝言を言う、手足を動かす、起き上がって歩くなどの症状が起きる。 |
むずむず脚症候群 | 夕方から就寝時にかけて下肢の不快感(むずむず、痛みなど)が起こる病気。不快感が原因で睡眠が浅くなることがある。 |
これらに当てはまる場合は医療機関の受診をおすすめします。
睡眠環境が整っていない
部屋の温度や湿度、寝床内温度といった睡眠環境が整っていないと、必要以上に寝返りを打って調整しようとしたり、枕やマットレスなどの寝具が合わないために身体を頻繁に動かしているかもしれません。
睡眠環境が整っていないことが原因で寝相が悪い場合は、ぐっすりと眠れていないため、寝起きに疲労感が取れ切れていないなどの悪影響が起こります。
寝相が及ぼす影響
歯並びや顔が歪む
頭の重さは体重の10%と言われています。もし一晩中、顔の一部に重さがかかり続けたら、奥歯の噛み合わせに影響を及ぼしたり、頬骨や顔の歪みにつながります。 すぐに変化が見えるわけではありませんが、横向き寝やうつ伏せ寝、頬杖をつく習慣が定着している方は注意が必要です。
また、成長期にこれらの寝相を習慣的におこなってしまうと、顔立ちに歪みができるので気をつけましょう。
一緒に寝ている人に迷惑がかかる
手脚をバタバタと動かして隣に寝ている人に当たったり、寝返りの範疇を超える動きを繰り返すと、一緒に寝ている人が目を覚ましてしまう原因となります。
また、一緒に寝ている人を強くぶったり蹴ったりする行動や、ベッドから落下したり、アクロバティックともいえるような寝返りを繰り返す人は、睡眠中に夢と同じ行動をとってしまう「レム睡眠行動障害」という病気の可能性もあるかもしれません。
もし「寝相が悪い」という範囲を超えているようであれば、一度医療機関を受診してみましょう。
集中力が低下する
寝相が悪い理由の一つに、寝返りの回数が多すぎる可能性があります。
一般的に、人は一晩で平均20~30回寝返りを打つと言われていますが、寝返りが多すぎるとその動きによって睡眠が浅くなってしまうので、睡眠時間を確保していても睡眠不足になりやすい傾向にあります。そのため日中に眠気を感じてしまったり、集中力が低下し、仕事の効率や学力低下につながります。
寝相が悪い場合の改善方法
前述したように、寝相が悪くなる要因には眠りの浅さが関係している可能性があるので、睡眠環境を整えることはとても大切です。
寝室の環境を整える
寝室の光や音、温度、湿度を整えることで深い眠りを得られます。
部屋の明るさ(光)
睡眠を促すホルモン「メラトニン」は、照度が高い光を浴びると分泌が抑制されてしまいます。メラトニンの分泌が不足すると脳が覚醒し、スムーズな入眠の妨げになるため、眠る1時間前からは強い光を浴びないようにしましょう。
また、白色や青色の照明よりも、オレンジ色に近い暖色系の照明がおすすめです。 眠るときに真っ暗なのが苦手な方は、間接照明を顔から離れたところに置いて調節しましょう。
音
睡眠前後や睡眠中の物音レベルは、図書館の中や、風に吹かれた木々から発せられる音程度の静かな環境が望ましいといわれています。また、換気扇やテレビの音、ドアの開閉音などの生活機器が発する程度の音量ですら、半数の人は睡眠が阻害されるそうです。
そのため、テレビやラジオをつけたまま眠ると、覚醒が促されて睡眠の質が悪くなってしまいます。睡眠時には、家の外からの騒音を遮断したうえで、テレビやラジオを消すのがおすすめです。
無音では眠れないという方は、優しい楽器の音色や自然の中の音などが聴ける、睡眠向けのBGMがおすすめです。
温度と湿度
個人差はあるものの、眠りに適した寝室の室温は以下が理想とされています。
室温 | 夏:25〜27度前後 冬:15〜18度前後 |
湿度 | 通年:50〜60% |
また、布団の中の温度と湿度は
- 温度:33度
- 湿度:50%
が快適とされています。
参考:快眠のためのテクニック -よく眠るために必要な寝具の条件と寝相・寝返りとの関係|厚生労働省 e-ヘルスネット
夏と冬では外気温が異なるため、シーズンに応じて寝具やエアコンをうまく利用して睡眠環境を調整しましょう。特に冬は乾燥しやすいため、加湿器の活用をおすすめします。
寝具を整える
深い眠りを得るためには、自分に合った寝具で眠ることも大切です。
枕
理想の枕の高さは、仰向けで寝たときに頭から首にかけてのS字カーブを埋められる程度の高さです。筋肉や脂肪のつき方によって異なりますが、1〜6cmが一般的なS字の深さなので、これを目安に枕の高さを選ぶとよいでしょう。
また、素材も寝心地を左右する要素の一つ。硬すぎると頭がフィットせず、やわらかすぎると沈み込んで寝返りが打てないので、ほどよい硬さのものを選びましょう。通気性がよいものを選ぶのも大切です。
サイズは頭3つ程度のもので、寝返りをうったときに頭が枕から落ちない大きさを基準にしましょう。
マットレスや敷布団
マットレスや敷布団は、体圧分散性に優れていることが大切です。スムーズな寝返りを促してくれる、ほどよい硬さのものを選びましょう。
また、硬さは、仰向けに寝転んだときに背筋が自然な立ち姿と同じようなカーブを描くくらいのものがおすすめです。マットレスがやわらかく腰や胸が沈み込みすぎると腰痛の原因になり、硬すぎると痛みが生じたり血行不良が起きたりしてしまいます。
寝ているあいだは汗をかくので、吸湿性や通気性のよいものを選ぶのもポイントです。
掛布団
掛布団は肌触りや軽さ、保湿性や吸湿性、放湿性、フィット感に優れているものを選びましょう。睡眠中に布団を蹴飛ばしてしまう場合は、布団の重さや室温が適しているかを確認してください。
パジャマ
私服のTシャツやスウェットではなく、睡眠の質を高めてくれるパジャマを着用するようにしましょう。パジャマは不必要な装飾や締め付けがなく、寝返りが打ちやすくなります。 また、パジャマの多くは吸湿性・通気性に優れた素材が使われているため、快適な睡眠を実現できます。
寝相が悪くても改善できる!
睡眠の浅さは、寝相の悪さの要因の一つなので、睡眠の質を高める対策法を実践することで寝相を改善できます。寝相が悪く、しっかり睡眠時間を確保してもいまいち疲れが取れない方は、一度寝室や寝具などの睡眠環境を見直してみましょう。