誰しも一度くらいは「朝起きるのが辛い」「もっと寝起きを良くしたい」と思ったことがあると思います。目覚めが悪いと、「1日中身体がだるい」「頭が働かない」など、仕事や生活のパフォーマンスも下がるもの。そこでこの記事では、朝スッキリ起きるための方法をご紹介します。
目覚めが悪いと感じる人の割合は?
ブレインスリープが、20歳〜69歳の男女252人を対象に「睡眠に関する悩み」のアンケートを実施しました。
252人中、「起きたときに疲れがとれない」と回答した方が70人と最も多く、次いで、54人が「起きたときに眠気がとれない」と回答。スッキリと起きられずに悩んでいる方が多いことがわかりました。
また、「何度も目覚めてしまう」「日中に眠くなる」と回答した方も多く、十分な時間眠っても疲れがとれず、睡眠の質が悪いと感じている方が多いことがわかります。
ペンシルベニア大学とワシントン大学がおこなった研究によると、「6時間睡眠が2週間続くと、脳のパフォーマンスは二晩徹夜したときと同程度になる」とされており、睡眠不足と日中のパフォーマンスには密接な関係があります。
参考:追加覚醒の累積コスト:慢性的な睡眠制限と完全な睡眠不足による神経行動機能と睡眠生理学への用量反応効果|PubMed
かといって、忙しい現代人が毎日長時間の睡眠時間を確保するのは難しいものです。そのため、最近は睡眠時間だけでなく睡眠の質に注目が集まっています。
睡眠の質が高ければ、限られた睡眠時間内で効率的に身体や脳を休め、翌朝、頭がクリアな状態を維持できます。結果的に集中力アップ、イライラしない安定したメンタルなど、仕事のパフォーマンスにつながるでしょう。
朝スッキリ起きられない主な原因
現代社会における生活様式の変化にともない、不眠に悩む方が増加しています。特に日本では、成人の約20%(5人に1人)が睡眠に関する問題を抱えており、30〜40%がなんらかの不眠症状を経験しているとされます。
なかでも慢性不眠症は成人の約10%に見られ、原因としてはストレスや不安、アルコールの影響や睡眠環境まで実に多様です。そこで、スッキリとした目覚めを妨害している原因を7つご紹介します。
過度のストレス
悩み、イライラ、緊張などの心理的ストレスは、脳を活性化させる交感神経を働かせます。そのため寝付けても眠りが浅く、熟眠できなくなります。ストレスを抱え込まないようにするのはもちろん、寝る直前はなるべく頭を使わないように意識しましょう。
多忙による不安感
やるべきことが多すぎて整理整頓できていない事案があると、眠る前に思い出して不安に感じ、眠れなくなってしまうこともあります。感情が不安定なまま夜を迎えないように、やるべきことや予定を可視化するなどして、頭のなかを整理しておきましょう。
過度の飲酒
アルコールは少量飲む分には、スムーズな入眠の手助けになると考えられていますが、過度な飲酒は眠りの質を下げるためおすすめできません。それが慢性的に続くと、常に不眠の状態となり、朝スッキリと起きられなくなります。
夜遅い食事
食後、胃腸の働きが落ち着くまで約2〜3時間はかかるといわれているため、夕食は寝る2〜3時間前までに済ませましょう。もし夕食が遅くなってしまう場合は、早い時間に間食をし、夜は消化のよいメニューにしてください。
いびきや睡眠時無呼吸症候群
日常的にいびきをかいている方は、睡眠時無呼吸過眠症候群(SAS)の可能性があります。この病気は、睡眠時に頻繁に無呼吸や低呼吸になり、脳も身体も酸欠状態に陥るため、眠りの質が悪くなってしまいます。
十分な時間眠ったのに疲れがとれない方や、日中強い眠気に襲われる場合は、SASの可能性も疑ってみるとよいかもしれません。
ノンレム睡眠の浅さ
睡眠には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の2種類があります。個人差はありますが、一般的に入眠直後は、脳が深く眠っているノンレム睡眠の状態です。
そして入眠から約90分後に、脳が起きているレム睡眠に変わります。そのあとは約90分ごとにノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返し、明け方に近づくにつれ、ノンレム睡眠の間隔が短く、レム睡眠の間隔が長くなっていきます。
脳や身体の疲労感を回復してくれる深いノンレム睡眠がとれないと、長時間眠っても脳は十分に休まりません。また、深い睡眠が取れないと、光や物音で目が覚めてしまうことが増え、朝起きた際に熟睡感が得られにくくなります。
睡眠環境
快適な睡眠を得るためには、寝室環境の整備がとても重要です。特に「光・温度・音」の3つの要素が睡眠の質に大きく影響を与えることが知られています。
例えば、季節に合っていない寝具を使用したり、適切でない室温や湿度の環境で眠ったりすると、体温調節がうまくいかず睡眠が浅くなってしまいます。
その結果、夜中に何度も目が覚め、朝になってもスッキリと目覚められないといった問題が生じやすくなるのです。良質な睡眠を確保するためには、これらの環境要因を季節や好みに応じて調整するのが大切です。
朝スッキリ起きる方法12選
朝の目覚めは、行動によって変えられることがあります。ここからは朝スッキリ起きる方法を12項目ご紹介します。
入眠8時間前からカフェインの摂取を控える
カフェインは脳を刺激して覚醒状態にします。個人差はありますが、摂取後30分程度で作用し始め、最大8時間程度持続するとされています。
そのため、コーヒーや緑茶、エネルギードリンクなど、カフェインを含む飲み物は夕方以降の摂取を控えるのがおすすめです。
夜遅くまでカフェインの効果が残ることで、就寝時になっても脳が興奮状態のままなので、寝つきが悪くなったり睡眠の質が低下したりする可能性があります。良質な睡眠のためには、カフェイン摂取のタイミングにも注意を払うことが大切です。
入眠2~3時間前までに夕食を済ませる
快適な睡眠と健康的な朝を叶えるためには、就寝前の食事管理が重要です。寝る直前の食事は胃に負担をかけ、睡眠の質を低下させるだけでなく、翌朝の胃腸の調子にも悪影響を及ぼします。
特に脂肪分の多い肉類や揚げ物は消化に時間がかかるため、夕食での摂取は控えめにするのがおすすめです。
また、どうしても夜に空腹を感じた場合は、消化のよいスープやホットミルクなどの温かい飲み物を選ぶことで、良質な睡眠を妨げることなく空腹感を満たせます。
入眠前はブルーライトを避ける
ブルーライトには体内時計を狂わせる作用があり、人間の自然な睡眠サイクルに影響を与えることが知られています。
このブルーライトは、私たちが日常的に使用しているスマートフォンだけでなく、パソコンやテレビの画面からも多く発せられています。
特に夜間にこれらの機器から発せられるブルーライトを浴びることで、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌が抑制され、寝つきが悪くなったり、睡眠の質が低下したりするのです。
快適な睡眠のために、就寝前の1〜2時間はデジタル機器の使用を控えるようにしましょう。
入眠90分前までに入浴する
自律神経は、身体を動かすときに優位になる「交感神経」と、リラックス時に優位になる「副交感神経」に分かれており、互いにバランスをとりながら身体の調整をしています。
眠る90分前に少しぬるめのお湯(40度)に浸かると、リラックス効果で副交感神経が高まるだけでなく、体温が下がるタイミングで眠気を誘発させられます。
また、体温には「皮膚温度」と「深部体温」の2種類があり、深部体温は皮膚温度より2度ほど高い状態です。良質な睡眠を得るためには、皮膚温度を上げて深部体温を下げることが効果的です。
この理想的な体温バランスにするために、最も簡単な方法が就寝前の入浴です。ただし、入眠直前に42度以上の熱いお風呂に浸かると、交感神経が高くなるので気をつけましょう。
また、就寝90分前の入浴方法を詳しく知りたい方は下記のコラムもご覧ください。
第7条 就寝90分前に入浴完了/すぐ寝るときはシャワーにする
自分に合った寝具を使う
快適な睡眠を得るためには、枕や布団にこだわりましょう。体型や寝姿勢に合っていない寝具を使用すると、首や背中に余計な負担がかかって呼吸がしづらくなり、いびきが悪化します。
また、身体が寝具に合わないことで寝返りが増えたり、無意識のうちに体勢を直そうとして睡眠が浅くなったりするかもしれません。そのため、自分に合った寝具を選ぶことは、良質な睡眠につながります。
また、寝具の選び方を下記でも詳しくご紹介しているので、参考にしてください。
睡眠の質を上げる枕の上手な選び方。後悔しない選定基準とは?
朝の目覚めが変わる!?QOLが上がるマットレスの上手な選び方
部屋を暗くして寝る
メラトニンは睡眠を促進する重要なホルモンですが、その分泌量は周囲の明るさによって異なります。部屋を暗くするとメラトニンの分泌が促進され、自然な眠気を感じやすくなります。
そのため、就寝前には照明を少し落として薄暗い環境を作ることが、良質な睡眠への第一歩です。暗闇が苦手な方は間接照明を使用し、リラックスできる程度の明るさを保ちながらメラトニンの分泌を促しましょう。
朝日を浴びる
起きたらまずカーテンを開け、太陽の光を15秒ほど浴びましょう。太陽の光を浴びると、睡眠をつかさどるメラトニンの分泌がストップします。 元気の源であるセロトニンが活発に分泌されるようになるので、身体も頭もシャキッと目覚めるでしょう。
また、光を目に入れることで体内時計がリセットされ、約14〜16時間後に眠気のスイッチが入るといわれています。
コップ1杯の水を飲む
人間は睡眠中にコップ1杯分(約200cc)もの汗をかくため、起床時の水分補給は必須です。朝一番にコップ1杯の水または白湯を飲むことで、夜間に失われた水分を補給できます。
体内の水分バランスが整うだけでなく、腸の動きも活発になり、自然な排便を促します。さらに、朝の水分補給は身体をすっきりと目覚めさせ、体内時計の調整にも役立ち、結果として夜の睡眠の質も向上させられるでしょう。
ストレッチをおこなう
朝のストレッチは、夜間の睡眠で固まった身体をほぐし、一日を健やかにスタートさせるために大切です。寝起きのストレッチには、肩こりや背中の凝りを改善し、夜間に溜まった身体のむくみを緩和する効果があります。
また、基礎代謝を向上させ、身体を休眠モードから活動モードへと切り替える働きもあります。
特に効果的なのが全身の背伸びストレッチです。仰向けに寝た状態で手足を大きく伸ばし、全身を気持ちよく伸ばすとよいでしょう。
さらに、手首と足首を大きく回すストレッチをおこなうことで、末端の血行が促進され、身体が目覚めやすくなります。
これらの簡単なストレッチを朝の習慣に取り入れることで、一日中好調な体調を維持できるでしょう。
目覚めによい音楽を流す
大きなサイレン音、警告音、工事の音など、人が不快に感じやすいといわれている音は目覚めるためには効果的ですが、交感神経が一気に優位になってストレスを感じてしまいます。
耳への刺激という観点から、木琴の音や、鐘の音、さざ波の音など、1,500〜3,000ヘルツ程度の高い周波数の音が、目覚めによいとされています。最初は小さな音に設定し、徐々に大きな音にしていくなど工夫しましょう。
眠りの浅いタイミングで起きる
人間の身体は朝方になると自然と目覚めの準備を始め、体温や心拍数が徐々に上昇します。睡眠が浅くなっていくため、このタイミングで目覚めることができれば、気分よく朝を迎えられます。
効果的な目覚めの方法として、起きたい時間の20分前に、小さな音量の短いアラームをセットするのがおすすめです。この時点で目が覚めれば、睡眠が十分に浅くなっていたことになり、理想的な目覚めのタイミングだったといえるでしょう。
仮にこの最初のアラームで起きられなくても、本来の起床時刻では自然と睡眠が浅くなっている可能性が高く、結果としてすっきりと目覚められるでしょう。
朝食をとる
最初の食事により体温が上昇すると、体内時計がリセットされ、脳と身体が活動モードへとスムーズに切り替わります。特にエネルギーになるご飯やパン、体温を上げるタンパク質を上手にとり入れましょう。
また、朝のモチベーションを高めるために、前日から楽しみにできるものを用意しておくことも効果的です。例えば、好きな音楽を聴く時間を作ったり、おいしい朝食を前日に準備したりすることで、朝起きるのが楽しみになるでしょう。
朝スッキリ起きるためにおすすめのアイテム5選
ここからは、ブレインスリープがおすすめするアイテムをピックアップしています。良質な睡眠を得るためにも、ぜひ参考にしてください。
朝スッキリ起きる方法を試して気分よく目覚めよう!
良質な睡眠は、心身の健康維持だけでなく、仕事や日常生活のパフォーマンスを最大限に発揮するための基盤です。これまでご紹介した就寝前の環境づくり、朝の目覚めの工夫など、様々な方法を組み合わせることで、より質の高い睡眠を得られます。快適な睡眠習慣は、充実した毎日を送るための大切な一歩となるでしょう。
参考書籍
『スタンフォード式 最高の睡眠』(サンマーク出版)
『睡眠障害 現代の国民病を科学の力で克服する』(角川新書)