吐き気の主な原因としては、食べ過ぎや飲み過ぎ、ウイルス性の感染症などがよく知られています。しかし、実は寝不足も吐き気を引き起こす原因の一つであることをご存じでしょうか?寝不足は、自律神経やホルモンバランスの乱れを引き起こし、消化器の働きを低下させます。
この記事では、寝不足で吐き気を感じる原因やメカニズムを解説します。寝不足で吐き気を感じるときの対処法や予防法も紹介しますのでぜひ参考にしてください。
寝不足で吐き気がするのはなぜ?
寝不足で吐き気を感じる場合、原因が寝不足だけとは限りません。以下のようにいくつかの原因が重なって、自律神経が乱れることで吐き気を感じている可能性があります。
- 寝不足などのストレス
- 生活の乱れ
- 体調不良
- いびき・睡眠時無呼吸症候群
- 医薬品の副作用
寝不足などのストレス
寝不足や精神的なストレスを抱えていると、「コルチゾール」が多量に分泌されます。コルチゾールとは、糖の生成や脂肪の分解、代謝の促進のほか、発熱や腫れなどの炎症を抑える役割があるホルモンです。
寝不足やストレスを抱えていると、それに負けまいとコルチゾールの分泌が急増し、交感神経が高ぶります。交感神経が活性化すると、その反応の一部として消化器の働きが低下するため、吐き気を生じることがあります。
生活の乱れ
不規則な睡眠やバランスの悪い食事などの生活の乱れも、吐き気が生じる原因の一つです。
不規則な生活習慣や栄養バランスの偏りは、自律神経が乱れる原因となります。 自律神経とは、身体の働きをコントロールしている神経です。胃液の量を調節する働きも担っているため、生活の乱れによって自律神経のバランスが崩れると、吐き気の症状が出る場合があります。
体調不良
体調不良も吐き気を感じる原因の一つです。ウイルスの影響だけでなく、 体調不良が続くと自律神経が乱れて、吐き気を引き起こしやすくなります。また、自律神経が乱れると睡眠が浅くなるため、長時間寝ても寝不足と同様の症状が現れることがあります。
いびき・睡眠時無呼吸症候群
いびきがある方や睡眠時無呼吸症候群を発症している方は、吐き気をより感じやすい傾向があります。
上記の症状が継続すると、食道の筋肉である「下部食道括約筋」が衰えるためです。下部食道括約筋には胃液が逆流するのを防ぐ役割があるため、この筋肉が衰えると吐き気や胃のむかつきを感じやすくなります。
医薬品の副作用
医薬品の副作用で吐き気を感じることもあるため、医薬品の服用頻度が高い方はそれも原因の一つとして考えられます。特に、強い薬を飲んだ場合や、体調がすぐれないとき、自律神経が乱れているときに薬を服用した場合は、副作用の影響が強く現れることがあります。
寝不足が身体に及ぼす悪影響

寝不足は吐き気以外にも、身体に以下のような悪影響を及ぼす可能性があります。
- やる気や判断力の低下
- 内臓機能の低下
- 免疫力の低下
- 食欲の増大
やる気や判断力の低下
寝不足の状態だと、脳にある前頭葉の働きが低下します。前頭葉とは、脳の大部分を占める大脳の一番前にある部分です。主に思考ややる気(自発性)、感情、性格、理性などを司るため、前頭葉の働きが低下するとやる気や判断力の低下につながります。
内臓機能の低下
寝不足の状態が続くと、自律神経が不安定になります。自律神経は、胃腸のぜん動運動や胃液の分泌など、消化器系の働きを調整する重要な役割を担っています。このため寝不足や不規則な睡眠、睡眠の質の低下などで睡眠不足の状態が続くと、自律神経のバランスが崩れ、内臓機能の低下を引き起こします。
免疫力の低下
睡眠中には、免疫機能を支え、細胞の修復や再生を助ける「成長ホルモン」が分泌されます。しかし、寝不足で成長ホルモンが十分に分泌されないと、免疫物質の生成が減少する、ウイルスを攻撃する役割を持つNK(ナチュラルキラー)細胞の活性度が低下するなどの理由から免疫力が低下し、感染症にかかりやすい状態になります。
食欲の増大
慢性的な睡眠不足は、食欲にも影響します。厚生労働省のデータによると、 4時間睡眠を2日間続けただけで、1日10時間睡眠をとった日に対して食欲が増大することがわかっています。食欲を抑えるホルモンである「レプチン」の分泌が減少し、食欲を高めるホルモンである「グレリン」の分泌が増加するためです。
参考:睡眠と生活習慣病との深い関係 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
このように睡眠不足は、食欲を調整するホルモンバランスにも影響を及ぼすことから、寝不足の状態が続くと食べ過ぎや間食が増え、体重増加の原因となる可能性があります。
寝不足による吐き気の対処方法と予防方法

寝不足で吐き気が生じた場合の主な対処法と予防法は以下のとおりです。
- 休息をとる
- 水や牛乳を飲む
- 胃腸に優しい食事を取り入れる
- 嗜好品の摂取を控える
- 健全な体型を保つ
- 質の高い睡眠を取る
休息をとる
吐き気を感じたら、まずは休憩をとることが大切です。少し身体を休めるだけでも、症状が軽くなることがあります。ただし、横になると胃液が逆流しやすくなって、吐き気が悪化することがあるため、椅子に座った状態で休むのがおすすめです。
水や牛乳を飲む
寝不足で自律神経のバランスが崩れると、胃液が過剰に分泌され、胃もたれや胸焼け、胃痛や吐き気などの胃腸症状が現れることがあります。
このような場合は、水や牛乳を飲むのが効果的です。胃酸が薄まることで症状の緩和につながります。特に牛乳は、胃酸から食道の粘膜を保護する役割があるためおすすめです。
胃腸に優しい食事を取り入れる
普段から胃に負担がかかる食生活をしていると、同じ体調でも吐き気が生じやすくなります。特に、脂肪分の多い食材や揚げ物、糖分の多いもの、柑橘類、刺激物は、消化活動を遅らせ、胃に負担がかかるため摂り過ぎないよう注意が必要です。
吐き気予防には、日頃から胃に優しい食事を心がけることが大切です。糖分や脂肪分、刺激物が少ない食材や、やわらかく消化が早い食材を選ぶことで、胃の働きを正常に保ちやすくなります。
嗜好品の摂取を控える
アルコールやコーヒー、タバコなどの嗜好品も、胃腸の不快な症状を引き起こす原因の一つです。アルコール・コーヒーの過剰摂取や喫煙は、胃酸の過剰分泌につながります。喫煙も、胃粘膜の抵抗力も低下させることから、胃痛を引き起こしやすいです。嗜好品の摂取はほどほどにし、胃腸症状がよく現れる場合は禁煙も考えましょう。
健全な体型を保つ
肥満体型の方は、脂肪によって腹圧が上昇し、胃酸が逆流しやすい傾向があります。また、食べ過ぎや早食いも胃の内圧が上昇し、胃酸の逆流を招く原因となります。
このため食生活を改善し、健康的な体型を維持することも吐き気予防の一つです。腹圧や胃の内圧の上昇を防ぎ、胃酸が逆流しにくい環境をつくることで、吐き気の予防につながる可能性があります。
質の高い睡眠を取る
十分に睡眠時間を確保していても、眠りが浅いなど睡眠の質が悪いと、寝不足と同じ状態が現れることがあります。睡眠の質は、規則正しい生活や適度な運動を心がけ、食事や入浴、睡眠環境を見直すことで改善が可能です。
以下の記事で、睡眠の質を上げる方法を10種類紹介していますので、できるものから実践してみてください。
睡眠の質を上げる方法とは?質の決まり方や質を下げてしまう原因も解説
寝不足による吐き気には病気が潜んでいる?
慢性的な寝不足の状態が続くと、生活習慣病に罹りやすくなるため注意が必要です。実際に、慢性的に寝不足な方は、糖尿病や心筋梗塞、狭心症などの冠動脈疾患といった生活習慣病に罹りやすいことがわかっています。
参考:睡眠と生活習慣病との深い関係 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
吐き気以外に、胃腸の痛みや急激な体重減少などがある場合は、一度医療機関を受診するのがおすすめです。
寝不足による吐き気を解消するために睡眠環境を見直そう
寝不足の状態は、自律神経やホルモンバランスの乱れを引き起こします。自律神経やホルモンバランスは胃腸の働きに関与しているため、これらが崩れると吐き気やむかつきなど胃の不快な症状が現れやすくなります。
寝不足による吐き気をはじめとした胃の不快な症状を解消するには、食事や運動、入浴などの生活習慣を見直し、質の高い睡眠を十分にとることが重要です。心も身体も元気に過ごせるよう、できることから始めていきましょう。