誰しも一度くらいは「朝起きるのが辛い」「もっと寝起きを良くしたい」と思ったことがあると思います。目覚めが悪いと、1日中体がだるかったり頭が働かなかったりと、仕事や生活のパフォーマンスも下がるもの。そこで、スッキリ目覚めるための方法をご紹介します。
<監修>
中島 正裕
理学博士/株式会社ブレインスリープ取締役CFO/睡眠健康指導士上級
1983年山口県出身。2007年東京大学理学部物理学科卒業、2012年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修了(理学博士)。
株式会社ブレインスリープには2019年5月の設立時より取締役として参画。CFOとして財務面の統括及びパートナー企業向けの睡眠コンサルティング関連事業に加えて、睡眠偏差値として公表している睡眠関連疫学調査の結果を基にした睡眠研究や企業向け健康経営サポート業務も担当。2021年11月に睡眠健康指導士上級資格を取得。
目覚めが悪いと感じる人の割合は?
ブレインスリープが、20歳〜69歳の男女252人を対象に『睡眠に関する悩み』についてアンケートを行いました。
睡眠の質が悪いと感じる人は多い
252人中、「起きたときに疲れがとれない」と回答した人が70人と最も多く、次いで、54人が「起きたときに眠気がとれない」と回答。スッキリと起きられずに悩んでいる人が多いことがわかりました。
また、「何度も目覚めてしまう」、「日中に眠くなる」と回答した人も多く、十分な時間眠っても疲れがとれず、睡眠の質が悪いと感じている人が多いことがわかります。
仕事の成果が出せている人ほど、眠りの質は高い
“6時間睡眠が2週間続くと、脳のパフォーマンスは、ひと晩徹夜したときと同程度になる”と言われているほど、睡眠不足と日中のパフォーマンスには密接な関係があります。
かといって、忙しい現代人が、毎日長時間の睡眠時間を確保するのは難しいもの。そのため、最近は睡眠時間だけでなく、睡眠の質に注目が集まっています。睡眠の質が高ければ、限られた睡眠時間内で効率的に体や脳を休めることができ、翌朝、頭がクリアな状態を維持することが可能です。集中力アップ、イライラしない安定したメンタルなど、仕事のパフォーマンスにつながる効果が期待できます。
つまり、睡眠の質を上げることは、仕事の成果を上げることにつながります。
なぜすっきり起きられないの?眠りを浅くする原因
ライフスタイルの多様化により、日本の成人の5人に1人は眠れない夜があることに悩んでいると言われています(※1)。そこで、スッキリとした目覚めを妨害している原因を6つご紹介します。
1:ストレス
悩み、イライラ、緊張などの心理的ストレスは、脳を活性化させる交感神経を働かせます。そのため寝付けても眠りが浅く、熟眠できなくなります。ストレスを抱え込まないようにするのはもちろん、寝る直前はなるべく頭を使わないように意識しましょう。
2:過度な飲酒
アルコールは、少量飲む分には、スムーズな入眠の手助けになると考えられていますが、過度な飲酒は眠りの質を下げるのでオススメできません。それが慢性的に続くと、常に不眠の状態となり、朝スッキリと起きられなくなります。
3:夕食の時間が遅い
食後、胃腸の働きがひと段落するまで約2〜3時間はかかると言われているので、夕食は寝る2〜3時間前までに済ませましょう。
また、脂肪分の多い食事は消化に時間がかかるため、夕食には脂肪分の多い肉類や揚げ物は控えるのがオススメ。どうしても小腹が空いてしまった場合は、スープなどの消化のいいメニューを選びましょう。もし夕食が遅くなってしまう場合は、早い時間に一度、間食をし、夜は消化のいいメニューにしてください。
4:多忙による不安感
やるべきことが多すぎて、整理整頓できていない事案があると、眠る前に思い出して不安に感じ、眠れなくなってしまうこともあります。感情が不安定なまま夜を迎えないように、やるべきことや予定を可視化するなどして、頭の中を整理しておきましょう。
5:就寝中の眠りの浅さ
睡眠には、“レム睡眠”と“ノンレム睡眠”の2種類があります。個人差はありますが、一般的に、入眠直後は、脳も体も眠っている“ノンレム睡眠”の状態です。そして入眠から約90分後に、脳は起きているが体は眠っている“レム睡眠”に変わります。その後は約90分ごとにノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返し、明け方に近づくにつれ、ノンレム睡眠の間隔が短く、レム睡眠の間隔が長くなっていきます。
脳や身体の疲労感を回復してくれる深いノンレム睡眠がとれないと、長時間眠っても脳は十分に休まりません。また、深い睡眠が取れないと、光や物音で目が覚めてしまうことが増え、目覚めたときの熟睡感が得られにくくなります。
6:いびき、睡眠時無呼吸症候群による睡眠の質の低下
日常的にいびきをかいている人は、睡眠時無呼吸過眠症候群(SAS)の可能性があります。この病気は、睡眠時に頻繁に無呼吸や低呼吸になり、脳も体も酸欠状態に陥るため、眠りの質が悪くなってしまいます。十分な時間眠ったのに疲れがとれない人や、日中強い眠気に襲われる場合は、SASの可能性も疑ってみるといいかもしれません。
寝る前に行う、目覚めを良くする方法
翌朝の目覚めは、寝る前の行動によって変わることがあります。
入眠後90分の睡眠をより深く眠る
“眠り始め90分の質が悪いと、その後何時間寝ても睡眠の質が悪い”とまで言われているほど、入眠後の90分が重要とされています。
入眠の前は携帯を見ない
スマホやパソコンなどの画面からの光刺激は、眠れなくなる原因のひとつと言われています。また、メッセージのやり取りや、SNSチェック、動画視聴など自体にも、脳を覚醒させる効果があると言われているので、入眠前は控えるようにしましょう。
副交感神経に切り替える(お風呂)
自律神経は、体を動かすときに優位になる交感神経と、体を休めるときに優位になる副交感神経に分かれており、互いにバランスをとりながら体の調整をしています。眠る1.5~2時間程度前に、少しぬるめのお湯(40℃程度)につかると、リラックス効果で副交感神経が高まるだけでなく、体温が下がるタイミングで眠気を誘発させることができます。
ただし、入眠直前に42℃以上の熱いお風呂につかると、交感神経が高くなるので気をつけましょう。
起床時に行う、目覚めを良くする方法
起床直後の眠気やだるさを軽減し、体を活動モードに切り替える方法を4つご紹介します。
1:朝日を浴びる
起きたらまずカーテンを開け、太陽の光を15秒ほど浴びましょう。太陽の光を浴びると睡眠をつかさどるメラトニンの分泌がストップし、元気の源であるセロトニンが活発に分泌されるようになるので、体も頭もシャキッと目覚めることができます。
また、光を目に入れることで体内時計がリセットされ、約14~16時間後に眠気のスイッチが入ると言われています。
2:ストレッチを行う
ストレッチをすると交感神経が活発になり、体や脳が睡眠モードから活動モードに切り替わります。また、睡眠中にこりかたまった筋肉がほぐれて血流が改善するので、体を動かしやすくなります。
3:目覚めにいい音楽を流す
大きなサイレン音、警告音、工事の音など、人が不快に感じやすいと言われている音は、目覚めるためには効果的ですが、嫌な気持ちが残ってしまうため心地よくありません。耳への刺激という観点から、木琴の音や、鐘の音、さざ波の音など、1,500~3,000ヘルツ程度の高い周波数の音が、目覚めにいいと言われています。さらに少し早めのテンポで、複雑なメロディだと、耳慣れしにくいので、朝の目覚めに効果的です。
4:眠りの浅いタイミングで起きる
適切な睡眠が取れていると、朝方にかけて身体が起きるための準備をします。例えば体温の上昇や心拍数の上昇がおこります。また起床に向けて浅い睡眠も増えていきます。ちょうど睡眠が浅くなったタイミングで起きると、目覚めをスッキリさせることが出来ます。
浅い睡眠で目覚めるためには、起床したい時間の20分前に、ごく微小の音量の短いアラームをつけることがおすすめです。そこで起きれれば睡眠が浅いタイミングで起きれたことになり、そこで起きれなくても、起床したい時間では浅い睡眠になっている可能性が高いので、スッキリ目覚めやすくなります。
目覚めの良い朝を迎えましょう!
朝スッキリと目覚める方法やオススメのアイテムをご紹介しました。仕事や生活のパフォーマンを高めるためにも、睡眠の質について考えてみましょう。
【参考】
※1:厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト
【参考書籍】
※ スタンフォード式 最高の睡眠(サンマーク出版)
※ 睡眠障害 現代の国民病を科学の力で克服する(角川新書)