腰痛の原因は様々ですが、その一つが寝不足であることは意外と知られていません。仕事もプライベートも忙しく、睡眠時間が短くなりがちな現代人だからこそ、腰痛と寝不足の関連を正しく理解し、必要に応じて環境を見直し・改善することが大切です。
この記事では腰痛と寝不足の関連や、寝不足の改善方法を解説します。
日本は寝不足大国?
実は日本は、他の国と比較して睡眠時間が短く、寝不足の方が多い傾向にあります。2021年のOECD(経済協力開発機構)の調査報告によると、日本人の平均睡眠時間は調査対象となった33ヵ国のなかでもっとも短かったというデータがあります。
理想の睡眠時間は人によって異なりますが、日本人の場合は睡眠時間を確保することが難しく、寝不足気味の方も多いようです。理想の睡眠時間に関しては、以下の記事をご覧ください。
理想の睡眠時間はどのくらい?最適な時間の見つけ方と確保の仕方
寝不足で生じる主な影響
では、寝不足の状態で生活しているとどのような悪影響が生じるのでしょうか?以下で具体的に解説します。
脳のパフォーマンス低下
寝不足による悪影響としてよくいわれているのは、脳のパフォーマンスの低下です。慢性的な睡眠不足は日中の眠気を誘い、意欲の低下や記憶力減退などにつながります。結果として仕事や学業など日常生活にも支障が出てしまいます。
免疫力の低下
研究によると、風邪をこじらせて肺炎になるリスクは睡眠時間によって差があり、睡眠時間が5時間未満の方は8時間睡眠の方に比べて1.4倍もリスクが高くなるそうです。これは、習慣的な睡眠時間の短縮が免疫力を低下させ、肺炎のリスクを高めるためです。免疫力の低下は他の感染症のリスクを高くすると言われており、寝不足と免疫力には密接な関係があることがわかります。
参考:A prospective study of sleep duration and pneumonia risk in women
精神状態の悪化
寝不足は精神状態にも影響を及ぼします。寝不足の方は些細なことにイライラしてしまう、不機嫌になってしまうなどの傾向があり、中高生のような子どもの場合は情緒不安定になることも。場合によってはうつ病を発症する恐れもあるため軽視できません。
慢性疾患のリスク増加
慢性疾患とは長期にわたって緩やかに続く疾患のことであり、寝不足が関連するものには腰痛や生活習慣病があります。
「ホルダラン健康研究における睡眠時間、BMI、代謝指標の関連性」によると、睡眠時間が短くなるほど肥満や高血圧、脂質異常症のような生活習慣病のリスクが高まるとのことです。
また、「睡眠時間と糖尿病および耐糖能障害との関連」では、7~8時間の睡眠をとっている方と比較して、5時間未満の睡眠時間の方は糖尿病リスクが2.5倍になるというデータもあります。
腰痛と寝不足は関連している?
ここからは、寝不足と腰痛の関連を解説します。
寝不足で痛みに対して敏感になる
睡眠障害があると脳が痛みに対して敏感になると言われています。これは、睡眠障害によって脳をはじめとした中枢神経の細胞が活性化するためです。
寝不足によるストレスで腰痛が悪化する
寝不足によって引き起こされるストレスも腰痛に影響しています。ストレスによって全身が緊張すると、血の巡りが悪くなり、筋肉も硬くなります。結果として腰にコリが生じて腰痛が悪化してしまうのです。
寝不足による食欲増進作用で体重が増加する
寝不足の状態が過度に続くとホルモンの関係で食欲増進作用が働きます。食欲増進の期間が長くなれば体重増加につながり、腰痛を悪化させてしまう一因になります。
痛みが寝不足の原因になる
反対に、慢性的な痛みが寝不足の原因になるケースもあります。痛みを感じていると、当然ですが眠りにつきにくくなります。その結果、腰痛などの痛みがさらに悪化するという悪循環を引き起こすのです。
腰痛と寝不足を改善する方法
上述したように腰痛と寝不足には深い関係があります。では、どうすれば腰痛と寝不足を改善できるのでしょうか?その方法をご紹介します。
適度な運動を取り入れる
身体が健康な方で、かつ運動習慣がない方は、日常に適度な運動を取り入れることから始めてみましょう。おすすめはストレッチやエクササイズです。症状に応じて無理のない範囲で習慣化してみてください。
腰に負担のかかりにくい姿勢で寝る
寝るときの姿勢によって腰にかかる負担が違います。腰痛改善にもっとも効果的な寝姿勢は仰向け寝、もしくは横向き寝です。仰向け寝は全身に均等に圧力が分散され、血液が巡りやすく、また寝返りも打ちやすい姿勢です。
理想の寝姿勢に関して詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
理想の寝姿勢とは?仰向け、横向き、うつ伏せ寝のポイントを徹底解説
中程度の硬さのマットレスを使う
マットレスの硬さも重要です。やわらかすぎるマットレスは適度な腰のカーブを保てず、反対に硬すぎるマットレスは骨があたって痛みを感じやすいでしょう。適度な中程度の硬さのマットレスを使用することをおすすめします。
例えばブレインスリープの「ブレインスリープ マットレス プラス フロート」は中程度の硬さ、またNASAが提唱する「身体の負担が最も少ない姿勢を再現」できるマットレスとなっています。硬さはもちろんのこと、どのように身体への負担をかけない工夫がなされているかなども、マットレス選びをする際の参考としてもよいでしょう。
体形に合った高さの枕を使う
枕には就寝時の自然な体勢を保つ役割があります。高さの合わない枕はこの役目を果たせないため腰痛の原因になります。枕はご自身の体形に合ったものをご使用ください。
枕の選び方は、次の記事でご覧いただけます。
枕の理想的な高さとは?睡眠の質を高める枕の選び方も解説
保温性の高い掛布団を使う
汗には体温を調節する働きがあります。人間の身体は深い眠りを保つために発汗して体温を下げているため、保温性の高い掛布団を使うことをおすすめします。可能であれば吸湿性・放湿性もチェックしましょう。
医療機関を受診する
以上に挙げた方法でも腰痛や寝不足が改善しない場合、原因は別にあると考えられます。その場合は早めに整形外科などの医療機関を受診するようにしましょう。
睡眠環境を見直して腰痛と寝不足を解消しよう
この記事では腰痛と寝不足の関連や、寝不足の改善方法を解説しました。腰痛と睡眠不足には密接な関係があります。睡眠時間や睡眠環境を見直すことで、いままで悩んでいた腰痛を改善できるケースもあるので、心当たりがある場合は睡眠の質を高め、寝不足を改善する生活を心がけてみてください。