「睡眠」から可視化する 新・健康経営サービス
「睡眠」から可視化する 新・健康経営サービス
日本の睡眠時間の変化
コロナ禍以降、日本人の平均睡眠時間は緩やかな増加傾向にありましたが、2026年の有職者1万人を対象とした調査では、平均睡眠時間は6時間41分となり、調査開始以降で2020年に次ぐ過去ワースト2位という結果となりました。前年の6時間50分から大きく減少し、これまで続いていた改善傾向が再び後退に転じたことが明らかとなっています。この結果は、健康維持に必要とされる睡眠時間の目安を大きく下回る水準であり、OECD加盟国の平均睡眠時間である8時間28分と比較しても、引き続き圧倒的に短い状況が続いています。日本の睡眠時間が世界的に見ても最低レベルにある構造は、依然として改善されていないと言えます。
《調査結果》
平均睡眠時間は6時間41分。
健康ラインを大きく下回る睡眠時間、調査史上ワースト2位に悪化。
*全データにおいて一元配置分散分析を行い、有意と確認(p<0.01)。また、前年との睡眠時間の比較についてはBonferroni補正したt検定を行い、2020~2024年, 2025~2026年において有意差ありと確認(いずれもp<0.01)。2025~2026年の比較について、就寝時刻と残業時間(平均)はWelchのt検定を行い、有意差を確認した(いずれもp<0.01)。
今回の調査では、睡眠時間減少の背景として就寝時刻の後退が確認され、あわせて残業時間の増加傾向もみられました。近年、企業において出社回帰の動きが進む中、通勤時間や業務時間の長時間化が生活リズムに影響を与えている可能性が考えられます。リモートワークの普及により一時的に改善がみられた睡眠時間が、社会構造の変化とともに再び悪化しつつある可能性が示唆されました。
20代の睡眠特徴
20代は全世代において、唯一平均睡眠時間が7時間超える“睡眠優等生”の姿がみられました。その背景としては、忙しい時でも睡眠時間の確保を優先する方が多く、睡眠関連の情報収集や就寝前の行動調整、睡眠のための時間やお金の投資に前向きなことなど、睡眠を「自己管理すべき資源」として捉える意識の高さが顕著に表れています。
一方、起床時間が平均的に遅めであること、また、平日と休日の睡眠時間の差が大きく、平日と比較して2時間以上長い。その結果から、量(睡眠時間)は確保している一方で、週末の寝だめに依存するといった不安定な睡眠リズムを抱えていることも明らかになりました。
《調査結果》
20代は睡眠に投資する。
“唯一睡眠時間7時間超”、睡眠意識が高い睡眠優等生”
一方、週末に取り戻す”寝だめ型リズム”が課題。
*睡眠時間・入眠時刻・起床時刻ついてWelch一元配置分散分析を行い、年代に有意な差があると確認(p<0.05)。20代は睡眠時間が最長、起床時刻が最も遅い(20代vs各年代のWelch
t検定、p<0.05)。
*睡眠に対する意識や行動についてχ²検定(20/30/40/50/60代×当てはまる/当てはまらない)を行い、すべての指標で有意と確認(p<0.05)。さらに「睡眠に関する情報を意識して集めている」「今後、睡眠のために時間やお金を使ってもよい」は20代が他年代より有意に高かった(20代vs30–60代のχ²検定、いずれもp<0.01)。
20代は、唯一平均睡眠時間が7時間を超える世代となり、睡眠を自己管理の重要な資源と捉える意識の高さも顕著に表れています。本調査で睡眠に対する意識や行動においては、「忙しくても睡眠時間の確保を優先する」「睡眠に関する情報を積極的に収集している」「睡眠のための支出や工夫を行っている」「就寝前の行動を睡眠のために調整している」「今後も睡眠のために時間やお金を投資してよい」の全項目で、20代が全世代において最も高い水準を示すといった”睡眠優等生”のポテンシャルを持っています。
また、過去1か月間における休養感では、「睡眠で休養がとれている」20代が全年代において最多回答となり、睡眠の質および睡眠時間においても「非常によい・よい」と回答した割合が60代に次いで高く(睡眠の質53.8%、睡眠時間56.3%)、主観的な休養感や睡眠評価として「眠れている」・「休養できている」と体感している層が比較的多いことが特徴といえます。
間以上の差が発生していることも明らかになっています。その結果、週末に睡眠時間を長くとる”寝だめリズム型”の実態が見られ、1週間を通して生活リズムが揺らぎやすい傾向を抱えているといえます。睡眠時間の確保と睡眠への投資意識が両立した”睡眠優等生”である一方で、起床時間が遅いこと、平日と休日の睡眠時間差が全世代の中で最も大きく、週末の寝だめに頼り、生活リズムが不安定になりやすい傾向課題として示されました。
*休日の睡眠時間の延長幅について、20代は他年代より「変わらない」が有意に低く、「2時間以上」が有意に高かった(20代vs30–60代のχ²検定、いずれもp<0.01)。
疲労感とその解決策
直近1か月の状態について尋ねたところ、「いつも疲れた」「しばしば疲れた」「ときどき疲れた」と回答した人は全体の約8割にのぼり、ほとんどの人が日常的に疲労を感じていることが明らかとなりました。
《調査結果》
日本人の8割が疲労を実感、解決策の1位は「睡眠」
*疲労を感じた方:直近1か月の疲労を感じた頻度で「いつも疲れていた」「しばしば疲れていた」「ときどき疲れていた」と回答した人
*睡眠の質×疲労ありについてχ²検定を行い、有意な差を確認(p<0.01)。疲労あり割合は睡眠の質が悪化するほど単調に上昇し、傾向検定でも有意であることを確認(p<0.01)。
本調査では、睡眠の質別に疲労を感じている割合を分析した結果、「非常によい」「よい」と回答した層では疲労感が低く、「悪い」「非常に悪い」となるにつれて疲労を感じる割合が大きく上昇することが確認されました。睡眠の質が高いほど疲労感が少ないという明確な関連が改めて示されています。
これらの結果を踏まえると、単なる休息時間の確保だけでなく、「質の高い睡眠」が疲労軽減において重要であることが示唆されます。
また、疲労への対処法として最も多く選ばれたのは「睡眠をとる(早く寝る・その場で横になる)」であり、多くの人が疲労回復の第一手段として睡眠を選んでいることが示されました。睡眠が疲労軽減の中心的な役割を担っている実態が、行動面からも裏付けられたといえます。
パフォーマンスと睡眠の関係性
日中のパフォーマンスに影響を与える要因を個別にみると、「心の安定(21.3%)」や「睡眠の質(16.3%)」などが上位を占めています。一方で、睡眠に関する要因である「睡眠の量・質・規則性」を合算すると30.6%となり、単一の生活領域としては最も大きな割合となりました。この結果から、多くの人が睡眠を一つの行動としてではなく、量・質・リズムを含む包括的な生活基盤として捉え、集中力や体調、気分の安定に総合的な影響を与える重要な要因であると認識していることがうかがえます。
《調査結果》
最も影響するのは「睡眠(量・質・規則性)」の総合要因
睡眠時間の規則性とパフォーマンス指標(身体・心・脳)を比較したところ、規則的な群は不規則な群に比べて、身体・心・脳のスコアがいずれも高いことが示されました。さらに、睡眠時間別に比較したところ「7〜8時間」の睡眠を「規則的」に確保している層が、すべての項目において最も高いスコアを示しました。睡眠が不規則な層や、規則的であっても睡眠時間が極端に短い/極端に長い層では、パフォーマンスが低い傾向がみられました。
これらの結果から、単に長く眠るだけでは不十分であり、「適切な睡眠時間」と「規則正しい睡眠リズム」の両立が、日中のパフォーマンス最大化に不可欠であることが示唆されます。睡眠の量・質・規則性を整えることが、身体的健康のみならず、認知機能やメンタルヘルスにも直結する重要な生活習慣であると言えるでしょう。
*睡眠時間の規則性(規則的/不規則)とパフォーマンス(身体・心・脳)についてWelchのt検定を行い、いずれも有意差を確認(すべてp<0.01)。睡眠時間が規則的な群(n=5,634)において睡眠時間5区分でパフォーマンス(身体・心・脳)を比較し、Welchの一元配置分散分析で群間差を確認(すべてp<0.01)。平均は7〜8時間群が3指標すべてで最も高く、7〜8時間群は6時間未満および9時間以上より有意に高いことを確認(Holm補正後p<0.05)。
良い睡眠がもたらす日中変化における男女共通性と体感差
良い睡眠が日中の心身状態や行動にどのような変化をもたらすかについて、男女別に分析を行いました。 その結果、男女ともに最も多く挙げられた変化は「朝の目覚めが良い」であり、次いで「身体の調子が良い」「眠気を感じる回数が減る」「業務効率が上がる」「メンタルの調子が良い」と続き、上位項目の構成は男女でほぼ共通していました。 このことから、良い睡眠がもたらす主要な効果は性別を問わず共通して現れ、日中の覚醒状態、身体コンディション、認知パフォーマンス、心理状態の改善に幅広く寄与していることが示唆されます。
《調査結果》
男女で共通、体感は女性でより強い傾向
各項目の男女差を比較すると、その差はいずれも数%程度と大きな開きはみられず、良い睡眠の中核的な効果は男女で概ね共通して現れていることが確認されました。
その一方で、ほぼすべての項目において女性の割合が男性をわずかに上回っており、女性の方が睡眠による変化をやや強く実感する傾向がうかがえます。
特に朝の目覚めの改善や身体・メンタルの調子の向上、肌状態の改善といった項目ではその差が比較的顕著であり、女性が睡眠による心身の変化をより敏感に知覚している可能性や、睡眠改善の恩恵を受けやすい特性を有している可能性が示唆されます。
総じて、良い睡眠は男女共通の基盤的なパフォーマンス向上効果を持ちながらも、その体感の強さには性差が存在することが明らかとなりました。睡眠は性別を問わず日中の生活の質を支える重要な要因であると同時に、とりわけ女性においてその効果がより強く認識される傾向があると言えます。
ブレインスリープでは本調査に関する様々な情報提供が可能です。ご利用になりたい際はお問い合わせください。
※本調査内容をご利用の際、出典元として『睡眠偏差値® ブレインスリープ調べ』と必ず記載いただくようお願いいたします。
【調査概要】
調査手法:web調査
対象地域:全国
対象者条件:男女
サンプル数:n=10,000ss
調査実施期間:2026年1月
※集団間の睡眠偏差値、スコアの比較においては、一元分散分析、あるいはt-検定を行い、有意水準5%以下を統計的に有意な差と判定し記載しました。
※昨年と一部対象者、調査項目を変えて調査を行っております。
本年の睡眠偏差値の結果は、私たちが長年指摘してきた「睡眠の質と社会構造の相互関係」を改めて示すものです。コロナ禍後の出社回帰が一因となり平均睡眠時間が再び短縮し、就寝時刻の後退や残業時間の増加が関連している点は、睡眠衛生の向上には、個人の努力だけでは解決できない社会的要因が大きく影響していることを意味します。一方で、20代に見られる高い睡眠リテラシーや睡眠への投資意欲は希望を与え、世代間の学び合いを通じて社会全体の睡眠改善につながる可能性を示しています。
重要なのは単に「長く寝る」ことを目標にするのではなく、適切な睡眠時間、規則性、質を同時に整えることです。企業や行政は通勤・労働時間の再設計や職場での睡眠支援施策を真剣に検討すべきであり、我々研究者はエビデンスに基づく具体的介入の検証を進めていく必要があり、合わせて、地域・業種・勤務形態別の詳細分析を行い、提言をより具体化していきたいと考えます。睡眠は個人の健康のみならず、企業や国家の生産性と幸福に直結する重要な社会資本です。