高齢男性に多い?レム睡眠行動異常症とは?原因は?
「レム睡眠」や「ノンレム睡眠」という言葉を聞いたことがあるかと思います。レム(REM)とは、Rapid Eye Movementのことであり、レム睡眠は、睡眠中に眼球が動いている眠りの状態で、ノンレム睡眠は眼球が動かない眠りの状態です。
正常な睡眠の場合、眠りにつくとまずはノンレム睡眠に入り、その後レム睡眠に移行し、これらが交互に繰り返されます。レム睡眠時には8割程度の確率で夢を見ていると言われており、内容もストーリー性があり具体的なものが多いとされています。目が覚めた時に内容を覚えているのは、レム睡眠の最後、起きる直前に見ていた夢です。一方、ノンレム睡眠時に見る夢は漠然としたものであると言われています。
今回ご紹介する
レム睡眠行動異常症(RBD)は、レム睡眠の状態の時に、夢に合わせて身体が動いてしまう睡眠障害で、睡眠時随伴症(パラソムニア)の一つです。
レム睡眠行動異常症の概要
通常、睡眠時には筋肉は弛緩し、無動状態になっています。レム睡眠の時には運動野の神経自体は活動していますが、運動系の神経伝達を抑制する機能が働いているため、筋肉が弛緩し無動の状態になっています。その抑制機能に異常が生じ、夢に対応して身体が動いてしまうのがレム睡眠行動異常症です。寝言や手足が軽く動く程度のものから、叫んだり、隣のものや人を殴る蹴る、起き上がって歩いたり走り出すものまで様々な行動が出現します。これらは自分の意思とは関係がなく、不随意運動と言われます。
レム睡眠行動異常症の具体的な症状とは
それでは、実際にどんなことが起きるのでしょうか?例えば、バスケットボールの夢を見ていたら、眠ったままシュートをします。誰かに追いかけられる夢を見ていたら走って逃げます。ボクシングの夢を見ていたらパンチをします。隣で寝ている人を殴ってしまい怪我を負わせてしまうこともあります。一般的には、恐怖感や不快感を伴う悪夢が多いとされています。これらの異常行動は数分以内のものが多いと言われています。また、異常行動が出るのは睡眠の後半に多いですが、どの時間帯でも起こり得ます。
この状況は、ともすると「せん妄」(精神機能障害の一つで、注意力および思考力低下、見当識障害、意識障害、幻覚などが見られる)と捉えられかねませんが、症状の出ている時に他者が刺激を与えて目を覚ますと、すぐに目が覚め、夢の内容を思い出せる点で異なります。
いずれにせよ、レム睡眠行動異常症における異常行動は本人だけでなくベッドパートナーにも危害が加わる可能性があるため、早期に診断・治療を行うことが必要です。
レム睡眠行動異常症の原因
レム睡眠行動異常症は、原因不明の特発性レム睡眠行動異常症と、他の疾患を背景とした症候性レム睡眠行動異常症に分類されます。
原因不明の特発性が半数以上を占めるとされています。一方、症候性レム睡眠行動異常症の原因としては、
①パーキンソン病やレビー小体型認知症などの特定の神経変性疾患
②アルコールや覚せい剤の慢性中毒からの離脱
③精神安定剤などによる急性薬物中毒
④多発性硬化症やクモ膜下出血、脳幹レベルでの脳卒中(延髄)などの脳幹の病変
が挙げられます。
レム睡眠行動異常症には年齢が関係?
また、レム睡眠行動異常症には、加齢や老化も関係していると言われています(実際、高年男性が多いです)。そのため、高齢化の進むこれからの時代、発症頻度が増加する可能性も十分考えられます。