「枕に違和感を感じて、なかなか寝付けない」、「しっかり寝たのに疲れが取りきれない」など、自分に合った枕がなかなか見つからないという悩みを持っている方が多くいらっしゃいます。
この記事ではそんな方のために、枕が合わない原因とその確認方法、合わない枕の調整方法、正しい枕の選び方について解説しています。
枕が合わない主な原因
枕が合わない理由として、いくつかの原因が考えられます。
1:選び方が間違っている
そもそも枕を選ぶ際は、自分の頭の大きさや重さ、体格、首の形、寝姿勢のクセなどに合わせることが大切です。
そのため、「プレゼントとしてもらった」「友達のおすすめの枕を検証せずに購入」、「おしゃれなデザインに惹かれた」「肌触りがいいから寝心地もいい気がする」「低い枕の方がうつ伏せで寝やすい」「高い枕じゃないと眠れない」など、自分に合っているかどうかを考慮せずに購入するのは、間違った選び方と言えます。
枕の適切な高さや硬さは人によって異なるので、体格などを考慮して選びましょう。
2:枕の高さ・サイズ
枕には頭や首を支えて睡眠中の姿勢を整えたり、スムーズな寝返りをサポートする役割があるので、高すぎても低すぎても、小さすぎてもよくありません。
高すぎる枕を使うと頭が持ち上がるため、首や肩に負担がかかり、使い続けることで頭痛やストレートネックの原因となることがあります。反対に、低すぎる枕では、首とマットレスとの間に隙間ができてしまい、頭を首だけで支えている状態になるので、肩こりだけでなく、首を痛めたり、呼吸がしにくくなったりすることがあります。
また、横幅が小さすぎる枕は、寝返りを打った時に枕から頭が落ち、変な姿勢で眠っていることもあるため、肩こりや寝違えに繋がる可能性があります。
3:枕の素材
硬い枕は、パイプやそば殻などの素材で作られているものが多く、寝返りが打ちやすいとされています。ですが硬すぎると、首のカーブにフィットしないためうまく体圧分散ができず、首や肩に負担がかかるほか、後頭部に圧力が集中して血流が悪くなるので注意が必要です。
一方、柔らかい枕は、羽毛や低反発ウレタンなどの素材で作られているものが多く、首から肩にかけての筋肉が緊張することなくリラックスした状態で眠れます。
ですが柔らかすぎる場合、頭が枕に沈み込んで寝返りが打ちづらくなる、寝姿勢がくずれる、頭が安定せずに首に力が入るなど、負担がかかりやすくなるので、適度な硬さと弾力性のある枕を選ぶことが大切です。
4:自分の寝姿勢と合っていない
首の骨は通常、背骨から頭を真っ直ぐ支えるために、緩やかなS字を描くようにカーブしており、そのカーブを睡眠中も再現することが大切です。仰向け寝の姿勢では、立っている状態と同じS字カーブを再現できる高さ、横向き寝の姿勢では、頭から背中にかけての骨が真っすぐになる高さの枕が理想とされています。
横向き寝の姿勢で眠ることが多い方は、肩幅を考慮して枕の高さを選ぶ必要があります。
5:マットレスや敷布団とのバランスが悪い
枕とマットレス(または敷布団)の相性が悪いために、枕が合わないと感じる可能性もあります。マットレスの素材や硬さによって体の沈み込み方が異なるので、枕単体ではなく、両方を使用した際のバランスを意識しましょう。
マットレスを見直すことで、肩こりが解消したり、質の高い睡眠を得られることもあります。
枕が自分に合っているかの確認方法

まずは、自分の枕が自分の体に合っているかを確認しましょう。
枕が合っているか確かめるチェックポイント
- 朝、目が覚めた時に枕がズレている(首から離れている、後頭部しか乗っていない)
- うつ伏せの姿勢で目が覚める
- 枕や頭の下に手を入れて寝ている
- 腕を上げて寝ている
- 翌朝、手や腕にしびれがある
- 翌朝、首や肩がこっている、または痛い
- 熟睡感がない
- 寝返りを打つと目が覚める
これらの項目内で、1つでも当てはまっている場合、枕が自分に合っていない可能性があります。
枕が体に合っている場合、寝返りを打っても大きくズレることはなく、ズレそうになっても、無意識に枕を戻したり、体が追いかけていったりなどして、枕と自分の体が離れるのを食い止めようとします。合わない枕を使用していることで、体の違和感を無意識に調整しようとして必要以上に寝返りを繰り返している場合もあります。
睡眠中に枕から頭が落ちていたり、うつ伏せの姿勢、手を下に入れる、万歳しているなどしていることが多い方は、一度枕を見直してみましょう。
仰向けになった時の視線で枕が合っているか確認
個人差はありますが、大まかに適正な枕の高さを確認する方法をご紹介します。
仰向け寝の姿勢になり、自然な顔の角度のまま真っ直ぐ天井を見た時、垂直よりもやや下(足側)に目線がいく高さが適正とされています。もし、目線が下過ぎていれば枕が高すぎる、目線が上側にいっていれば枕が低すぎるということです。
横向き寝の際は、頭から背中にかけての骨が真っすぐになる枕の高さが適正とされています。何も無い壁に向かって横向きに寝て、自分の体が平行になっているかを意識することで、確認することができます。
合わない枕を使っていると…

合わない枕を使用し続けることで、様々な睡眠不調が起こる可能性があります。
1:睡眠の質が悪くなる
合わない枕を使用すると、寝返りが打ちにくかったり、逆に寝心地が悪くて寝返りを打ち過ぎたりすることがあります。十分な睡眠時間を確保したのにもかかわらず、「起きた時に疲労感がある」、「日中、強い眠気に襲われる」などの症状を感じる方は、枕が合っていないのかもしれません。
2:いびきが増える
いびきの原因は様々ですが、枕が高すぎる場合、あごが下がって気道が圧迫されるため、いびきが多くなることがあります。
3:肩や首がこる・痛くなる
体に合っていない枕では、不自然な寝姿勢になるため、首や肩に負担がかかり、こりや痛みにつながります。
4:腰痛になる
首と腰は背骨で繋がっているため、首に負担がかかると腰にまで影響することがあります。特に体を支える筋肉が少ない方は、合わない枕を使用することで腰痛が起きやすいと言われています。
5:頭痛が起きる
頭痛には、病気を原因としない「一次性頭痛」と、脳の病気がかかわる「二次性頭痛」があり、肩こりが悪化することによって起こる頭痛のほとんどは「一次性頭痛」です。
合わない枕を使用することで、首や肩まわりの筋肉が緊張状態になり、頚性神経筋症候群(首のこり)を招きます。その結果、血流が悪くなったり、頭蓋骨の筋膜にまで悪影響が及ぶため、頭全体や後頭部が締め付けられたり、圧迫されるような痛みを感じる可能性があります。
6:ストレートネックになる
ストレートネックとは、本来、緩やかなS字にカーブしている首の骨が、まっすぐに伸びてしまった状態のことです。長時間に及ぶデスクワークやスマートフォンの使用などで前傾姿勢が長時間続くことが主な原因ですが、高すぎる枕によって頭が前に押し出された状態が長時間続くことも、ストレートネックの原因のひとつと言われています。
7:無呼吸症候群になる
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、睡眠時に、空気の通り道(上気道)が狭くなり、呼吸が止まる“無呼吸”や、呼吸が止まりかける“低呼吸”を繰り返す病気です。無呼吸と低呼吸を繰り返すことで、脳も体も酸欠状態に陥るため、様々な臓器に負担がかかります。
眠りが浅くなってしまうので、十分な時間眠ったのに疲れが取れないことがあります。
8:容姿への影響
そもそも顔は完全な左右対称ではありませんが、枕が合わず寝姿勢がくずれることで、顔の歪みにつながる可能性があります。特にうつ伏せ寝の姿勢を長期間続けると、顔の左右差が大きくなりやすいので、仰向け寝や横向き寝で快適に眠れる枕を選びましょう。
枕が合わないときの調整方法
枕が合わないときに、一時的に調整する方法をご紹介します。あくまでも一時しのぎなので、根本解決するためには、自分に合った枕を見つけることが大切です。
1:枕を肩ギリギリまで引き寄せる
枕に頭だけを乗せて眠る方がいますが、一般的に枕は、肩に当たるくらい引き寄せて使用するのが、正しい使い方です。
頭だけでなく首も枕に乗るように、肩ギリギリまで枕を引き寄せるだけで、首への負担が軽くなり、首や肩、腰の痛みを防げます。
2:バスタオルを使って調整する
バスタオルを使用することで、手軽に枕の高さを調整することができます。
枕が低い時は、枕の下に畳んだバスタオルを敷き、枕が高い時は、体の下に何枚かバスタオルを敷いてみましょう。理想とされている、ほんの少しあごを引いた寝姿勢になるように微調整してください。
正しい枕の選び方
理想的な寝姿勢を作るためには、頭や体の重みを分散し、適切なサポートをしてくれる適度な高さや弾力の枕を選ぶことが大切です。
1:寝る姿勢から選ぶ
横向き寝の姿勢では肩幅の分、頭や首がマットレスから離れるため、「仰向け寝」と「横向き寝」では最適な枕の高さが異なります。
最近は、中央部が低く、両サイドが高めになっているような立体的な枕や、枕の左右が硬くなっていて頭の沈み込みを抑えることのできる枕などがあるので、寝返りが多い方は試してみてください。
2:枕のサイズから選ぶ
枕は高すぎても低すぎてもよくありません。後頭部が高いと首が圧迫されて、首や肩のこり、痛み、いびきの原因になることもあります。反対に低すぎる枕では頭が安定せず、首や肩に負担がかかります。
一般的に、仰向けの状態で頭を乗せたときに、首から頭にかけての傾斜角度が10~15度、額より顎の先が0~5度程度下がる状態が理想の寝姿勢とされています。人によって体格が異なるため、枕の最適な高さも異なりますが、男性は4cm前後、女性は3㎝前後を目安にしましょう。
さらに、左右どちらに寝返りを打っても頭が枕から落ちないように、自分の頭3つ分の幅以上の枕を選びましょう。そして肩口までカバーできる奥行きも必要なので、幅60cm以上、奥行き40cm以上が理想のサイズです。
3:枕の素材から選ぶ
素材によって寝心地が異なるので、好みの感触を選びましょう。
綿
柔らかめな寝心地なので、ふんわり包まれたい方におすすめ。水洗い可能ですが、ややへたりやすく、買い替えは2~3年が目安。
低反発ウレタン
柔軟性に優れるため、ゆっくり沈み込んで肩から頭をしっかりホールド。頭や首へのフィット感が高く、寝姿勢が安定します。気温に左右されるので冬場は固く、夏は熱がこもりやすいのが特徴。基本的には洗えません。
ポリエステルわた素材
わた状の人工繊維です。クッション性があるので、柔らかな感触やボリューム感が好きな方におすすめ。人口繊維なので洗うことが可能ですが、使用年数が経つと弾力性やボリューム感が失われていきます。
羽毛・羽根
水鳥から採取した素材で、空気を含んだふんわり感があり、天然素材の中ではへたりにくいのが特徴。吸放湿性に優れていますが、商品によっては独特のニオイを感じる可能性があります。
極小ビーズ
発泡ポリスチレンの小さな粒を入れた枕です。流動性に優れているので頭の形になじんでフィットし、体圧分散性にも優れています。柔らかい独特の触り心地で、クッションや抱き枕に使われることもあります。
パイプ
ストローを細かく切ったような形状の素材で、大きさや硬さはさまざまです。しっかり頭と首を支えてくれるので、寝返り時のフィット感があり、体圧分散性にも優れています。通気性がよく、耐久性にも優れているので、買い替えは3~5年が目安。粒が擦れるの音が気になる方には不向きです。
そばがら
通気性・放熱性に優れているため、高温・多湿な日本の気候に向いていますが、手入れをしないと虫が湧く可能性があります。安価ですが、買い替えは1〜2年目安なので、他の素材と比べてやや短め。硬めの枕が好みの方におすすめです。
4:睡眠を考えた商品から選ぶ
質の高い睡眠には、自分に合った枕が必要不可欠です。デザイン性や価格が安いからという理由だけで選ぶのではなく、良質な睡眠を提供するために開発された枕を選びましょう。
枕は睡眠に重要な寝具
「人生の3分の1を占める」と言われているほど長時間を費やす「睡眠」の質を高めるためには、自分に合った枕を使用することが大切です。
健康や日中のパフォーマンスを上げるために、運動や食事だけでなく睡眠の質を高めたい方は、合わない枕を無理して使用続けるのをやめて、自分に合った枕を探してみてはいかがでしょうか。