枕は睡眠の質を左右すると言われている大切な寝具です。この記事では、現在使用している枕が低いと感じている方に、枕が低いことによるメリットやデメリット、低い枕を高くする方法など、様々な疑問を解決する情報を紹介しています。
低い枕のメリット

低い枕を使うことの一番のメリットは、仰向けで寝た時に首や肩まわりに負担がかかりにくいことです。
1:頚椎への負担が少ない
高い枕は、頚椎が圧迫されてしまったり、首や肩が寝具から浮くことで必要以上に負担がかかり、首や肩のコリの原因になることがあるのに対し、低い枕は、首と寝具の間にすき間ができにくいため、頚椎への負担が少なくなります。
2:呼吸がしやすくなる
低い枕に頭をのせると自然にあごが上がるため、気道が開いて呼吸がしやすくなります。そのため体がリラックスしやすいだけでなく、気道が狭くなることで起こるいびきや不眠症を防ぐことにつながります。
低い枕のデメリット

低すぎる枕にはデメリットもあります。
1:首や肩のコリ、頭痛の原因になる
枕が低すぎると、仰向けで寝た時に首が後ろに反り、あごが上がりすぎてしまうことで頸椎が圧迫され、首や肩のコリの原因になることがあります。その結果、血流が悪くなったり、頭蓋骨の筋膜にまで悪影響が及ぶため、頭全体や後頭部が締め付けられたり圧迫されるような痛みを感じる可能性があります。
さらに、首と腰は背骨で繋がっているので、首に負担がかかると腰にまで影響することがあります。特に体を支える筋肉が少ない方は、合わない枕を使用することで腰痛が起きやすいと言われています。
2:うっ血やむくみの原因になる
心臓よりも頭が下がった状態が続くので、脳に血液が溜まりやすく、うっ血やむくみの原因になる可能性があります。朝起きた時に顔がむくんでいることが多い方は、枕が低すぎることが原因のひとつかもしれません。
そのほか、低い枕で眠ると口が開きやすくなるため、口呼吸が増えたり、横向き寝が多い方は寝にくいと感じることもあります。
自分に合った枕を使う重要性
体に合っていない枕を使うと、枕と首の間に隙間ができるため、必要以上に首や肩へ負担がかかる、頚椎が圧迫される、うまく体圧が分散できないなどの可能性があります。また、スムーズな寝返りが打てなかったり、反対に寝心地が悪くて過度な寝返り繰り返して、睡眠の質が低下することもあります。
夜中に首や肩が痛くて目が覚める、朝起きた時に首や肩のコリ、頭痛、手のしびれなど体の不調を感じることが多い方や、十分な睡眠時間を確保したのにも関わらず疲労感が取れない方は、枕が合っていない可能性があります。また、目が覚めた時に無意識に頭の下に手を敷いていたり、きちんと枕の上に頭がのっていない場合も枕を見直しましょう。
枕は高すぎても低すぎてもよくないので、呼吸や寝返りがしやすい高さを選びましょう。
自分に合った枕の高さを知る方法
人によって体格が異なるため、最適な枕の高さも異なります。枕の高さは、“理想の寝姿勢”になれるかどうかで決めましょう。
“理想の寝姿勢”とは、真っ直ぐに立った姿勢(正常立位姿勢) に近い、首のカーブと背骨のラインを保つことです。横向きに寝た時は肩幅の分マットレスと首が離れるので、最適な枕の高さが仰向けで寝た時と異なります。

また、自分に合った枕の高さを調べる時は、普段使っているマットレスや敷布団の上で計測しましょう。体の重みでマットレスや敷布団が沈むので、硬い床では正確に測れません。仰向け寝や横向き寝の体勢になり、折りたたんだバスタオルを頭の下に入れて理想の寝姿勢になるように調整し、バスタオルの高さを測りましょう。
1:仰向け寝では、背骨がなだらかなS字状にカーブ
人は直立姿勢を楽にするために、背骨がなだらかなS字状にカーブしています。寝姿勢でも背骨のカーブを自然な状態に保つことで、体の圧力が均等に分散され、血液が循環しやすくなります。
一般的に、仰向けの状態で頭をのせた時に、首から頭にかけての傾斜角度が10~15度、額より顎の先が0~5度程度下がる状態が理想の寝姿勢とされています。頸椎椎間孔(神経の出口)が広がると同時に、気道が確保されるためです。
2:横向き寝では、背骨と床が真っ直ぐ平行
横向き寝では、額から鼻、顎、胸の真ん中までの一直線が寝具と平行になる高さが理想です。頭が適切な高さで支えられ、背骨が真っ直ぐになることで、首や肩にかかる負担を抑えることができます。
体には凹凸があるので、寝具によっては、首や背骨が曲がってしまい、腰が沈んでしまいます。理想的な寝姿勢を作るためには、頭や体の重みを分散し、適切なサポートをしてくれる適度な高さや弾力の寝具を選ぶことが大切です。
3:寝返りのしやすさ
実際に枕に頭をのせて、寝返りのしやすさを確認しましょう。目が覚めている状態で寝返りがしやすいということは、睡眠中でも力を入れずに寝返りができるということです。
寝返りには血行を促進し、体温を調節、体圧分散、脊椎の修復(背骨を整える)する働きがあるとも言われていて、腰痛などの不調をリセットするためにも必要不可欠です。また、適度に寝返りを打つことで体にかかる負担が軽減され、睡眠の質が高まります。
健康な大人の場合、睡眠時間8時間に対して一晩に打つ寝返りの回数は10~30回、平均的には20回前後と言われています。これよりも寝返りが少ないと、体への負担が大きくなったり睡眠の質が低下する恐れがあります。
また、子どもが一晩に打つ寝返りの回数は50〜90回が理想と言われていて、大人とは異なります。
仰向け寝でも、横向きに寝返りを打った時でも理想の寝姿勢を維持するためには、中央部が低く、両サイドが高くなった立体的な枕がおすすめです。
低い枕が合う人
低い枕を使用することで睡眠の質が高まりやすい人の特徴をご紹介します。
1:ストレートネックの人
ストレートネックとは、スマートフォンやパソコンなどを長時間使用して前かがみの姿勢を続けることで、頚椎の自然なカーブがなくなり、ストレートになった状態のこと。低い枕は、仰向け寝の状態で頚椎が自然なカーブになるので、ストレートネックによる痛みをやわらげたり、症状の改善が期待できます。
2:首と寝具の間のすき間が狭い人
首のカーブ(寝た時に頭の接地面と背中の接地面の間のすき間)が少ない方は、低い枕がフィットしやすいでしょう。頭の大きさや背中の筋肉など、体格によって異なりますが、小柄な方や細身の方、女性などは、首と寝具の間のすき間が狭い人が多い傾向です。
低い枕を高くする方法
使っている枕の高さが少し足りないと感じる場合は、枕の下にタオルを敷いたり、枕の中材の量を調整しましょう。
1:枕の下にタオルを敷く
枕の下に、畳んだタオルを敷くことで、簡単に枕の高さを変えることができます。タオルと枕がズレてしまう場合は、枕カバーの中に畳んだタオルを入れてみましょう。
2:高さを調整できる枕を使う
調整シートを抜き差しして高さを変えたり、中身を補充することで枕を高くすることができるタイプなど、高さを調整できる枕もあります。自分に合った枕の高さがいまいちわからない……という方は、高さを調整できる枕を試してみましょう。
高さを調整できる枕を試してみる
自分に合わない枕を選んでしまうリスクを回避するために、自分に合った高さに調整できる枕を使用するのがおすすめです。
枕を見直して快適な睡眠を手に入れましょう
睡眠の質を高めるためには、枕が自分に合っているかどうかはとても大切なことです。「人生の3分の1を占める」と言われている睡眠は、心も体も回復させる大切な時間だからこそ、一度、枕を見直してみましょう。