「睡眠は長さではなく質が大切」とよく言われていますよね。
睡眠の質とは「深い眠りと理想的な睡眠周期」のことです。
しかし、「深い睡眠と理想的な睡眠周期が分からない」「浅い睡眠ばかりなので、深い睡眠を取る方法を知りたい」という方もいるでしょう。
そこで今回は、深い眠りと理想的な睡眠周期、深い睡眠を取る大切さを解説すると共に、深い睡眠を取る方法を紹介します。
この記事を読めば、何気なく行っている習慣が、睡眠に与える影響も分かりますよ!
1.深い眠りと理想的な睡眠周期とは?

人は一晩の睡眠でノンレム睡眠とレム睡眠を交互に4~5回くり返します。この回数と睡眠の深さが睡眠の質を決めるのです。
例えば、睡眠時間を長くとっても、深い睡眠が少ないと「眠り足りない」「たっぷり眠ったはずなのに疲れが取れない」となりがちです。短い睡眠時間しか確保できない場合は、できるだけ深い睡眠を取ることで、効率よく身体の疲労回復が行えます。
1-1.「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」で大きく変わる

身体は寝ているが、脳は活動している眠りのことを、医学的に「レム睡眠」と言います。これは、「Rapid Eye Movement(急速眼球運動)」の頭文字を取り、名付けられたものです。
レム睡眠の時は、意識はなくても眼球が素早く動く運動が起こります。レム睡眠の時は身体は眠っていますが、脳は起きているのです。夢を見るのはこの睡眠の時で、記憶や感情の整理が行われています。
一方、身体も脳も眠っている睡眠のことを「ノンレム睡眠」と言います。レム睡眠と異なり、急速眼球運動が起こらないので、この名がつきました。
ノンレム睡眠は3段階に分かれています。最も深い睡眠(第3段階)に入れるのは、眠りについてから3時間後辺りまでと言われています(※1)。深いノンレム睡眠に入ると、大脳も身体と共に活動を休止しています。そして「成長ホルモン」が分泌されるのです。このホルモンは、身体の成長を促すだけでなく、労回復や傷ついた細胞を修復する効果もあります。
つまり、睡眠時間が短くても深い眠りに入ることができれば「よく寝た」と満足感を得やすいということですね。
1-2.人によって睡眠のとり方は違う

一方、OECD(経済協力開発機構)の2021年の調査によれば日本人の睡眠時間は7時間22分。加盟国のうち30カ国の中で最下位という結果が出ています。この結果だけみると、日本人は睡眠不足でもっと睡眠をとらなければならないと思いがちです。
しかし「7時間も寝ていないけれど、毎日すっきりと目覚めている」という人もいれば、「毎日8時間寝ても寝起きが悪く、もっと眠りたい」という人もいるでしょう。
つまり、極端に長かったり短かったりしない限り、睡眠時間はそれほど神経質になる必要はありません。日本医師会も「適正な睡眠時間には個人差がある」と発表しています。
それに、厚生労働省が運営しているe-ヘルスネットによると睡眠時間は加齢と共に短くなる傾向にあります。※2「年を取るにつれて朝早く目覚めるようになった」と悩んでいる人も、日中耐えがたい眠気に襲われるなど支障がない限り、過剰に心配する必要はないのです。
睡眠時間が短くても、毎日スッキリと目覚め、日中も強い眠気に襲われることがない場合は、もともと必要な睡眠量が少なかったり、睡眠の質が良いと言えるでしょう。
反対に、7時間以上眠っているのになかなか起き上がれない、目覚めが悪い、日中に強い眠気に襲われるなどの自覚がある人は、もともと必要な睡眠量が、実際の睡眠時間よりも多いか、睡眠の質が悪いと言えます。
2.実際に満足に深い睡眠をとれている人の割合は?

中でも、25歳以上の男性が最も睡眠に不満を持っている人の割合が多く、全体の29.5%が睡眠に不満を感じているのです。※3
では、残りの7割の方は自分の睡眠に満足しているのかというと、そうではありません。
調査項目には「どちらともいえない」というものがあり、全ての年代でここに当てはまる人が最も多かったのです。
調査結果から「どちらともいえない」「満足している」を除外すると「自分の睡眠に満足している」と回答した人は、37%~42%くらいでした。
つまり「どちらともいえない」という人を含めると、日本では10代~70代の全ての年代で、約半数の人が「睡眠に満足していない」とも言えるわけですね。睡眠の満足度と深い睡眠には密接な関係があります。
前述したように、深い睡眠が少ないと、いくら長時間睡眠をとっても「よく寝た」という実感を得にくいのです。
この調査の結果から、満足に深い睡眠を取れている人は約半数程度しかいないと言えるでしょう。
3.深い睡眠がとれずに睡眠不足になると危険が多い

深い眠りに入れないと夜中に何度も目覚める、日中強い眠気に襲われる、気分が憂鬱になるといった様々な弊害が現れるようになります。
しかし、睡眠時間が一定時間とれていると、なかなかそれに気がつかない人も多いでしょう。また、睡眠不足になると「肥満になりやすい」という調査結果も出ています。※4
睡眠時間が短くなると「レプチン」という食欲を抑制するホルモンの分泌が低下し「グリレン」という食欲増進ホルモンの分泌が増加するのです。
つまり、睡眠不足が続くと食欲に関するホルモンの分泌が乱れ、肥満に繋がりやすくなります。
肥満は「糖尿病」や「高血圧」などの生活習慣病の原因となります。糖尿病や高血圧は、心筋梗塞や脳出血、脳梗塞などの引き金にもなる病気なので注意しましょう。
肥満になり舌や喉周辺に脂肪がつくと睡眠中に気管が圧迫されて呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」を発症することも多いです。適切な治療を受けないと満足な睡眠をとれなくなり、事故などを起こす可能性も出てきます。
実際に2003年に起きたJR山陽新幹線居眠り運転事故や、2012年に起きた関越自動車道高速バス居眠り運転事故は、それぞれの運転主が「睡眠時無呼吸症候群」であったという診断を受けていますね。※5
4.深い睡眠の割合を増やすためにすべきこと

4-1.しっかりとお風呂に浸かる

おすすめは、ベッドに入る1~2時間前に39~40℃の少し温めのお湯に長く浸かることです。こうすることにより、休息神経とも呼ばれる「副交感神経」が活発化し、体内深部の温度が一時的に高まります。そして約90分後には下がり始めます。
人は、体内深部の温度が下がると眠気を催すので、入浴時間はベッドに入る90分前がいいでしょう。リラックスできるお気に入りの入浴剤などを用いるのもおすすめです。
4-2.間接照明で過ごす
いつまでも明るい場所にいると、脳が「朝だ」と錯覚してしまいます。寝付きが悪い、眠りが浅いと自覚している人は、布団に入る1時間くらい前から、部屋を暗くし、間接照明で過ごしてみましょう。そうすれば、自然な眠気がおきやすくなり、スムーズに浅い眠りから深い眠りへと移りやすくなります。
4-3.スマホは触らないようにする

このブルーライトは朝日とよく似た波長を持っており、それを長時間見続けると脳は「朝だ」と錯覚し、眠気が去ってしまいがちです。
「布団の中でスマホを見ているうちに、目が冴えてしまった」という経験がある人も多いですよね。
スマホを見て眠りにつけば、睡眠の質は悪くなります。パソコンや携帯用ゲーム機でも同様です。深い睡眠の割合を増やしたい場合は、眠る2時間前にはスマホなどを触るのをやめましょう。
4-4.リラックできるように心がける
眠気はリラックスしていると訪れやすくなります。お風呂にゆっくりと浸かって、静かな音楽をかけた部屋で過ごしたり、ベッドの上で軽いストレッチをしたりするなど、自分自身がリラックスできるように心がけましょう。
「入眠儀式」という言葉があるように「これをすれば眠りやすくなる」という方法を見つけることもおすすめです。例えば、肌触りのいいぬいぐるみを抱っこする、お気に入りのアロマを焚く、などですね。
ただし、飲酒はやめましょう。飲酒は眠気を催しますが、睡眠が浅くなるのでかえって睡眠の質を下げてしまいます。
4-5.喫煙者はタバコを吸わないようにする

ゆっくり眠りたい人にとっては、喫煙は逆効果でしかありません。「たばこを吸うことが一番のリラックス」という人もグッと我慢をして、他の方法でリラックスをしましょう。
まとめ:深い睡眠の割合を増やそう

睡眠時間も大切ですが、時間をとればいいというわけでもありません。
最後に今回の記事の内容をまとめておきましょう。
- 睡眠にはノンレム睡眠とレム睡眠の2種類がある
- 睡眠の質を高めるにはノンレム睡眠時に深い睡眠に入ることが大切
- 睡眠時間はそれほど神経質にこだわらなくて良い
- 深い睡眠の割合を増やす方法を試してみよう
「たっぷり眠ったはずなのに眠い」と悩んでいる方は、ぜひ深い睡眠の割合を増やす方法を試してみてくださいね。