「睡眠」から可視化する 新・健康経営サービス
「睡眠」から可視化する 新・健康経営サービス
日本の睡眠時間の変化
2024年の有職者1万人における平均睡眠時間は6時間50分と、過去5年の調査において最も長い時間となりました。調査開始時の2020年と比較すると23分と睡眠時間は増加していますが、OECD加盟国の平均睡眠時間である8時間28分よりも圧倒的に短く、依然として日本の睡眠は世界でも最低レベルにあると言えます。また理想の睡眠時間を調査したところ、7時間40分と実際の睡眠時間との差が50分あったこともわかりました。
《調査結果》
2023年と比較して+7分。
理想の睡眠時間との差は50分。
*全データにおいて一元配置分散分析を行い有意差ありと確認(p <0.01)。また、前年との睡眠時間の比較についてはBonferroni補正したt検定を実施し、有意差ありと確認(いずれもp<0.01)
2023年12月に厚生労働省から発表された「健康づくりのための睡眠ガイド2023(案)」において、成人の推奨睡眠時間は6時間以上とされていますが、本調査において 6時間未満の睡眠時間の割合は23.7%を占めており睡眠不足は今なお日本における大きな課題であると考えられます。
生産性(経済損失額 ※1)と睡眠の関係性
睡眠の質の悪化は、仕事のパフォーマンスにも大きな影響を与え、企業の損失にも繋がることが近年報告されています。産業事故の多くも睡眠不足や睡眠障害が原因で起きているといわれています。
今回の調査では改めて、生産性と睡眠の関係性を調査したところ、「睡眠が生産性に影響を与えているか」という設問に対して、回答者の70.0%が「強く影響している」または「影響している」と回答し、睡眠と生産性の関係に対する理解が進んでいることがわかりました。
《調査結果》
睡眠の質が悪いと経済損失額が高い
※1 経済損失額:自身の生産性を0-100%で表現した際の回答値と年収を掛け合わせ経済損失額を算出
睡眠の質(ランク):オリジナルの質問の回答結果をスコアリングし、さらに4段階A~Dランクに置き換えました。
A:課題なし B:軽度な課題あり C:課題あり D:要改善
睡眠の質のランク別に経済損失額※1を調査したところ、睡眠の質と経済損失額に相関が見えてきました。睡眠の質に課題がないAランクの人の経済損失額は年間89万円で、要改善のDランクの人では 年間165万円と76万円の差があることがわかりました。
これは睡眠の質を改善することで、従業員の経済損失額が低減し、ひいては企業の労働生産性の向上につながる可能性を示唆する結果といえます。
出社するのが憂鬱の感じる日数と睡眠の質の関係性
メンタルヘルスと長時間労働の関係性は以前より注目されていますが、近年の研究で長時間労働はメンタルヘルス悪化の直接的な原因ではなく、長時間労働から起こる睡眠不足がメンタルヘルス悪化を引き起こしていることが報告されています ※2。
《調査結果》
睡眠の質が悪い人ほど出社することに対して憂鬱に感じている
* Games Howell法による多重比較を実施し、0-1日間、1-2日間で有意差ありと確認(いずれもp <0.01)
※2 Tenshi Watanabe,et al. https://www.mdpi.com/1660-4601/19/11/6715
出社することに対して憂鬱と感じている日数が週1回以上と回答された方は全体の約6割となり、その中でも 週5日以上と回答された方は2割以上に達しました。また、出社するのが憂鬱と感じる日数が0日の人(n=3,931)は睡眠の質スコアが平均76.6でしたが、憂鬱と感じる日数が多くなるにつれて同スコアの平均点は減少し、週5日以上憂鬱と感じる人と比べると、8.7ポイントもの差があることが確認されました。
なお、本調査では、出社することが憂鬱と感じる日数と睡眠時間には同じような関係性は見られませんでした。
睡眠偏差値TOP1000とWORST1000の特徴
睡眠偏差値TOP1000人とWORST1000人について、睡眠時間、睡眠の質、睡眠習慣、働き方などを比較したところ、多くのポイントで特徴がみられました。
《調査結果》
* t検定を実施し有意差ありと確認(p <0.01)
平均睡眠時間においては、TOP1000は7時間12分と本調査全体の平均睡眠時間6時間50分より22分長く、比較的十分な睡眠がとれていました。一方、WORST1000は6時間32分と全体平均と比較して約18分短い結果となりました。
睡眠の質スコアにおいては、TOP1000とWORST1000には28.6ポイントの差がありました。睡眠の質スコアに影響を与える睡眠習慣の中でも特に「就寝前のスマホの利用率」に関しては明確な差異が確認されました。TOP1000の就寝前のスマホ利用率が7.7%と低いのに対して、WORST1000は50.5%と半数以上が利用していることがわかりました。スマホの使用に関しては、ブルーライトが悪影響を及ぼすと言われることが多くありますが、最近は画面上でブルーライトはカットされていることもあり、ブルーライトの影響よりもSNSやメールを確認すると脳が覚醒してしまうことの方が睡眠に影響を与える傾向にあります。入眠困難や中途覚醒の要因にもつながるなど、睡眠の質が悪くなってしまいます。
また、働き方にもおいても差が確認されました。TOP1000とWORST1000でが、総労働時間は1時間20分、特に時間外労働時間では1時間33分の差があり、いずれもWORST1000の方が長い時間働いていることが確認されました。長時間労働すると人は睡眠時間を削る傾向にあり、睡眠不足を招きやすくなります。さらに不規則な働き方でもあるシフトワーカーの割合もWORST1000の方が8.5%多い結果となりました。
寝室の色と睡眠の関係性
今回の調査で、寝室の色は白・ホワイトが36%主流であり、次点も「オフホワイト(クリーム)」「ベージュ」「茶色」が10%前後で続いており、落ち着いた色にする人が多いことがわかりました。
《調査結果》
睡眠の質向上には白い寝室がおすすめ
特に男性は女性と比較して「白・ホワイト」を基調とした寝室にしている割合が高く、その他の色について性年代別の傾向をみると、女性は「緑」「ピンク」が男性より高く、男性(特に若年)は「黒」が女性より高くなっています。
睡眠においては白い寝室で寝ている人がよい睡眠がとれていることがわかりました。睡眠の質のスコアが73.58と最も高く、平均睡眠時間も10,000人の平均である6時間50分確保できていました。続いて茶色、ベージュの順で睡眠の質が高い結果でした。
イギリスの2013年に行われた2,000人の調査結果では青が一番よい睡眠がとれる色と紹介されていました。またその調査ではカラーセラピー&ホリスティック・インテリア・コンサルタントのスージー・チアザリ氏は寝室のインテリアは、一晩の睡眠の質と量に確実に影響するため、寝室のインテリアの色はよく検討する価値があると述べていました。
今回ブレインスリープとスーパーホテルが行った日本人10,000人を対象とした調査で青系の寝室(ネイビー・紺/水色・ライトブルー・アクア/青・ターコイズ)で寝ている人は睡眠の質のスコアも悪くはないものの白や茶色には及ばない結果でした。国によって違いあることも大変興味深い結果となりました。
寝室での行動習慣
寝室で行う行動として多かった上位3つはすべてスマートフォンやタブレットを使用するものでした。
一番多かったのは41.3%が行っていた「SNS・ネットサーフィン」、次いで「動画閲覧」「ゲーム」の順でした。一方、睡眠以外に寝室でしていることはないと回答した人も全体で22.9%いました。
《調査結果》
寝室が赤色の人は仕事や勉強を行う割合が高く、
青系統の人はスマホで暇つぶしする割合が高い
睡眠の質別にみると、質が良い層ほど「睡眠以外に寝室でしていることはない」割合が高く、悪い層ほど様々な作業・娯楽をしている割合が高くなっていました。
中でもスマホやタブレットを利用した行動をしている人によりその傾向が顕著にみられました。
また睡眠時間別に寝室での行動をみると、睡眠時間が長い人は「家族・パートナー・友人との会話」をする割合が高い傾向にありました。
また、寝室での行動については、寝室の色別に特徴的な傾向も見えてきました。
一番、特徴があったのが寝室の色が赤で「仕事」や「勉強」、さらには「飲食」をする割合が他の色よりも高く、全体的で多くの人が行っていたスマホ・タブレットで「SNS・ネットサーフィン」「動画視聴」「ゲーム」などをする割合は低い傾向にありました。
その他色別の行動特徴は以下の通りです。
青色(ネイビー/水色/青など):スマホ・タブレットで娯楽を楽しむ割合が高い
ピンク:ネットショッピングや電話(テレビ通話を含む)
黄色:読書(紙・デジタル)
グレー:家族・パートナー・友人との会話
シルバー:イギリスの結果同様、エクササイズ、音楽鑑賞と勉強
白/ベージュ/茶色:目立った特徴ない
寝室の湿度環境
就寝環境の湿度は、温度と同様、睡眠に大きな影響を及ぼします。就寝時の寝室での湿度管理器具の利用状況を、季節別に調査すると、多湿環境である夏は約76%が利用しているものの、春・秋・冬は利用しない人が5割を下回るなど、就寝時には湿度管理はあまり行わせていないことがわかりました。特に春は7割以上が非利用でした。
《調査結果》
就寝時、夏以外は湿度管理器具を利用しない人が大半。
睡眠の質が悪い人は、設定湿度が低い傾向
湿度管理器具を利用し湿度設定を行っている方でも、約5割の方が睡眠の観点で推奨される湿度条件(春・夏:50-60%、秋・冬:40-50%)以外または湿度設定は不明と回答するなど、適正湿度を意識的に保とうとする人の割合が少ない傾向にありました。
湿度環境と睡眠の関係性をみると、睡眠時間が極端に短い人(4時間未満)や長い人(9時間以上)、また睡眠の質が悪い人(睡眠の質D判定)は、設定湿度が低い傾向にありました。
なお、睡眠学の観点から湿度は適正に保つことが理想とされているものの、本調査においては湿度管理器具の利用していない人の方が睡眠時間は短いものの、睡眠の質がよい傾向にありました。これはそもそも睡眠に悩んでいる人が睡眠の質改善のために就寝環境にこだわりを持っている可能性も示唆されるため、今後、スーパーホテルでは実際の客室を活かし、更なる検証を行ってまいります。
Appendix
2.寝室での行動
2-1.寝室での行動×寝室の色
2-2.寝室での行動×睡眠時間・睡眠の質ランク
3.年代別就寝時の湿度管理器具の設定湿度
2024年度は睡眠全体に加え、睡眠環境における調査を重点的に行いました。
発表した内容とは別に誰と一緒に寝ているか、温湿度、就寝環境のこだわり、入浴方法などのデータを業種・職種・性年代・地域別にご提供が可能です。
※本調査内容をご利用の際、出典元として『睡眠偏差値® ブレインスリープ調べ』と必ず記載いただくようお願いいたします。
【調査概要】
調査手法:web調査
対象地域:全国
対象者条件:男女
サンプル数:n=10,000ss
調査実施期間:2024年1月
※集団間の睡眠偏差値、スコアの比較においては、一元分散分析、あるいはt-検定を行い、有意水準5%以下を統計的に有意な差と判定し記載しました。
※昨年と一部対象者、調査項目を変えて調査を行っております。
イノベーションパートナー
睡眠状態を可視化し、現状把握、解決施策提案、効果検証まで実施可能です。
より詳細なサービス内容は、下記よりご覧ください。
その他コンサルティング
【COMING SOON】
本年度の調査結果でも、日本の睡眠時間に増加傾向が見られ、2024年の睡眠時間は2020年に比較し23分増えていることが確認されました。しかしながらOECD加盟国の平均睡眠時間に比べ、依然として1時間38分も短い傾向が認められ、理想の睡眠時間として50分程度長い睡眠時間をあげています。7割の人の睡眠が生産性に影響を与えると実感し、睡眠の質に課題がない人の経済損失額は年間89万円で、要改善の人では年間165万円と76万円もの差があることがわかりました。睡眠偏差値の悪い人は、睡眠時間が短く、睡眠の質が悪いことで特徴づけられますが、時間外労働などによる、総労働時間の長い人が多く、就寝前のスマホの使用率が極端に高いことが判明しました。企業の労働生産性の向上を目指すには、個人の生活習慣改善のみならず、時間外労働の軽減など、会社全体として取り組むべき課題も明確になりました。
本年度の調査ではスーパーホテルとの共同調査も行い、白い寝室で寝ている人がよい睡眠がとれていることがわかり,続いて茶色、ベージュの順で良い傾向がみとめられました。一方、一番よい睡眠がとれていないのは赤い寝室で寝ている人で、それらの人では、労働時間が長く、寝室で仕事や勉強をしている割合が多く、就寝前の飲酒や激しい運動を行う頻度も多いようでした。原因か結果の見極めが必要ですが、日本人では、自然と調和するナチュラルな色の寝室での就寝が良い睡眠をもたらすという今回の結果は興味深いです。