こんにちは。昼食後の会議などで眠くなった経験がある方は多いと思います。眠気に負けてしまい、お昼寝タイムになってしまった方もいるのではないでしょうか。
今回の記事では、そんな午後の睡魔や、睡眠圧に逆らった睡魔との戦い方について紹介したいと思います。
眠くなりそうな時、何をすれば良いのか
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眠いという状態は覚醒が弱まり睡眠に傾きつつあるので、この眠気を打破するためには、意図的に
覚醒スイッチを入れなければなりません。自分に刺激を与えたり、覚醒成分のあるものを取り込んだりすることが有効です。以下で具体的に紹介していきます。
覚醒成分の取り込み
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デスクにガムがある人を見かけますが、
眠くなった時・集中したい時にガムを噛むのは効果的と言えます。スッキリしたミントやカフェイン入りのものなど、リフレッシュ効果や覚醒効果があるガムを噛むと、「覚醒成分の取り込み」と「噛むこと(運動)での刺激」が得られます。
噛むことでの刺激で言えば、日中オフィスで食べるには相応しくないですが、
スルメや
硬い煎餅など、噛みごたえのあるものを食べると三叉神経の上行枝を介して脳に刺激が伝えられます。日本チューインガム協会の、可食部10gあたりに対する噛む回数を測った調査によると、ガムは550回程度噛んで捨てており、他の食べ物に比べ圧倒的に咀嚼回数が高い結果になりました(※1)。
覚醒成分の取り込みで言えば、覚醒系の物質で世界中で最も多く消費されている、
カフェインを取り込むのが効果的です。カフェインというとコーヒーのイメージかもしれませんが、コーヒー以外にも、エナジードリンク、コーラなどの清涼飲料水、緑茶、ほうじ茶、紅茶などにも含まれます。また、カカオ豆から作られたチョコレートやココアにも含まれます。
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出典:農林水産庁、カフェインの過剰摂取について
また、飲み物の
温度も覚醒への貢献といった点で重要です。冷たいものの方が目が覚めそうな気がしますが、実験的には、朝食の温かい汁物と同様、
温かい飲み物により深部体温が若干上がることが覚醒には有効であるため、温かい飲み物の方が適切です。覚醒時には深部体温が比較的高い状態(深部体温と皮膚体温との差)が必要だからです。
カフェインの過剰摂取には注意が必要
厚労省の報告では、カフェインには、適度な摂取では覚醒作用や血管拡張作用、ガンの抑制などの効果がありますが、過剰に摂取した場合では心拍数の増加、不整脈、興奮、不安、震え、めまい、不眠症、下痢、高血圧リスク(長期的な摂取の場合)の上昇などがあるとされています。また、子供や妊婦、授乳中の女性、カフェインの感受性の高い人は、より体への悪影響が大きいことが報告されており、各国とも、上限の摂取量は成人より低く設定されています(※2)。世界保健機構(WHO)によると、妊婦のコーヒー上限摂取量は一日カップ3-4杯とすべきとなっています(※3)。適切な範囲内で摂取しましょう。
刺激を与える
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眠くなった時、冷たいペットボトルを顔や首元に当てて、ひやっとして目が覚めたことはないでしょうか。まだ研究結果としてのエビデンスは少ないものの、理論的には成り立つため、
皮膚体温の低下および刺激は、眠気の打破や気分転換には有効な方法である可能性があります。
例えば、デスクワークで座りっぱなしなら、軽く歩いたりストレッチしたり、冷水で顔を洗ったり、クール系の汗拭きシートで体を拭いたり、頬や足を軽く叩いたり、冬場温かい部屋から外の外気に当たりに行ったりなどが有効でしょう。また、スポーツの現場では、
冷やすことで疲労回復や運動能力向上の効果が確認されています。既に応用・活用しているアメフトチームもあるそうです。スポーツや医療への応用・活用はまだまだ発展途上ですが、今後色々な取り組み・サービスが出てくると考えられます。
日中眠くなる理由
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午後に眠くなる理由として、昼食との関連を考えてしまいますが、実はあまり関係のないことがわかっています。複数の研究で、「
昼食そのものは午後2時頃に起きる入眠潜時の短縮(眠気の襲来)には関係ない」という実験結果が出ていて、生物学的にランチは午後に眠くなる主要因ではないと結論付けられています。
また、「食事を取ると消化吸収のため内臓に血液がより使われて脳に行く血液が減るから眠くなりやすい」という説もありますが、どんな状況でも血液は脳に優先的に流されるため、この説も間違っています。ただ、脳に行く血流に変化はなくとも、過量の昼食摂取では、「満腹感により意欲が低下し何もする気が起きず、眠いと感じる」ことはあるかもしれません。
14時頃に眠くなるのは、欧米では
「アフターヌーンディップ」と呼ばれており、むしろ体内リズムの問題であるとされています。昼食の有無にかかわらず、ちょうど覚醒レベルが少し低下しやすい時間帯であるとされています。サルなどでは、この時間帯に昼寝をする場合が多いので、体内リズムの影響下にある、この昼間の眠気は系統発生の名残かもしれません。
多くの研究者が、「アフターヌーンディップ」の機序や対処方法に関しての実験を行っていますが、
(1)昼食を抜いてもこの時間帯ねむくなる
(2)コーヒーなどのカフェイン摂取で眠気は軽減する
(3)慢性の睡眠不足が眠気を増強する
というような結果で一致しています。個人的には、いくら大量の朝食をとってもその後眠くはならないので、「アフターヌーンディップ」はやはり、
日内リズムの影響が大きいと思っています。
根本的な対策
睡眠負債の解消やスケジュールの調整(個人)
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普段目覚めが悪く、日中よく眠くなるような人は、
睡眠負債が溜まっている証拠です。その場合、ガムを噛んだり、冷たいものに触れたり、仮眠をとったとしても、その場凌ぎにはなりますが、根本的な解決にはなりません。
睡眠リズムの崩れや、十分な睡眠の時間及び質が確保されていないことが原因なので、長期的に考えるなら、まずは自身の睡眠を見直してみるのが得策です。
また、頻繁に午後2時頃に眠気が来るのなら、その時間帯に重要なタスクを行わない(集中できる時に大事なタスクを行う)、短時間の仮眠をとるなどのスケジュール調整・タスク管理を行うのも有効です。自身で調整できるものは調整し、自身のパフォーマンスを向上させましょう。
毎日の睡眠時間を例えば15分、30分でも増やしてみて、眠気やパフォーマンスが向上するのか試してみることをお勧めします。睡眠不足は慣れで自覚できていないことも多いのですが、改善する際には自覚できる人が多いといった特徴があります。
労働環境の改善や会議のスタンスの変更(組織)
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個人での取り組みもさることながら、
会社(組織)での取り組みも重要です。
例えば、会議について、海外に比べ日本の会議時間は非常に長く、また形式はディスカッションではなく特定の人物が一方的に話す形式が多いです。
そもそも私たちの集中力の持続時間は、それほど長くはありません。個人差が大きいため明確な持続時間はありませんが、長くても2時間ぐらいと言われています(一般的に子供は大人より集中できる時間が短い)。
ベネッセが行なった中学生を対象とした睡眠時間と学習効果の調査では、長時間(60分)より短時間を複数回行う(15分×3セット)学習の方が、学習の定着度合い及び集中力において有効であったとの内容が示されています(※9)。
また、発言したり、立っていることは、脳への刺激になります。
そのため、より短い時間設定(長時間になる場合は小まめに休憩を設ける)、スタンディングでの会議、発言が活発になる会議進行形式、などにすることで、眠気を軽減させ、集中力を一定以上に保つことができ、会議の生産性が上がると考えられます。
また、慢性的に残業時間が長い職場は長時間の拘束により、個人の睡眠時間を削っている可能性があります。その場合、脳や身体がベストコンディションではないため、組織全体の生産性を落としがちになります。業務内容やリソースなどの管理体制の改善などを行うのも有効と考えられます。