現代を生きる私たちは10分に1回スマホを手に取り、平均1日に7.5時間以上をスマホやPCに費やしています。急激なデジタルデバイスとの接触によって様々な不調をもたらしています。
その中で現れる首こり・肩こりは首の頸椎(けいつい)が本来あるべき緩やかなウェーブ形状を保てなくなる「ストレートネック」が原因です。そこで今回はストレートネックについてご説明します。後半では簡単なストレートネック診断もありますので、ぜひ参考にしてみてください!
ストレートネックとは?
ストレートネックとは、首(頸椎)の曲線が失われ、緩やかなカーブが無くなった状態を指します。首の骨は通常、背骨から頭を真っ直ぐ支えるために、緩やかなS字を描くようにカーブしていますが、ストレートネックになると前傾姿勢などにより首のゆるやかなカーブ(湾曲)がほとんどなくなり、ストレートになってしまうのです。なお、スマートフォンの利用が要因となっていることから「スマホ首」とも呼ばれています。
首のカーブが真っ直ぐになってしまうと、背骨の延長線上に頭が来るので、横から見たときに頭の位置が体に対して前に飛び出しているように見えます。さらに、その飛び出した頭のバランスを体全体で取ろうとするため、どんどん猫背や下腹が前に突き出した体型になってしまいます。
ストレートネックは、スマートフォンだけでなく、パソコンを長時間使用する環境でも同様に引き起こされることがあり、正しい姿勢の維持と定期的な休憩が必要です。
ストレートネックが増えている理由
ストレートネックの症状に悩む方は、年々増加傾向にあります。その原因は大きく2つあります。
1:日常的な猫背・長時間のスマートフォン使用
スマートフォンの画面やパソコンのモニターを見るときは下を向いていることが多く、画面に集中することで頭や肩が前に出て、首と背中上部の筋肉が伸び、首のカーブが失われた姿勢になります。そのような姿勢を長時間続けることが、ストレートネックの原因になります。これがスマホ首とも呼ばれる所以です。
2:厚みのある高すぎる枕の使用
人は1日の約3分の1を寝て過ごすので、合わない高さの枕を使い続けていると、ストレートネックが悪化することがあります。特に高すぎる枕では、頭が持ち上がり、首や肩に負担がかかります。ストレートネックを予防・改善するには、日中の姿勢を矯正するだけでなく、仰向け寝の状態で、首の自然なカーブを再現できる枕を使うことも大切です。
ストレートネックが引き起こす症状
人間の頭の重さは成人で約5〜6kgといわれています。この頭の重さを、7つの頚椎と周辺の筋肉が支えていますが、頭が前に傾くとその負荷が増大します。過度な負荷は頚椎や周辺の筋肉、靭帯に大きなストレスを与えるのです。
また、ストレートネックが引き起こす症状は、首や肩のこりや痛み、頭痛、手のしびれ、めまい、吐き気など様々です。
首、肩、背中、腰などのこり
ストレートネックの初期に見られる症状は、首や肩、背中、腰などのこりです。首や肩の血流が滞り、疲労物質や痛み物質が蓄積することで、筋肉がこり、痛くなります。
【重症化すると】病気・症状の悪化
ストレートネックの症状が悪化すると以下のような病気を引き起こす可能性があります。
- 痛み
- しびれ
- 椎間板ヘルニア
- 耳鳴り
- 視力低下
- 自律神経失調症
- うつ病
最初は筋肉のこりだけだった症状が、悪化すると痛みやしびれなどの症状を引き起こすこともあるため、気をつけましょう。また、首の筋肉のこりは視神経にも影響し、眼精疲労を引き起こす原因にもなります。
【その他】身体の不調
その他にも以下のような身体の不調が出ることもあります。
- 手足の冷え
- 頭痛
- 吐き気
- めまい
- 慢性的なだるさ
- 血行不良
他にも、首の筋肉がこわばって血流が悪くなると手足が冷えやすくなり、脳まで十分な血液が運ばれず頭痛を発症する場合も。筋肉のこりを放置せず、初期段階からケアすることが大切です。
自分がストレートネックか確認する方法は?
ストレートネックかどうかは、自分で簡単に診断できます。
1:直立したときに壁に頭がつくかどうか
まず、かかと、お尻、肩甲骨、肩が壁にぴったりとつくように真っ直ぐに立ちます。力を抜いた直立姿勢で後頭部が壁に当たれば頸椎の状態は正常です。
もし、意識的に首を動かさないと壁に後頭部がつかない場合は、ストレートネックの可能性があります。状態のレベルは、以下を参考にしてください。
レベル |
状態 |
軽度 |
後頭部がつきにくいが、意識すれば簡単につく |
中度 |
ほとんど後頭部がつかないが、力を入れればつく |
重度 |
力を入れても、後頭部がまったくつかない |
2:横から写真を撮って首の位置を確認してみる
横方向から全身の写真を撮ってください。顔の位置が体よりも前方にある場合は、ストレートネックの可能性があります。
ストレートネックの改善方法・予防方法
ストレートネックを改善・予防するには生活習慣を意識することが大切です。
姿勢をよくする
まずは日頃から姿勢をよくする意識をしましょう。
スマートフォン・タブレットを使用する際の姿勢
スマートフォンの使用時は、下を向いた姿勢になりがちなので注意が必要です。スマホの使用時間を意識的に短くしましょう。また、スマートフォンは目の高さに合わせて持つことで、下向きの姿勢を回避できます。さらに、片手で持つよりも、両手で持ったほうが、体が歪みにくいのでおすすめです。
パソコンを見る際の姿勢
デスクワークの際の姿勢をチェックしてみてください。頭が前に出ていたり、肩が前に巻いていたりする場合は要注意。自分に合った高さの机とイスを選び、猫背対策グッズを使用して、正しい姿勢でパソコンに向かいましょう。また、筋肉がこわばってしまわないように、30分に1回程度休憩をし、首や肩を動かすストレッチを心がけてください。
車など運転をする際の姿勢
シートの高さや角度を調整し、背もたれにしっかりと背中を密着させることで、頭が前に傾くのを防ぎます。また、ハンドルを持つ位置をシートで調整し、上半身を前に傾けすぎないよう注意することも大切です。
さらに、長時間の運転の場合は定期的にストレッチをおこない、首や肩の筋肉を緩めることで疲労を軽減し、ストレートネックのリスクを下げられます。
血流をよくする
ストレートネックの改善には血行を促進することも重要です。なかでも温熱療法は筋肉の緊張を和らげ、血流を改善する効果的な方法です。蒸しタオルを首周りにあてることで、こり固まった筋肉がリラックスし、血流促進につながるでしょう。また、熱すぎないお湯に20分程度浸かると、心身の休息効果も期待できます。
スマートフォンの使用時間を短くする
スマートフォンを使用する際は頭の前傾姿勢を招き、頚椎への負担が高まります。長時間頚椎への負担が続くと、筋肉の緊張や痛み、しびれなどの症状が現れる可能性があります。スマートフォンを触らないようにプッシュ通知をオフにしたり、遠いところに置いたりと工夫してみましょう。
日常生活でビタミンを摂るようにする
スマートネックの改善には、食事からバランスよく栄養素を摂取することが重要です。特にビタミンB群やビタミンEは、筋肉の疲労回復や血行促進に効果的とされています。
栄養素 |
期待できる効果 |
ビタミンB1 |
筋肉の疲労や緊張を和らげる |
ビタミンB12 |
末梢神経の回復を助ける |
ビタミンE |
抗酸化作用により筋肉の疲労を改善する |
これらの栄養素は、肉、魚、卵、緑黄色野菜などに多く含まれているので、日々の食事にうまく取り込みましょう。
また、食事だけでは不足する場合は、市販のビタミン剤やサプリメントを活用するのもおすすめです。例えばビタミンB1誘導体でもあるフルスルチアミンは、疲れやこりなどに効果を発揮します。さらに、神経の機能維持に役立つメコバラミンは、活性型ビタミンB12の一種です。これらの成分は市販のビタミン剤やサプリメントにも配合されているため、適度に取り入れてみてください。
ロキソプロフェンやイブプロフェンなどの外用薬を使用することで、痛みや炎症を軽減できます。
枕の高さを適正に合わせる
高すぎる枕を使用すると、常に下を向いているような寝姿勢となり、ストレートネックの原因となります。そのため、首のカーブに合った高さの枕を選びましょう。またやわらかすぎる枕では、頭を安定させるために、首に力が入ってしまい負担がかかります。
ストレッチや適度な運動をおこなう
ストレートネックの改善には、ストレッチや適度な運動が効果的です。特に首の筋肉を伸ばすストレッチをおこなうことで、首の可動域が改善し、痛みや肩こりが軽減できます。
また、きれいな姿勢を維持するには筋力が必要なため、日頃からできるだけ筋トレをしておきましょう。おすすめの筋トレはプランクです。プランクは体の前面の腹筋や前鋸筋をはじめ、全身の体幹をバランスよく鍛えられ、ストレートネックの予防にも効果的です。
ストレートネックにおすすめのストレッチ
ストレートネックをはじめ、首が痛いという方は、首周りの筋肉が固まっていることが原因なので、ストレッチが有効です。ここでは座ったままできる、簡単なストレッチ方法をご紹介します。
首の前側のストレッチ
首の前側のストレッチは以下の手順でおこないます。
- 左右どちらかの首から鎖骨あたりを手で押さえる
- 少し上を向きながら前屈みになる
このとき、鎖骨あたりを押さえている手で下方向に力を入れると、よりストレッチ効果が高まります。
首の後ろ側のストレッチ
首の後側のストレッチは以下の手順でおこないます。
- 猫背にならないように背筋を伸ばして座る
- 首を前に倒しながらゆっくり左右に傾ける
首回りは多くの神経が通っているため、強い力でストレッチすると痛めてしまう可能性があります。伸ばして気持ちいいところで止め、無理のないようにしましょう。
ストレートネックと枕の関係
人は、毎日6〜8時間程度というとても長い時間を睡眠に費やします。ストレートネックに最適な枕を使うことで、眠っている間に自然な首のカーブを作り出してあげられるでしょう。
睡眠時の疲労回復
人は、睡眠中に体の疲労回復や傷んだ細胞の修復をおこなっています。
睡眠中に、ストレートネックでダメージを受けた首も修復をはかろうとしていますが、もし高さや硬さが合わない枕を使用した場合、ダメージを回復するどころか、悪化させてしまう可能性があります。正しい寝姿勢を維持することで、体の修復能力によって自然とストレートネックのケアをおこなえます。
睡眠中に適切な寝姿勢を維持する
睡眠時でも、立っている状態の正しい首のカーブを再現することが大切です。横向きでは首の自然なカーブを再現することが難しいので、仰向きで眠ることがポイント。ストレートネックは、日々の積み重ねで起こる症状だからこそ、日々の睡眠時の姿勢にも気をつけましょう。
ストレートネックに最適な枕の選び方
枕選びに重要なのは、仰向け寝の姿勢で自然な首のカーブを作り出せるかどうかです。寝心地の好みだけでなく、しっかりと頭を支えられる高さや硬さの枕を選びましょう。ここでは枕選びのポイントを4つ解説します。
- 高さ
- 硬さ
- 形・サイズ
- 素材(高反発・低反発/ファイバー)
1:高さ
仰向けで寝たときも、立った状態の正しい姿勢と同じように、頸椎が緩やかなS字カーブになる高さの枕がおすすめです。また、横向きの場合も立っているときと同様に、頭から背中にかけて骨が真っすぐになる高さの枕を選びましょう。
仰向けの状態で頭を乗せたときに、首から頭にかけての傾斜角度が10〜15度、額より顎の先が5度程度下がっている状態が理想の寝姿勢と言われています。
自然なカーブをつくれる枕の高さは人によって異なりますが、華奢な方であれば5cm程度、体格が標準の方は6cm程度、体格のよい方は8cm程度の高さを目安に調整しましょう。高すぎる枕はストレートネックを悪化させたり、気道が圧迫されていびきの原因になったりすることも。反対に低すぎる枕では首を支えられず、首を痛め、肩こりの原因になってしまいます。
2:硬さ
後頭部や首の下に隙間ができず、首から頭までの力を完全に抜ける、適度な硬さと弾力性のある枕を選びましょう。適度な硬さが頭をしっかりと支えることで、スムーズな寝返りができます。ストレートネックに限らず、少し硬めの枕がおすすめ。やわらかすぎる枕では、頭が枕に沈み込んで寝姿勢がくずれ、頭が安定しないので、首に力が入って負担がかかりやすくなります。
3:形・サイズ
ストレートネック用として首の部分が頭の部分よりも高くなった形の枕が発売されていますが、全員に合うわけではないので、形は好みで選んで問題ありません。
枕のサイズは、自分の頭が横に3つ分以上ある幅を選びましょう。 寝返りには、体温調節や、体圧を分散する役割があるので、寝返りを打っても頭が落ちないサイズを選ぶことが大切です。また、寝返りで血液やリンパの循環を促すことで、頸椎周囲の血流が良くなり、ストレートネック予防にも効果があります。
4:素材(高反発・低反発/ファイバー)
適度な硬さとフィット感があり、しっかりと首や頭を支えてくれる素材がおすすめです。 一般的には、首の負担を軽減する、高反発ウレタンやファイバー素材がストレートネック対策に有効と言われています。さらに長時間使用しても型くずれしにくい枕を選ぶことも大切で、パイプやファイバーなどの耐久性の高い素材がおすすめです。また、ファイバーは高反発素材のように反発力や程よい硬さがあるうえに、シャワーで洗うことができるので、衛生面にも優れています。
ストレートネックの人が枕を使う際の正しい位置・高さは?
「ストレートネックには枕を使用しないほうがいい」という噂がありますが、誤情報です。
そもそも、枕は睡眠時の体圧を分散させ、頸椎への負担を軽減させる効果が期待できます。枕を使用しない、もしくは高さや硬さの合わない枕を使用し続けると、頸椎に負荷がかかり、ストレートネックを悪化させてしまう可能性があります。
理想的な枕の高さは、頭と肩の間に適度な隙間ができるくらいです。さらに、枕は頭と肩の間に収まるよう配置し、首が前に倒れ込まないようにしましょう。これによって首の自然なカーブを保てます。
枕を使っても良くならない場合は整形外科の受診を検討
日中の姿勢を意識し、ストレートネックに有効な枕を使用しても、翌朝首が痛い……そんな人はどうしたらいいでしょうか。
ストレートネックは、最初はそこまで大きな痛みを伴わないのですが、深刻な状態になると、頭痛や肩こり、首の可動域の制限、めまい、ふらつき、手のしびれ、吐き気、うつ病など、様々な症状を引き起こすことが報告されています。朝起きた際の首の痛みが2日以上続いたり、起きてから数時間経っても強い痛みがあったりする、または痛みが強くなる場合は、無理をせずに医療機関(整形外科)を受診しましょう。
整形外科ではX線検査やMRI検査をおこない、頚椎の状態を詳しく診断し、適切な治療方法を提案してくれます。場合によっては理学療法や薬物療法、手術などの治療が必要になる可能性があります。ストレートネックによって、筋を痛め、骨密度が減少し、椎間板ヘルニアになることがあるので、まずは整形外科で、骨の変形具合や症状の深刻さを診てもらうことが大切です。早めに受診することで、病気の悪化を避けられるでしょう。
ストレートネックは早めに確認・ケアしましょう!
ここまで、ストレートネックについて原因や症状をご紹介しました。ストレートネックを現代病と軽く済ませずに、早めにケアすることが大切です。そのためには、正しい姿勢への意識や、ストレッチ、適切な枕を選ぶようにしましょう。
なお初期段階であれば、ストレッチや運動、日常生活の改善で改善できる可能性もありますが、症状が進行している場合は早めに整骨院などの専門医を受診することをおすすめします。早期発見と適切なケアが、ストレートネックの改善と再発の予防につながるでしょう。
ストレートネック対策におすすめの枕
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