第2条 日光を浴びる

第2条 日光を浴びる

睡眠コラム

第2条 日光を浴びる

こんにちは。昨晩はぐっすり眠れましたか? 第1条では、スッキリ目覚めるためのアラーム設定についてお話しました。第2条・第3条では、目覚め後の覚醒を促す行動についてお話ししたいと思います。

目が覚めたら、まず最初に「カーテンを開けて日光を浴びる」

朝、目が覚めてから、どのような朝のルーティンを行っていますか? 目が覚めてからもう少しベッドでゆっくりする人もいると思いますが、その前にやって頂きたいことがあります。それは、目が覚めたらまず最初に、寝室のカーテンを開けて日光を浴びる、ということです。そうすることで、目覚め後の覚醒が促進されます。 ただし、予定の起きる時間より大分早く起きてしまった場合(中途覚醒など)は、強い日光を浴びると、交感神経が刺激されその後眠れなくなったり、リズムが前進し、通常の睡眠リズムが崩れてしまうため、日光を浴びるのは控えてください。また高齢者で、朝早く目が覚めて困るという人は、起床後直ぐに日光を浴びないようにしてください。 朝カーテンを開け日光を浴びることは、晴れの日だけに限らず、曇りの日、雨の日であっても有効です。

なぜ日光を浴びるのか?

朝、日光を浴びる効果は絶大です。 太陽を直接見なくても日光を浴びるだけで、松果体から分泌されるホルモンである「メラトニン」の分泌抑制機能が働きます。メラトニンは、「睡眠ホルモン」とも呼ばれています。つまり、日光を浴びることで、睡眠ホルモンの分泌が抑制され、睡眠圧(睡眠欲求)が抑えられるのです。

第3の目による睡眠・覚醒調節

人の網膜には、3つの光受容細胞が存在します。一つ目は光の強弱を感知する桿体細胞、二つ目は色彩を感知する錐体多細胞、そして三つ目はメラノプシン発現網膜神経節細胞です。この網膜神経節細胞のうち数%存在する、メラノプシン発現網膜神経節細胞(Gタンパク質共役受容体である光受容タンパク質)(※1)に、470nmの特定の波長の光(青色の光)が届くと、メラトニンの分泌を抑制させるシグナルが脳の松果体に伝達し制御されます。因みに日光は、約300nm~3000nmの幅広い波長(うち約380~780nmが可視光とすることが多い)なので、メラノプシンに反応する特定波長を含みます。これは、雨天であっても変わりません。

体内時計のリセット効果

メラトニンは、日光を浴びてから約14-15時間後に分泌が増加すると言われています。そのため、朝、目が覚めて日光を浴びると、夜には睡眠ホルモンの分泌が増え、自然と眠くなってくることになります。 またメラトニンの重要な働きとして、サーカディアンリズムの位相の明暗周期への制御(調整)が挙げられます。人のサーカディアンリズムは、「24.2時間」で、1日あたり12分ずつずれてしまいます。メラトニンにはそのズレを調整する働きがあります。24時間のリズムを保つためには、毎朝、体に朝を知らせて体内時計をリセットする必要があります。

サーカディアンリズムを崩すことのデメリット

職業柄どうしてもリズムを崩してしまう人もいます。例えば、夜勤勤務のある医療従事者やドライバー、飲食店勤務者、ホテルなどのフロント、警備関係の人などが挙げられます。夜勤の場合、日中寝て夜中起きている状態になり、ホルモンバランスや精神状態への悪影響が否めません。実際に多くの人が、睡眠障害、めまい、消化器系の不調、勤務中の眠気、倦怠感などの問題を抱えているそうです。 また、全盲の人では、光を感知できないため、常にフリーラン(地球のリズムに影響を受けず、生物固有の体内時計でのみ生きる状態)の状態となり、体内での1日の始まりが徐々に後退し、昼夜逆転の体内リズムにもなってしまいます。 処方箋として、メラトニンのサプリがあります。昔は、豚の脳にある松果体から抽出し精製して作られていましたが、現在では合成剤が生産されています。入手が簡単なことから、アメリカでは約2000億円の市場になっています。ただし、人によってサプリの効能・効果が大きく異なるため、リズムを崩してしまうからといって闇雲にサプリを用いるのはお勧めしません。なお、効果が高いのは、主に高齢者です。高齢になると、メラトニンの分泌量が減り網膜での光受容が弱まるためリズムを崩しがちであるのと、分泌量が少なくより敏感に反応するためです。

夜勤勤務を行う方の対症療法

日毎の就寝・起床時間の変動でなく、週毎などまとまった期間での就寝・起床時間の変動の方が負担が少ないとされています。業務上の制約もあるかもしれませんが、可能であれば、まとまった期間での活動パターンの統一をお勧めします。また、体内時計は1日で1時間しか新しいサイクルに同調できないため、日内の活動時間の大幅な変動に比べ、活動時間が少しずつずれていく場合の方が、体が順応し易くお勧めです。例えば、日勤・準夜勤・深夜勤のある看護師の場合、日勤→準夜勤→深夜勤のように、段階的に活動時間を変化させていくと良いでしょう。またシフトをずらす場合、前にずらすより後ろにずらす方が、順応が早く体が楽なことが分かっています。 また、他の記事で温度調節や睡眠前行動など、睡眠の質を上げるのに役立つ内容をご紹介していますので、ご参照下さい。

個人だけでなく社会的な取り組みが急務

夜勤を行う人は、体調不良、慢性的になるとがんや糖尿病などの生活習慣病や精神疾患になりやすくなると報告されています。この事実を会社・組織・社会が真摯に受け止め、環境改善やケア、知識の浸透などを推進していく必要があります。具体的には、仮眠室の導入、無理なシフトスケジュールの廃止、操作間違いを防ぐシステムの導入、睡眠外来などの診療の補助、社内セミナーの開催などが挙げられます。

光の変化を大きくさせるための工夫

寝室は暗くして、就寝中部屋は暗くして、光受容細胞への刺激を抑えて下さい。寝室を暗く保つ事により、朝、起きて日光を浴びる際に、光受容細胞への刺激が大きくなるように、寝室は暗くしましょう。可能であれば、カーテンは遮光性のあるものを使うと良いでしょう。カーテンの隙間から日光や外部の光が入り覚醒してしまう可能性があるので、隙間をなくすために、カーテンの端を窓の格子に留めたり下にクッションを置いたりして工夫する方法もあります(※2)。
【参考】 ※1: 光受容体メラノプシンに対する阻害薬の同定および視覚以外の光応答にあたえる影響の解析 ※2: ママと赤ちゃんのぐっすり本 「夜泣き・寝かしつけ・早朝起き」解決ガイド
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理想の寝姿勢とは?仰向け、横向き、うつ伏せ寝のポイントを徹底解説

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最近は“睡眠時間”の大切さだけでなく“睡眠の質”に注目が集まっており、良質な睡眠を得るために、“理想の寝姿勢”を考える人が増えています。そこで、寝姿勢の種類やそれぞれのメリット・デメリット、理想の寝姿勢などをご紹介します。自分に合った寝姿勢や適切な寝具を選んで、快眠を目指しましょう! 寝姿勢とは? “寝姿勢”とは、寝ているときの姿勢のことで、主に、仰向け、横向き、うつ伏せなどがあります。寝姿勢が崩れている場合、肩こりや腰痛、首の痛みのほか、寝起きのだるさなど、翌日の体調に悪影響を及ぼすことも。反対に、背骨が自然な状態の寝姿勢で眠ると、効率的に疲労回復でき、背骨の歪みを整える効果が期待できます。 日中は、デスクワークの方も立ち仕事の方も、同じ姿勢を取り続けて身体に負担をかけていることが多いため、睡眠時には理想の寝姿勢で快眠を得て身体の不調を解消することが大切です。 また、睡眠には免疫力の向上や精神の安定、記憶の整理や定着などの効果もあるといわれており、快眠によって頭がクリアな状態にリセットされ、仕事や日常生活のパフォーマンス(生産性)向上が期待できます。 人生の3分の1を費やすといわれている睡眠。せっかくなら整った寝姿勢で睡眠の質を高め、効率よく疲労回復しましょう。 寝姿勢の種類とメリット&デメリット 寝姿勢は主に下記の3種類に分けられます。 仰向け寝 横向き寝 うつ伏せ寝 どの寝姿勢にもメリットとデメリットがあるため、入眠時は、ご自身が心地よく感じる寝姿勢で寝て問題ありません。 肝心なのは、熟睡している際の寝姿勢と寝返りの打ちやすさです。一般的に人は一晩で平均20~30回寝返りを打つといわれており、寝返りを打つことで体液循環や背骨の歪み調節など、身体をリセットしています。 それでは、各寝姿勢の概要とメリット・デメリットをそれぞれご説明します。 仰向けは、リラックスした状態の寝姿勢 仰向けは、日本人に多い“平たい体格の人”向き。背中全体で体重による圧力(体圧)を支えるので、身体への負担が少なく余分な力も入りません。また、手足を動かしやすく体液循環がよいことから、筋肉がこりにくいといわれており、猫背の改善や防止が期待できます。 「睡眠時に仰向け寝の時間が多いことは、寝心地の良さをあらわしている」とされているほど、最も安定・リラックスできる寝姿勢です。 ただし、尾てい骨を圧迫しやすく、反り腰の方は腰への負担が大きくなりやすいので、寝返りが打ちやすいマットレス選びが重要です。ほかにも、舌が重力で落ち込むため気道が塞がれやすく、横向き寝に比べるといびきにつながるといったリスクが挙げられます。 メリット 体液循環が良くて筋肉がこりにくい 体圧が均等に分散されて負担が少ない デメリット いびきにつながることがある 反り腰の方は腰への負担が大きくなりやすい 横向きは、いびき予防に有効な寝姿勢 横向き寝は、肥満や扁桃腺肥大等で気道が狭くなっている方向きの寝姿勢です。舌が落ち込むことによる気道の妨げが起きにくいため、“いびきをかきにくく呼吸がしやすい”特徴があります。 また、腰の角度を自由に調整できるため、腰に負担がかかりにくいです。個人差はありますが、左側を下にすると消化系の臓器などに負担がかかりにくいともいわれています。 ただし、身体とマットレスの接する面積が小さく、体圧による血流の滞りが起きやすいため、長時間横向き寝の状態が続くと筋肉のこりや冷えの原因に。特に一方向で寝続けた場合は、身体の歪みや肩・骨盤の圧迫による痛みも生じやすいため、スムーズな寝返りをサポートしてくれる寝具を選ぶ必要があります。 メリット 呼吸がしやすくいびきをかきにくい...

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「いくら寝ても頭がスッキリしない」「日中に眠くなるので仕事に影響が出てしまう」などの症状を誰しも一度は経験したことがあるかもしれません。十分な睡眠時間をとっているにも関わらず、日中眠くなるのにはいくつかの原因があります。 この記事では寝ても寝ても眠いと感じる方のために、原因や対処方法を紹介します。病気や疾患が隠されている可能性があるので、早めに対策を取りましょう。 寝ても寝ても眠い原因とは? 寝ても寝ても眠気が取れない原因は、睡眠時間や質の低下、精神的・身体的ストレス、アルコールの影響、潜在的な疾患など様々な要因が関係していますが、大きく以下の4つに分類できます。 日常生活の問題 病気・疾患の問題 女性ホルモンによる影響 季節の変化 いくら寝ても日中に眠くなる症状は単なる睡眠不足だけでなく、うつ病や甲状腺機能低下症など、基礎疾患が隠れている可能性もあるため注意が必要です。 ここからは、それぞれの分類について詳しくご紹介していきます。 日常生活の問題による影響 睡眠不足や環境による睡眠の質の低下により、日中に強い眠気を感じることがあり、仕事や日常生活に支障をきたしてしまいます。さらに精神的・身体的ストレスによって自律神経が乱れ、睡眠障害を引き起こすこともあるかもしれません。 具体的な要因についていくつか見ていきましょう。 日常的な睡眠不足 日本人の平均睡眠時間は世界的に見ても短い水準にあり、男女ともに「6時間以上7時間未満」が最も多い傾向で約53.7%、次いで「6時間未満」が約37.9%となります。 しかし、個人差はありますが一般的に適切な睡眠時間は、成人で6〜9時間が推奨されており、睡眠不足とされる方が多くいるのが現状です。さらに睡眠不足が続くと、「睡眠負債(睡眠の借金)」と呼ばれる状態となり、目覚めが悪い、日中の眠気が強い、体調不良、イライラするなどの症状が現れます。 参考:良い目覚めは良い眠りから 知っているようで知らない 睡眠のこと - e-健康づくりネット(厚生労働省) 睡眠不足による睡眠負債が続いた場合、日中に眠くなるのが当たり前のようになることも懸念点として挙げられます。 睡眠負債はまとめて一日たっぷり眠っただけでは解消できず、長期的な取り組みが必要です。睡眠負債は心身に悪影響を及ぼすため、早期に対策を立てるようにしましょう。 睡眠の質の低下 寝室の温度や湿度、照明、生活音などが適切でないと、質のよい睡眠を取れなくなります。例えば、寝室が暑すぎたり寒すぎたりすると、睡眠リズムが作れず眠りにくくなります。また、明るい照明や外部からの騒音も、脳が刺激されて安定した睡眠を妨げる要因になるため要注意です。 さらに、寝具の状態が悪いと、体が十分に休めず朝起きても疲れが取れないため、日中に眠くなってしまう可能性があります。このように、睡眠環境は質のよい睡眠を得るために重要な要素となります。 心理的なストレス 心理的なストレスとは、生活上の出来事や環境の変化などによって引き起こされる心理的な緊張、不安、焦りなどの心の状態のことです。 心理的ストレスは自律神経系に大きな影響を及ぼし、睡眠不足の原因となることがあります。通常、夜間は副交感神経が優位になり、リラックスした状態で入眠しやすくなりますが、ストレスが続くと交感神経が優位になります。 交感神経系が優位になると、脳の疲労回復に重要なノンレム睡眠(深い眠り)の時間が減少するため、十分な休息が得られず翌日の眠気や集中力の低下につながってしまうのです。...

寝ても寝ても眠いのはなぜ?一日中眠くなってしまう原因と対策を解説

睡眠コラム

「いくら寝ても頭がスッキリしない」「日中に眠くなるので仕事に影響が出てしまう」などの症状を誰しも一度は経験したことがあるかもしれません。十分な睡眠時間をとっているにも関わらず、日中眠くなるのにはいくつかの原因があります。 この記事では寝ても寝ても眠いと感じる方のために、原因や対処方法を紹介します。病気や疾患が隠されている可能性があるので、早めに対策を取りましょう。 寝ても寝ても眠い原因とは? 寝ても寝ても眠気が取れない原因は、睡眠時間や質の低下、精神的・身体的ストレス、アルコールの影響、潜在的な疾患など様々な要因が関係していますが、大きく以下の4つに分類できます。 日常生活の問題 病気・疾患の問題 女性ホルモンによる影響 季節の変化 いくら寝ても日中に眠くなる症状は単なる睡眠不足だけでなく、うつ病や甲状腺機能低下症など、基礎疾患が隠れている可能性もあるため注意が必要です。 ここからは、それぞれの分類について詳しくご紹介していきます。 日常生活の問題による影響 睡眠不足や環境による睡眠の質の低下により、日中に強い眠気を感じることがあり、仕事や日常生活に支障をきたしてしまいます。さらに精神的・身体的ストレスによって自律神経が乱れ、睡眠障害を引き起こすこともあるかもしれません。 具体的な要因についていくつか見ていきましょう。 日常的な睡眠不足 日本人の平均睡眠時間は世界的に見ても短い水準にあり、男女ともに「6時間以上7時間未満」が最も多い傾向で約53.7%、次いで「6時間未満」が約37.9%となります。 しかし、個人差はありますが一般的に適切な睡眠時間は、成人で6〜9時間が推奨されており、睡眠不足とされる方が多くいるのが現状です。さらに睡眠不足が続くと、「睡眠負債(睡眠の借金)」と呼ばれる状態となり、目覚めが悪い、日中の眠気が強い、体調不良、イライラするなどの症状が現れます。 参考:良い目覚めは良い眠りから 知っているようで知らない 睡眠のこと - e-健康づくりネット(厚生労働省) 睡眠不足による睡眠負債が続いた場合、日中に眠くなるのが当たり前のようになることも懸念点として挙げられます。 睡眠負債はまとめて一日たっぷり眠っただけでは解消できず、長期的な取り組みが必要です。睡眠負債は心身に悪影響を及ぼすため、早期に対策を立てるようにしましょう。 睡眠の質の低下 寝室の温度や湿度、照明、生活音などが適切でないと、質のよい睡眠を取れなくなります。例えば、寝室が暑すぎたり寒すぎたりすると、睡眠リズムが作れず眠りにくくなります。また、明るい照明や外部からの騒音も、脳が刺激されて安定した睡眠を妨げる要因になるため要注意です。 さらに、寝具の状態が悪いと、体が十分に休めず朝起きても疲れが取れないため、日中に眠くなってしまう可能性があります。このように、睡眠環境は質のよい睡眠を得るために重要な要素となります。 心理的なストレス 心理的なストレスとは、生活上の出来事や環境の変化などによって引き起こされる心理的な緊張、不安、焦りなどの心の状態のことです。 心理的ストレスは自律神経系に大きな影響を及ぼし、睡眠不足の原因となることがあります。通常、夜間は副交感神経が優位になり、リラックスした状態で入眠しやすくなりますが、ストレスが続くと交感神経が優位になります。 交感神経系が優位になると、脳の疲労回復に重要なノンレム睡眠(深い眠り)の時間が減少するため、十分な休息が得られず翌日の眠気や集中力の低下につながってしまうのです。...