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朝5時。多くの人がまだ眠りについている時刻に、ひとりの女性が海に向かう。松岡亜音。19歳でありながら、すでに日本サーフィン界の未来を背負って立つ存在として注目される彼女にとって、この時間は特別な意味を持つ。
「波があると5時ぐらいに起きて、ご飯を食べる前に朝サーフィンして」
そんな彼女の一日は、常に海と共にある。
海辺で生まれた自然な情熱
──松岡さんとサーフィンとの出会いについて教えてください。
松岡さん： 私は千葉県の南房総市の千倉というところで生まれ育って、海岸の目の前に住んでいたんですけど、両親がサーフショップを営んでいて、そこから自然と、もう6歳の時から海で遊んで、砂遊びやボディボードをやっていました。もう覚えていないくらい小さい頃から、気がついた時にはもう板の上に立っていたという感じで、両親の影響が大きくてサーフィンを始めました。
初めて大会に出たのが4歳の時で、サーフショップのプッシュクラスで2番でした。その翌年の5歳の時に優勝できて、そこからすごく楽しいって思って本格的に始めました。
──ご家族も皆さんサーフィンを？
松岡さん： 一人っ子なんですけど、父はもうガンガンサーフィンをしていて、母も夏とかたまにサーフィンをする、サーフィン一家です。自然とやるようになりましたね。
厳しい練習の中で育まれた強さ
──ここまで情熱を注ぐようになった背景を教えてください。
松岡さん： やっぱりその初めて優勝した時とか、あとサーフィンはもちろん大会だけじゃなくて、大きい波に乗った時の景色とか、日常生活では味わえない感覚がもう染み付いて、成功した時の喜びがあるから、もっともっとっていう気持ちがすごく強くて。
もちろん大会で優勝して、まず目標はワールドチャンピオン争いに入ることが今の目標なんですけど、その前にサーフィンがすごく楽しいっていうことで大好きなのでやっています。
──苦労された時期もあったと伺いました。
松岡さん： めちゃめちゃあります。サーフィンを嫌いになることはなかったんですけど、父がかなり厳しくて、ずっと2人三脚でやってきたので。
小学校3年生くらいの時から一年中サーフィンをやり始めて、試合にもどんどん出始めました。でも最初は中高生には勝てないので、試合では負けたり、練習の時に乗れなかったりしたら指導が入って、その時にやっぱりきついことを言われたりとか。もちろん世界を見ていたので、それは承知なんですけど、次の日に学校に行って目が腫れていると「お父さんに怒られたんでしょう」ってお友達に言われたりとか、そういうのがしょっちゅうで、怒られた時の辛さはありました。
でも、そのおかげでメンタルも多分強くなったと思うし、今があるのですごく感謝しています。
10歳での海外挑戦が開いた世界への扉
──世界を意識するようになったきっかけは？
松岡さん： 10歳の時に初めて海外に行ったんです。一人で約2週間、カリフォルニアに行って、そこから毎年行くようになったんですけど、衝撃を受けました。同い年の子がすごくたくさんいて、自分より年下の子たちも、みんな毎週末試合をやって切磋琢磨していて、そこで毎回入賞できて、自分のサーフィンにもすごく自信がついて。
海外の同い年の女の子と友達になって、毎年行くようになって、英語も徐々に話せるようになって。今ではそのワールドツアーの2番目のCSっていうのを回っているので、割と若い頃から海外に行ってそこを見ていたからっていうのもあると思います。
──10歳でカリフォルニアに一人で行くなんて、自分は想像できません（笑）
松岡さん： 向こうの日本人の方の受け入れ先があったので、最初は日本語で全然問題なく受け入れてもらいました。12歳以下の子は飛行機で一緒についてくれるガイドの人がいたりとか、最初はすごく緊張したんですけど、でも全然問題なく大丈夫でした。
最初は泣いちゃって、やっぱり緊張と怖さがあったんですけど、行ってからはもうそんなの忘れていましたね。
史上最年少記録への道のり
──JPSAのプロ転向からグランドチャンピオンになられるまで非常に短期間でしたね。
松岡さん： 15歳の時に茨城の大洗で、プロになるためのトライアルと日本プロツアーが一緒になった大会に初めて出たんです。そのトライアルでプロになれて、その大会でそのまま優勝もできたので、そこからプロ登録をして、グランドチャンピオンを狙うことにしました。
でも私が参戦したのは全4戦のうち2戦目からだったので、残り3戦のうち上位3戦の成績でランキングが決まる仕組みだったんです。結果的に残り2戦は3位、3位だったんですけど、最初の優勝が効いて、グランドチャンピオンになることができました。
プレッシャーを楽しみに変える成長
──プロ転向後はプレッシャーも大きくなったのでは？
松岡さん： トップの選手がいるほど、やっぱり上位にいるよりも挑戦者の方が挑戦しやすい、プレッシャーなく挑めるっていうのはありますね。失うものは何もないし、挑戦するっていう気持ちが強かったので、プロになりたての頃はプレッシャーはなく挑めました。
でも、プロになって結果を出すようになって、トップって言われ始めると、プレッシャーがありました。今は世界レベルの大会に出ているので、本当に世界のトップの選手がいる中で、やっぱり挑戦者側だけど、負けたらどうしようっていうプレッシャーも今はすごく感じます。
経験を積んで、いろんな経験をしているから強くなる部分もあれば、やっていればやっているほど、失ったらどうしよう、うまくいかなかったらどうしようっていう不安ももちろんあります。でも、あまりそこは考えすぎないように、考えても受け入れて解き放つっていうことを心がけるようになったらすごく気持ちが軽くなって。
今でも全然緊張したり、プレッシャーは感じるんですけど、そこが楽しく思えるようになり始めています。
睡眠の質が支えるアスリート生活
──現在の1日のスケジュールを教えてください。
松岡さん： 波があると5時ぐらいに起きて、ご飯を食べる前に朝サーフィンしてっていう感じなんですけど、波がない日の方が多いので、日本だと6時とか7時に起きて、まずストレッチして、朝ご飯を食べる前に1回サーフィンして帰ってきて、ブランチみたいな感じでご飯を食べて、もう1回サーフィンするか、犬がいるので犬と散歩したりとか。午後サーフィンをもう1回行って、夕方トレーニングしてっていう感じです。
夏だと夕方7時とかまでサーフィンできちゃうので寝るのは10時とか、遅いと11時とかになっちゃうんですけど、できるだけ9時10時には寝るようには心がけています。
試合の時は3時半とか4時起きとかで出発して、5時入水の6時とか7時ぐらいから大会が始まることがあるので、朝は割と早いので夜は9時とかには寝るようにしています。
──睡眠がパフォーマンスに与える影響を実感されることはありますか？
松岡さん： 一番自分の体の調子がいい時は、もう集中力もそうですし、ゾーンに入っているっていうか、みなぎっている感じなんですけど、やっぱり少し疲れていたりとか、睡眠不足だったりすると、ゾーンに入っていかないので、演技が全然変わってきますね。
まだ専属のトレーナーをつけられるレベルじゃないので、体のケアは自分でマッサージとかストレッチとかやるしかないんです。だからこそ、本当に睡眠の質はすごく大切だなって思っていて、時間よりも質の方を私は重視しています。
「波が見える」瞬間の神秘
──「ゾーンに入る」状態について詳しく教えてください。
松岡さん： シンプルな生活をしている時が一番ゾーンに入りやすいですね。サーフィンのことしか考えていない時。朝起きて波チェックして、朝サーフィンして練習して帰ってきて、ご飯食べて、試合の直前になって準備して試合に挑むという時が一番、自分の体の調子もいいですし、波がとにかく見えますね。
──「波が見える」というのは、どういう感覚なのでしょうか？
松岡さん： 波って同じ波が来ないんですけど、そのタイミングというか波回りとかがすごいハマる時が、波が見える、ゾーンに入ってるという無敵な感覚があります。
波がこうなるとかじゃなくて、この波は自分の演技がしっかり出せる、発揮できるという波が見えるって感じですね。
ずっとその水平線を見て、来てなくても、こう触った時に、波を触った時に「あ、右に来るかも」とか最近わかるようになって。そのこう血を、流れるのが海に伝わっている感じがして、多分本当にトップの選手はもっとそれが察知能力というのが鋭いんじゃないかなと思います。
ブレインスリープとの出会いが変えた疲労回復
──ブレインスリープ ピローを使い始めての変化はいかがでしたか？
練習した後はもう筋肉痛がひどくて、特にパドル、波に向かって泳いでいく動作なんですけど、長い距離をパドルした後は、本当に石でも乗っているんじゃないかってぐらい首や肩がガチガチに固まっちゃうんです。そのまま普通の枕で寝ると、次の日はもっとひどくなってしまって。
それが今回いただいた枕を使ったんですけど、全く疲労感なく朝爽快に起きれたので、「え、なんだこの枕は」とビックリしました（笑）。だから静岡の大会遠征先にも持っていって使わせていただきました。
トレーニングやサーフィンで蓄積した疲れって、ストレッチだけじゃ回復できない部分があるんですが、朝起きた時に本当に爽快感があって、疲労感なく起きることができました。とにかく1日目の時の衝撃がすごかったです（笑）。
──精神面での変化も感じられましたか？
朝起きた時の目覚めがすごくはっきりしているんです。視界もクリアで、朝お母さんに「おはよう」って言う時も、声にハリがあるというか、元気よく言えるようになって。そういうところですごくポジティブになったんじゃないかなって思います。
未来への情熱「子供たちに伝えたい」
──将来の目標について教えてください。
松岡さん： 一番の大きな目標は、ワールドチャンピオン争いに加わってチャンピオンになることと、あとはオリンピック、2028年のロサンゼルスオリンピックも視野に入れていて、その時私が22歳なので、このままもっともっとレベルを上げて世界でも勝てるようになって、オリンピアンになることも目標の一つです。
両親が営んでいたサーフショップでよくサーフスクールでレッスンをしていて、教えることが多くて、やっぱりその乗れた時の笑顔とかを見ると嬉しいので、最近は遠征とか出て教えることが少なくなってきてしまったんですけど、キャリアが落ち着いたら子供たちにサーフィンを教えたいなって思っています。
──松岡さんにとって睡眠とは？
松岡さん： 自分の競技をする上で欠かせないものですね。睡眠の質が悪かったらここまで来ていないと思うし、プロサーファーとして大事なものの中で、かなり上位に入る大切なものですね。
水平線の向こうに「見える」波。それは単なる現象ではなく、松岡亜音が積み重ねてきた経験と、質の高い睡眠によって研ぎ澄まされた感性が生み出す特別な瞬間だ。
「波を触った時に『あ、右に来るかも』とか最近わかるようになって」
そう語る彼女の言葉には、19歳とは思えない深い洞察がある。海との対話を可能にするのは才能だけではない。規則正しい生活リズム、質の高い睡眠、そして何より「情熱だけは眠らせない」という強い意志。それらすべてが組み合わさった時、松岡亜音は「波が見える」サーファーになる。
2028年のロサンゼルス五輪まで、あと3年。世界の頂点を目指す彼女にとって、今夜の眠りもまた、明日の波を「見る」ための大切な準備なのだ。
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