2023年版日本の『睡眠偏差値®』調査結果報告~生産性、免疫力向上の鍵は睡眠時間ではなく「睡眠の質」と判明~

CORPORATE
株式会社ブレインスリープ(本社:東京都千代田区、代表取締役:廣田敦、以下「ブレインスリープ」)は、全国47都道府県の1万人(性別・年齢・都道府県で割付)を対象として、「睡眠偏差値®」調査を2020年から実施しており、2023年で4年目を迎えました。睡眠偏差値は、睡眠習慣や睡眠負債など睡眠状態を直接判定する項目に加えて生産性やストレスの程度、睡眠時無呼吸症候群(SAS)のリスクなどを総合的にスコアリングする手法です。今後この調査結果を活用し、日本の睡眠のさらなる改善を目指すべく、様々な活動をおこなっていきます。 睡眠偏差値® 調査結果ページ https://brain-sleep.com/service/sleepdeviationvalue/research2023/ ■調査結果サマリー ブレインスリープ社は、睡眠に関する様々な尺度から「睡眠偏差値®」を構成し、日本人の睡眠実態を把握する試みや企業の従業員様向けの健康経営サービスなどへの展開を進めてきました。今回、2023年版の睡眠偏差値の測定を実施し、新たに下記6つの項目について、日本人の睡眠における特徴を明らかにしました。 1.男女年代別睡眠偏差値 2.日本の睡眠時間の変化 3.男女別 睡眠の質悪化の要因ランキング 4.生産性と睡眠の関係性 5.免疫力と睡眠の関係性 6.働き方(固定制と交代制)と睡眠の関係性 ■西野精治コメント/ブレインスリープ最高研究顧問、「スタンフォード式 最高の睡眠」著者 本年度の調査結果では、日本の睡眠時間が多少の変動はあるものの、新型コロナウイルス感染の流行前と比べて、引き続き延びていることが確認されました。新型コロナウイルス感染流行やそれに伴う仕事の様式の変化に伴う睡眠時間の延長は世界的な傾向ですが、特にリモートワーク下での睡眠の質の低下も認識されています。睡眠の質の低下は、生産性のレベルを下げるだけでなく、新型コロナウイルス感染のリスクも高める事が明らかになりました。パンデミック下でこそ、睡眠の質の向上を心がける必要があると言えそうです。今回の調査では、女性の睡眠偏差値が同年代男性より高い傾向が見られましたが、ホルモンバランスの変化や育児など、女性特有の要因が女性の睡眠の質を低下させると認識されています。また、以前より指摘されていますが、交代制勤務者では、固定時間勤務者に比較して睡眠の質が悪い傾向がみとめられました。睡眠の質の低下は生産性を下げ、疾患リスクを高める点並びに、交代勤務従事者数が年々増加している現状を鑑みると早急な対策が望まれます。 1.男女年代別睡眠偏差値:20代男性の睡眠偏差値が一番低く、60代以上の女性が一番高い! 新型コロナウイルス感染症により生活様式が大きく変化した過去2年と比較して、今回の調査を実施した2023年1月は感染対策の緩和が進み、日常生活が戻りつつあるタイミングでの調査でした。睡眠偏差値は性別で比べると女性の方が高い傾向にありました。睡眠の質の項目では、男性は女性と比べて高い点数だったものの、生産性やストレスの項目において低い結果となったことが要因です。 また、世代別で比べると20代男性が一番低く、60代女性が一番高い結果となりました。60代女性においては、同年代の男性と比較しても3ポイント以上高い結果でした。睡眠時間においては60代以上が一番短く、若年化するにつれて長くなる傾向にありました。一方、その他の睡眠の質や生産性・ストレスの項目では20代が一番低く、年代が上がるごとに高くなっていました。

男性/女性それぞれにおいて、年代別の一次元配置分散分析を行い有意差ありと確認(p<0.01)

2.日本の睡眠時間の変化:2022年と比較すると-5分。2021年と同じ結果に これまでのブレインスリープの調査では、日本の平均睡眠時間は2020年では6時間27分、2021年では6時間43分、2022年では6時間48分となり、過去2年間で睡眠時間が21分増加するなど改善する傾向がみられていました。今年の調査では、日本の平均睡眠時間は6時間43分で、2022年と比較すると5分短くなり、2021年と同じ睡眠時間に戻る結果となりました。 ブレインスリープは2019年の設立以来、4年間継続して同様の調査を行ってきており、当初調査時よりも睡眠時間の増加は見られるものの、OECD加盟国の平均睡眠時間である8時間25分よりも圧倒的に短く、依然として日本の睡眠は世界でも最低レベルにあると言えます。まだまだ改善の余地があると言える日本の様々な睡眠課題に対してブレインスリープとしても取り組み、今後も日本の睡眠を良くするために活動を継続していきたいと考えています。 *全データにおいて一次元配置分散分析を行い有意差ありと確認(p<0.01)。また、前年との睡眠時間の比較についてはt検定を実施し有意差ありと確認(いずれもp<0.01) 3.男女別睡眠の質悪化の原因ランキング:男女共に上位は仕事。女性はホルモンバランスの乱れが原因に 睡眠は人が健康的な生活を送る上で必要不可欠です。十分な睡眠を取ることによって、脳や身体の疲労回復が行われ、翌日の活力に繋がります。睡眠を評価する際、しばしば睡眠時間などの単純な定量データだけに注目が集まりますが、良い睡眠には「質」が重要な役割を担います。今回の調査において、全国47都道府県の1万人の回答者の中で、自身の睡眠の質が「わるい」もしくは「非常にわるい」と回答した人は4,287人もおり、実に日本全国の半数近くの人が睡眠の質に課題を抱えていることがわかりました。 睡眠の質が悪い原因として考えられるものを、回答が多いものから順にランキングにしたところ、男性はTOP3すべてが仕事関係でした。女性も男性同様に上位2位までは仕事関係だったものの、3位はホルモンバランスの変化・乱れとなり、生理・妊娠出産・更年期など女性ならではの健康課題も見えてきました。 実際に生理・妊娠出産・更年期を理由に睡眠の質に課題があると回答した女性に対して、一か月の中で不眠を感じる日数を要因別に回答してもらったところ、生理(前後含む)で平均5.7日、妊娠出産で平均10.4日、更年期で平均7.3日もあることもわかりました。 4.生産性と睡眠の関係性:生産性の高い人は睡眠の質が高い 睡眠の質の悪化は、仕事のパフォーマンスにも大きな影響を与え、企業の損失にも繋がっていることがわかっています。産業事故の多くも、睡眠不足や睡眠障害が原因で起きているといわれています。 今回の調査では改めて、生産性と睡眠の関係性を調査しました。自身の生産性を100%を最大値として自己評価した際、睡眠時間との明確な関係性は見えなかった一方、睡眠の質のスコアとの相関性が見えてきました。自身の生産性をレベル3(生産性の自己評価が51~75%)以上と回答した人の睡眠の質のスコアは70点以上、またレベル4(同じく76~100%)に近付くほど睡眠の質のスコアが上がる傾向にありました。 睡眠においては、睡眠時間も重要ではあるものの、「質」がより重要だと従来言われてきましたが、生産性の評価が睡眠時間よりも睡眠の質と相関が強いという今回の結果はこの考え方を改めて裏付ける結果であり、睡眠の質が向上すれば生産性も向上する可能性があると言えるでしょう。 *「睡眠時間」および「睡眠の質」において、それぞれ一次元配置分散分析を行い有意差ありと確認(p<0.01) 5.免疫力と睡眠の関係性:免疫力は睡眠の質に鍵がある 2020年以降の新型コロナウイルスの流行もあり、免疫力の向上やワクチンの有効性を高める上での睡眠の重要性が再認識されています。今回の調査においても、睡眠の質が免疫力に影響を与える可能性を確認するため、新型コロナの罹患回数と睡眠偏差値の関係性を調査しました。 今回の回答者の中で新型コロナに1回罹患した人は2,276名(回答者全体の22.8%)存在しました。一番多く罹患した人では、全体の0.1%ではあるものの12名が5回以上罹患していることがわかりました。 新型コロナウイルスに1回でも罹患したことのある人と罹患していない人の睡眠偏差値を比較すると、罹患した人の方が有意に睡眠偏差値が低い結果となりました。また、罹患回数が多いほど睡眠偏差値が低い傾向があることも分かりました。 今回の調査結果はあくまで現時点の睡眠偏差値を評価するものであり、過去1年間の体調不良と睡眠状態の間の因果関係を示すものではありませんが、新型コロナウイルスに罹患した人は免疫力が低下しており、それが睡眠の問題に起因しているために睡眠偏差値が低くなっている可能性があると考えられます。睡眠は、健康の維持において非常に重要な役割を担っており、新型コロナに打ち勝ち、健康的な毎日を送るためにもこれまで以上に睡眠への意識を高めていく必要があると言えます。 *「睡眠時間」および「睡眠の質」において、それぞれ一次元配置分散分析を行い有意差ありと確認(p<0.01) 6.働き方(固定制と交代制)と睡眠の関係性:交代制勤務の睡眠偏差値が悪い傾向 今回の調査では、働き方と睡眠の関係性も調査しました。その結果、交代制で働いている人は、睡眠時間でみると6時間48分となり固定制勤務の方と比較しても特に短いわけではないものの、睡眠偏差値では46.6 であり、固定制勤務と比較すると有意に悪い結果であることが分かりました。 良い睡眠を生み出すには、眠りに就く時間はできる限り日々固定化することが大切です。夜22時なら毎日22時、深夜3時なら毎日深夜3時。就寝時間を一定にすることで入眠に最適なリズムが生まれ、寝つきがよくなり、深い睡眠が生まれやすくなりますが、交代制勤務の場合そのような固定化が難しく、結果的に睡眠偏差値が悪くなる傾向にあることが考えられます。 本調査でも回答者である日本人有職者全体の10%程度が交代制勤務を行っていることがわかりました。単純に睡眠の良し悪しの観点からは交代制勤務を推奨することはできませんが、交代制勤務がなければ現代社会を支えられないのもまた事実です。24時間サービスの提供や、24時間工場の稼働のために経済効率から交代勤務を導入する企業は数多くあり、その勤務体系も経済優先で決定されることが多いと考えられます。また、警察署や消防署、民間の警備会社など、治安や社会インフラの維持のための仕事も24時間対応にならざるを得ません。 完全な解決策にはなりませんが、交代制勤務者の負担を少しでも軽くするには、シフトを前へずらすのではなく、後ろへずらすことが重要です。 たとえば、病院の看護師の日勤、準夜勤、深夜勤の三交代制の場合なら、深夜勤→準夜勤→日勤ではなく、日勤→準夜勤→深夜勤の順番でシフトを組むということです。後ろへずらすほうが、順応しやすく、眠気や生産性の問題が少なく、満足度が高いと言われています。 * 睡眠の時間および睡眠の質について、それぞれ時間固定制と交代制の2つの群にt検定を実施(** : p<0.01) ■睡眠偏差値® 調査結果ページ https://brain-sleep.com/service/sleepdeviationvalue/research2023/ ブレインスリープでは本調査に関する様々な情報提供が可能です。 ※本調査内容をご利用の際、出典元として『睡眠偏差値®2023 ブレインスリープ調べ』と必ず記載いただくようお願いいたします。 ■睡眠偏差値®とは 睡眠を評価する際、しばしば睡眠時間などの単純な定量データだけに注目が集まりますが、ブレインスリープは、もっと多角的で総合的な観点から睡眠を評価することが重要だと考えました。そこで、睡眠に関する自覚症状や睡眠習慣を含む幅広い視点で睡眠の主観的評価を定量化する質問群を作成し、さらに日本人に馴染みのある「偏差値」として数値化することで、日本人全体の中での相対的な睡眠状態を把握することを可能にするシステムを構築しました。それが「睡眠偏差値®」です。 現在は、NTT東日本をイノベーションパートナーとして、企業向け健康経営サービス「睡眠偏差値for Biz」を展開しております。従業員の「睡眠」から企業との「エンゲージメント」を可視化し、さらに、全国の睡眠偏差値と比較することで、自社だけでは表面化されていない課題に新たに気づくことができ、プレゼンティズムを改善することができるサービスです。 【調査概要】 調査手法:web調査 対象地域:全国 対象者条件:男女 サンプル数:n=10,000ss 調査実施期間:2023年1月 ※集団間の睡眠偏差値、スコアの比較においては、一元分散分析、あるいはt-検定を行い、有意水準5%以下を統計的に有意な差と判定し記載しました。 ※昨年と一部対象者、調査項目を変えて調査を行っております。
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