情熱だけは、眠らせない。- 格闘ゲームカルチャーの仕掛け人・石井プロが語る「“好き”だけで、ここまで来た」

情熱だけは、眠らせない。- 格闘ゲームカルチャーの仕掛け人・石井プロが語る「“好き”だけで、ここまで来た」

情熱だけは、眠らせない。- 格闘ゲームカルチャーの仕掛け人・石井プロが語る「“好き”だけで、ここまで来た」

#passion-never-sleeps #特集

「+1F(プラスワンフレーム)」。格闘ゲームを愛する人たちに向けて、彼が手がけるアパレルブランドの名前だ。石井プロ。トッププレイヤーとしてではなく、映像制作やアパレルという“裏方”から、格闘ゲームカルチャーを世に広げようとしてきた男である。

「ゲームは下手くそなんですよ。でも、格ゲーが好きな気持ちだけは、無限にある」

強さでも、肩書きでもない。“好き”という一点だけで、彼はここまで来た。

“意味のないこと”に熱を上げる人が、かっこいい

──石井プロさんと格闘ゲームの出会いを教えてください。

石井プロさん: 初期衝動は、もう完全に子どもの頃なんですよ。近所のスーパーのゲームコーナーで、初めて格闘ゲームを見たとき、「なんじゃこりゃ」って。かっこよすぎて、一発でやられました。その後も、新しい格闘ゲームが出るたびに「なんだこれは」って、どっぷりハマって。

──プレイヤーとしては強かったのですか?

石井プロさん: 全然です(笑)。ただ、テレビでゲームの強い人が特集されてるのを見て、「ゲームがうまいって、こんなにかっこいいんだ」と思って。当時はまだプロなんて概念もなくて、ゲームセンターで100円払って勝っても、別に何の得にもならないんですよ。でも、そんな“意味のないこと”に本気で熱を上げてる人たちが、めちゃくちゃかっこよく見えて。その感覚は、今も自分の根っこにあります。ゲームがうまいってかっこいい、ゲームに夢中なやつってかっこいい。それをずっと、世に知らしめたいんです。

下手だからこそ見つけた、“裏方”という関わり方

──映像制作という形で、裏方的に格ゲーに関わっていかれたんですよね?

石井プロさん: 好きなんだけど、強くはない。じゃあ、この気持ちをどこに向ければいいんだ、と。格ゲーが好きで裏方に回る人って、みんな同じだと思うんですよ。強くはないけど関わりたいから、大会の運営をやったり、それぞれのやり方を探す。俺の場合は、それが「映像を作る」ことでした。

当時、格闘技イベントにあった“煽りV”の文化が本当に好きで。試合前に選手のドラマを見せる、あれです。あれを格ゲーでやったら絶対面白いと思ったんですよ。それで、安いカメラと編集ソフトを買って、見よう見まねで作り始めました。

──未経験からのスタートだったんですね。

石井プロさん: 知り合いが主催していた大会で「動画を流せたらいいよね」という話になって、「じゃあ俺、作りますよ」って。やったこともないのに(笑)。でも、1回目からわりとちゃんとできちゃったんですよ。今見たら拙いものなんですけど、当時は格ゲーの大会で映像が流れること自体がほとんどなかったので、すごく受け入れられて。「あ、できるかも」って。

──結果的に、格ゲーの大会に映像を持ち込んだ先駆けになった。

石井プロさん: そうかもしれないです。でも本当に、あの頃はまだ誰もやってなかった。拙くても、新しかったから受け入れてもらえた。そこから月1本くらいのペースで、いろんなところから声がかかるようになりました。

20年続けた家業を、手放した日

──実はもともと、ご実家の果物屋を継がれていたそうですね。

石井プロさん: 親父が倒れて、なし崩し的に引き継いで。20年くらいやってました。でも、シンプルに向いてなかった。食べてはいけるんですけど、ずっと「つまんないな」って思いながらやってて。

──転機は何だったんですか。

石井プロさん: ちょうど格闘ゲームがeスポーツとして盛り上がり始めていた頃、あるプロゲーマーの方と食事をご一緒したんです。その日、俺は格ゲーのイベントに顔を出していて。「お店(果物屋)のほうは大丈夫だったんですか?」と聞かれたので、つい冗談で「今日は仕事をサボって来ちゃいました」って答えたんですよ。そうしたら、その方が一瞬、なんとも言えない顔をして。「格ゲーに対して、その程度の本気度なんだ」ってがっかりされた気がして。本人はまったく覚えてないみたいなんですけど(笑)、俺はその表情が、ずっと忘れられなくて。

もう心のどこかでは決めてたんだと思います。それをきっかけに、「じゃあ、辞めるか」って。独り身だし、最悪なんとかなるだろうと。「格ゲーの映像でなら食っていける」っていう確信もありましたし、そんなに深くは考えなかったです(笑)。

──20年続けたお店を手放すのは、大きな決断だったのでは。

石井プロさん: それが、辞めると決めたら意外とあっさりでした。むしろ、続けてた20年のほうがよっぽどキツかったので。だから、後悔はまったくないですね。

「かっこいいゲーム文化」を、服にする

──現在は、格闘ゲームをテーマにしたアパレルブランド「+1F」のディレクションも手がけてらっしゃいますよね。

石井プロさん: これも、もともと自分からやりたいと言って始めたわけじゃなくて。ちょうど、新しく「格闘ゲームに軸足を置いたアパレルをやろう」という話が出たときに、「できそうな人が他にいないから」って声をかけてもらったんです。でも、やってみたらめちゃくちゃ面白くて。たぶん、向いてるんだと思います。

自分の中でずっとあるのは、「ゲームがうまいことはかっこいい」という感覚。格ゲーが好きな気持ちを、どう形にするか。俺にとっては、それが映像であり、服なんですよね。

才能とは、“最初からできてしまう”こと

──映像もアパレルも、割とスムーズに形になっていった印象なのですが!

石井プロさん: 才能ってなんだろうって考えたときに、俺は「最初からできるやつ」が才能があるんだと思ってるんです。その定義で言うと、映像やディレクションは、たぶん最初からできた。だから、才能があったのかもしれない。

でも、肝心のゲームは本当に下手なんですよ(笑)。話題の大作も、一体のボスに何十時間もかけて、ようやくクリア…みたいな感じで。やり込んでる時間の割に、まったくうまくならない。ゲームの才能は、本当にないんです。それでもゲームは“やっちゃう”んですよね。

“枕ゲー”に真剣になる、おじゲーマーたち

──40歳になり、体調や睡眠を意識するようになったそうですね。

石井プロさん: めちゃくちゃします。ここ数年、単純に「寝れてないな」って。午後から夕方にかけて猛烈に眠くなって、パフォーマンスがガクッと落ちるんですよ。仕事中に20〜30分の昼寝でしのいだりして。睡眠計測でも、浅い眠りの記録ばっかり出てくるくらいで(笑)。それだけ質が低い自覚は、ずっとありました。

──反応速度など、プレー面での衰えは感じますか。

石井プロさん: さすがに「ガクッと落ちた」みたいな実感はまだないんですけど、単純に、長く対戦してると疲れるようになりましたね。集中が続かない。だから余計に、コンディションを整えることが大事だなって。同世代のゲーマーで集まると、もう健康の話ばっかりですよ(笑)。「最近、血圧が」とか。睡眠もみんな関心があって、界隈では“枕ゲー”ということになってます。いい寝具は絶対使ったほうがいい、って。

逆に、若いやつらって睡眠環境なんて全然気にしてないんですよ。俺も昔はそうでした。どんな場所でも寝られたし。でも本当は、若いうちから整えておいたほうが絶対にいい。それを伝えるのも、おじさんになった今の役目かなって思います(笑)。


“ちゃんとしたところで寝る”と、こんなに違う

──ブレインスリープを実際に使ってみて、いかがでしたか。

石井プロさん: 正直に検証しようと思って、まず今までの自分の環境で寝て、次にブレインスリープをちゃんとセッティングして、寝比べたんです。そしたらスコアが明確に上がって。「ちゃんとしたところで寝ると、こんなに違うんだ」って、はっきりわかりました。

特にマットレスですね。今まで柔らかいものを使ってて、朝起きると腰が痛かったんですけど、それが全然違った。「あの疲れは、マットレスのせいだったんだ」って。今までいかにろくでもない環境で寝てたか、思い知りましたね(笑)。

──枕はいかがですか。

石井プロさん: 実は4年くらい前にも、ブレインスリープの枕を使ってたんですよ。すごく良くて愛用してました。今回あらためて使って、やっぱりいいなと。最初はちょっと硬く感じるんですけど、使っているうちに馴染んで、どんどん良くなってくる。素晴らしいものだと思います。

“何かのプロ”になりたい

──ちなみに、今さらなんですが「石井プロ」は、何のプロなんですか?(笑)

石井プロさん: それが、いちばん難しい質問で(笑)。映像編集者と名乗るのは、ちょっと違う気がしてて。格闘ゲームシーンの知識はパラメーターで言えば9とか10あると思うんですけど、映像編集のスキルは4とか5くらい。本職の編集者の方と並べられると、恐れ多いんですよ。

だから目標は、「何かのプロになる」こと。まだ本格的に始めて5年くらいで、自分の“軸”が確立しきってない感覚があって。そこはコンプレックスでもあります。

──格闘ゲームの文化そのものが、そういう“好き”で成り立ってきたところがありますよね。

石井プロさん: まさに、そういう文化だと思います。好きだけど、特別うまいわけじゃない。そんな人たちが、ずっと支えてきた世界なんです。最近ようやくお金が入って、プロの世界になってきましたけど、俺自身はまだ、そのアマチュアリズムの延長線上にいるんですよね。

考えてみたら、未経験のアマチュアが初めて作った映像を、いきなり1000人規模の会場で流すって、冷静に見たらけっこう無茶なんですよ(笑)。でも、そういう無茶が許される熱量が、この文化にはあった。俺はその良さに、ずっと助けられてきたんだと思います。

「好き」があれば、居場所はある

──石井プロさんのように、プレイヤーではない形で関わる人も増えていますよね。

石井プロさん: 格ゲーが好きだけど上手くはない人たちも、それぞれに絶対に何か別の得意なことを持ってるはずなんですよ。絵がかけるとか、めちゃくちゃ体力があるとか、英語が喋れるとか。その得意を業界に持ち込んで支えてくれたら、それはもう間違いなくプラスになる。熱量と、自分にできること。その2つさえあれば、この世界に居場所はあると思います。そういう人が増えてくれたら、俺は本当に嬉しいですね。

未来への想い「もっと外に、格ゲーの面白さを」

──今後、やってみたいことはありますか?

石井プロさん: 格ゲーには、まだまだ知られてない面白さがあると思うんです。届けば「これ、好きかも」って思う人が、絶対いる。だから、もっと外に向けて発信したい。格ゲーを見たことがない・興味がない人に、「こんなに熱を上げてるやつらがいるんだぜ」って伝えたいんですよね。

──同じように、好きなことに情熱を注ぐ人へ。「情熱だけは眠らせない」という言葉について、思うことは。

石井プロさん: 好きだから、続けられる。それに尽きると思います。強くなくても、才能がなくても、好きって気持ちさえあれば、生きていける。俺自身が、その証明みたいなものなので。だからこれからも、その“好き”を燃やし続けたいですね。

ゲームは下手だと笑う。何のプロかと問われれば、言葉に詰まる。それでも、格闘ゲームという“意味のないこと”に人生を賭けてきた男の言葉には、確かな熱がある。

好きだから、続けられる。続けるために、体を休める。石井プロが照らそうとしているのは、勝者だけの世界ではない。ゲームを愛するすべての人が輝ける、その裏側の風景だ。

質の高い睡眠に支えられた、持続可能な情熱。それこそが、石井プロが“好き”と向き合い続けてこられた理由なのである。


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