睡眠負債とは?
"ヒトは一定の睡眠時間を必要としており、それより睡眠時間が短ければ、足りない分が蓄積する。つまり眠りの借金が生じる”
これは、世界一の睡眠研究所であるスタンフォード大学睡眠生体リズム研究所の初代所長ウィリアム・C・デメント教授が、1990年代から使い始めた「睡眠負債(Sleep Dept)」と呼ばれる概念です。
一般的には「睡眠不足」という言葉も多く使われていますが、睡眠研究家は、睡眠が足りていない状態を「睡眠負債」という言葉を使って表現します。

睡眠が足りず慢性化してしまうと睡眠負債に陥り、脳も体にも多大な影響を及ぼします。簡単には解決できない深刻なマイナス要因が、気づかないうちにたまっていく眠りの借金こそが「睡眠負債」なのです。
日本の睡眠負債の現状

日本は、睡眠負債を抱える”睡眠不足症候群”の人が世界一多い国です。これには、寝る間を惜しんで何かをするという事を美徳と考える日本人独特の価値観も多分に影響しているのでしょうが、諸外国に比べると圧倒的に平均睡眠時間は短く、眠りたい時間と実際の睡眠時間の乖離も大きいという研究結果が出ています。
「寝だめ」で睡眠負債は本当に解消されるのか?

そのため、週末には日頃の睡眠負債を返済するために「寝だめ」をする人も多いでしょう。しかし、実際にはあくまで不足している分を補填しているだけで、睡眠は貯蓄・預金できないものなのです。睡眠負債を返済するのは極めて困難で、単に一時的に睡眠時間を増やしただけでは難しいのです。
稀に短時間睡眠でも平気で生活できるショートスリーパーの人がいますが、そのほとんどが遺伝的素質によるもので、普通の人とは違うことが研究の結果わかっています。誰もが努力してショートスリーパーになれるものではなく、むしろ健康を害する場合が多いと思われます。
睡眠負債が溜まるとどうなるの?マイクロスリープとは

睡眠負債によって、脳の瞬間的居眠りと呼ばれる「マイクロスリープ」という状況が起きやすくなります。睡眠負債からの防御反応として、1秒から10秒ほど脳が働かなくなり眠ってしまうのです。
本人には自覚症状がないのが怖いところで、もし運転中にこのマイクロスリープに陥ってしまったら、昨今の危険運転による事故も他人事ではありません。睡眠負債がある人には誰でも起こりうるのです。飲酒運転の危険性は誰もが認識しており、法律上でも禁止されていますが、睡眠が足りていない状態での運転の危険性はほとんどの人が知らないでしょう。
睡眠と覚醒は表裏一体です。良い睡眠により良い覚醒は得られ、良い覚醒によって良い睡眠が得られるのです。
睡眠負債はどうやって解消するのか?

睡眠負債は眠ることでしか解消されません。眠りの質が良ければ、短時間の睡眠でも問題ないのでは?と考える人もいるでしょうが、そんなことはありません。
「量(時間)が十分に足りている」&「質の良い眠りである」&「すっきりと目覚められる」という3点が揃って初めて理想の眠りが獲得できるのです。