睡眠には「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」があることをご存知でしょうか?
この2つの睡眠サイクルが働くことで、「睡眠中に体力が回復する」「記憶力が定着する」など、様々な効果があることをテレビやネットニュースの知識でご存知の方も多いはず。
今回は「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」の基本的な役割から機能面、その他に身体に与える影響など、2つの睡眠パターンの特徴を紹介していきます。
自分にあった最適な睡眠習慣を作るためにも、
2つの眠りの特徴を知っておくことは大いに役立つでしょう。
1.「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」とはそもそもどう違う?
ヒトは睡眠中に目を閉じ、体が動かず、横になって寝ている姿は外見からは同じような状態に見えますが、実はノンレム睡眠が始まって、レム睡眠に移行するまでのサイクルが90~120分周期で行われ、それを一晩で4~5回繰り返しているのです。
この中で、最も深く眠っているのが1周期目の「ノンレム睡眠」。この最初の90分を「黄金の90分」と呼びます。
最初の深い眠りで脳下垂体から「成長ホルモン」が分泌されます。成長ホルモンは骨格形成を促し、身長を伸ばしたり、疲労の回復やホルモンバランスの調整を行ったりするホルモンです。
深い睡眠をとり、成長ホルモンの分泌が適切に行われることで、人は寝ている間に脳や身体の疲労回復や、あらゆる細胞の修復がされるのです。
目を閉じ寝ている間に「ノンレム睡眠」「レム睡眠」という、異なる2つの睡眠活動を繰り返すことで、想像以上の活動が脳や身体で行われます。
睡眠の2割はレム睡眠で、8割がノンレム睡眠に充てられますが「ノンレム睡眠」にも「レム睡眠」にも両方に役割があり、睡眠という重要な生命活動を作り出しています。
睡眠には個人差がありますが、
6時間以上睡眠をとり「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」のサイクルを最低でも4回程度繰り返すことで十分な睡眠がとれることになるのです。
「ノンレム睡眠」「レム睡眠」それぞれに役割があるので詳しく以下で説明してきますね。
1-1.ノンレム睡眠
「ノンレム睡眠」には、脳の休息、成長ホルモンの分泌による体内組織の修復、免疫機能の向上などの役割があります。それに加え、ノンレム睡眠の状態では運動や楽器演奏など、習得した運動動作や技術を体で記憶する役割もあります。
知っている方も多いかもしれませんね。
徹夜の翌日など一時的な睡眠不足がある場合、この「ノンレム睡眠」が出やすくなり、より深い眠りにつくことが可能とされています。徹夜の翌日にいつもより眠れたという経験がある方も多いのではないでしょうか。
脳が休息状態となるノンレム睡眠は、脳波による脳の活動を観察することで3段階に分けられ、ステージにより眠りの深さが変化していきます。
ステージ1:小さな音で目覚めてしまう浅い眠り
ステージ2:軽い寝息を立てる程度の浅い眠り
ステージ3:声や物音がなっても目覚めない深い眠り
※1~3につれて眠りは深くなり、脳波を見ると、ゆっくり大きな波形(徐波)が観察されます。
ぐっすりと眠っている深いノンレム睡眠に移行すると、脳は休息状態に。
しかし、全身の筋活動は活発に行われ、寝返りをうつなど疲労が溜まっている部位の回復をしてくれます。この活動により、脳と身体がリフレッシュされ、日常生活で得た疲労を回復するのです。
その回復具合により、
朝目覚めたときに熟睡感や満足感を得ることできます。
睡眠の最初の90分で、身体が熟睡モードになる「ノンレム睡眠」をできるだけ深く眠ることが、その後の睡眠リズムを整え、睡眠全体の質を向上させることができるのです。
身体のメンテナンスを考える上でも、この最初の「黄金の90分」が大切であることを覚えておきましょう。
1-2.レム睡眠
就寝して、最初のノンレム睡眠の次に迎えるのは「レム睡眠」です。
レム睡眠の状態では、眼球が活発に動くことから「急速眼球運動(Rapid Eye Movement= REM)」を略して「レム睡眠」と呼ばれています。
一般にレム睡眠は浅い眠りと言われていますが、
脳は活動した状態で夢を見たりしているのです。この時、筋肉は緩んでいて身体は全く動かない状態になります。
物音や激しい音がしたとしても外部の刺激を遮断する働きが作用し、特段目覚めやすいというわけではありません。
この「レム睡眠」では、脳は活動していて、思考の整理や記憶の定着を行っていることが知られています。
そのため、脳の発達や精神的な安定にも重要で、特に
成長期の子供にとってはレム睡眠がしっかり出ることが大切です。
朝を迎えるにつれ、ノンレム睡眠とレム睡眠の睡眠時間は逆転し、睡眠の後半ではレム睡眠の時間が多くなります。
つまり、脳の発達に必要なレム睡眠をしっかり出すためには、睡眠時間をしっかり長く取ることも必要になるわけですね。
そして、朝が近づきレム睡眠が増えていくことで、体も温まり、太陽の光と共に快適な目覚めを迎えられます。
1-3.ノンレム睡眠とレム睡眠は一定周期で交互に訪れる
「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」は、どちらも脳や身体にとって重要な睡眠です。
この2つの睡眠は、90~120分周期で交互に繰り返していて、
バランスよく取ることで良質な睡眠につながります。
この2つの睡眠が交互に繰り返す90~120分の周期は「ウルトラディアンリズム」と言われ、人が体内に持っているリズムです。
この状態が不安定になってしまうと睡眠の質が低下し、健康状態に悪影響を及ぼしかねません。
「深く寝れば短時間の睡眠でも大丈夫」と考えている方もいるでしょう。
しかし、短時間睡眠は深い「ノンレム睡眠」によって、一時的な脳の回復は期待できるかもしれませんが「レム睡眠」は少ない状態になります。
レム睡眠が少なくなると、
思考力の低下や精神的な不安定などを招くことに。
睡眠時間も十分確保して、「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」が周期的にバランス良く繰り返す睡眠をとることが大切です。
「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」のサイクルを一晩で4〜5回繰り返すことのできる、6〜8時間の睡眠時間を確保することが理想的ですね。
合計で約7時間程度の睡眠時間を取ることで、疲労は回復し思考も整理され、すっきり目覚めることができるでしょう。
就寝前にアルコールを摂取したり、テスト前の緊張感によるストレスなど、様々な要因が重なる場合は最初の深いノンレム睡眠が現れにくくなります。
特にレム睡眠は普段の生活リズムから影響を受けやすいです。
良質な睡眠をとるためには、最初の深い「ノンレム睡眠」と、十分な睡眠時間の確保による睡眠後半の「レム睡眠」を意識して、ノンレム睡眠とレム睡眠の適切な睡眠サイクルを維持できるように工夫しましょう。
2.ノンレム睡眠とレム睡眠の役割の違いは?
ノンレム睡眠とレム睡眠は眠りの深さだけでなく、
体内で行われている活動の性質や状態など異なった役割もあるのです。
大きな違いとして「ノンレム睡眠」は脳を休息させ、成長ホルモンを分泌し、生体機能を整える効果があります。
一方で「レム睡眠」には、体を休養させながら、脳は活動して、生活で得た情報を整理する働きがあります。
夢も、多くは「レム睡眠」の時に見ていることが知られていますね。
- ノンレム睡眠:脳の休息、成長ホルモンを分泌
- レム睡眠:体を休ませ、思考の整理、記憶の定着
睡眠中は、こうして脳と体が交互に休息しながら、
記憶の整理や体調管理を体の内側から行っているのです。
2-1.ノンレム睡眠:脳の休息と成長ホルモンの分泌
ノンレム睡眠の大きな役割に
脳の休息状態と成長ホルモンを分泌させる機能があります。
身体の成長に大きな影響及ぼすとされているこの睡眠下では、脳内は休息モードに入り、体内の生体機能の調節や体内組織の修復が行われるのです。
その他に、骨格形成や脂肪分解などの代謝調節、免疫力の向上など生命機能を維持するために重要な役割を担っています。
また、成長ホルモンは身長を伸ばすなどの
成長に関わるホルモンですが、実は子どもから大人まで分泌は行われているのです。
年齢が高齢になるにつれて分泌量は減少傾向ですが、高齢でも分泌され、細胞の修復や代謝の調節などの役割を持つことから、アンチエイジングホルモンと呼ばれることがあります。
睡眠初期の深いノンレム睡眠時に、この成長ホルモンが分泌されることが知られているので、睡眠初期の「黄金の90分」で深い眠りに入ることができるのが理想的ですね。
これができれば、しっかり成長ホルモンの分泌が行われ、
子供は育ち、大人は衰えにくい身体を維持できるというわけです。
2-2.レム睡眠:情報整理をして記憶の定着!
睡眠の重要な働きの一つに記憶の定着があります。
それを支えるのがレム睡眠。
その日に得た多くの情報や出来事を記憶として整理する役割があり、日々の勉強でインプットした内容や仕事で学んだことを記憶に定着させる働きがあります。
レム睡眠中に学習記憶に関わる海馬が活発になることで、膨大な情報量の統合や整理活動が起こり、寝ている間に記憶が定着することも分かっています。
睡眠が不足すると、レム睡眠も短くなり、せっかく習得した知識や技術を記憶として定着しておくことが難しくなります
。記憶を向上するためには、良質な睡眠は不可欠なのです。
事実、カナダのマギル大学がマウスを使って行ったレム睡眠と記憶に関する研究によると、
レム睡眠中に脳内活動の妨害を加えると、前日に学習した内容が定着しにくくなるという結果が報告されました。※1
つまり、レム睡眠中に何かしらの刺激が入って覚醒してしまうと、時間をかけて得た技術や知識は水の泡になってしまう可能性もあるのです。
3.ノンレム睡眠とレム睡眠の見分け方
ここまでノンレム睡眠とレム睡眠には異なる性質や役割があることを説明してきました。
どちらの機能も理解したけれど、実際にどうやって見分ければ良いのか?という疑問が残りますよね。
レム睡眠では筋肉が緩み、体の動きがなくなるので、
全く動かず深く眠ってそうな時がレム睡眠の可能性が高いです。
また、レム睡眠の時には、脈や呼吸が乱れることも報告されているので、一つの指標になります。
一方、ノンレム睡眠では体が適度に動くので、
寝返りなど適度な体の動きがある時は、ノンレム睡眠の可能性が高いと考えられるでしょう。
身体感覚を通して見分ける方法として、起きる前の夢を覚えていたかどうかがあります。
夢は、レム睡眠・ノンレム睡眠どちらの睡眠状態でも見ると言われていますが、基本的にレム睡眠の時に目覚めれば、脳内映像として記憶に残っているというのが一般的です。
また、朝の目覚めが良い状態はレム睡眠の後半の周期と言われ
「すっきり目覚めた」という感覚があれば、それはレム睡眠。
一方で、ノンレム睡眠のステージ2やステージ3に起こされると深い眠りについているため、意識が朦朧(もうろう)とします。
特に眠りが深くなればなるほど、周囲の騒音や妨害から目覚めにくくなるので、
起こしても目覚めない時はノンレム睡眠のステージ2~ステージ3に入っていると考えられます。
レム睡眠、ノンレム睡眠を確実に見分ける方法は、脳波測定以外では非常に困難で、体内で何が行われているかは、外からの視覚的には簡単には見分けることができません。
目覚め具合や起きた時の身体感覚なども、あくまで予測の一手段と考えてみましょう。
4.それぞれを活かすための最適な睡眠時間
誰にとっても身近な存在である睡眠。
睡眠を単なる疲れを取るための方法の一つとして考えるのではなく、日々の暮らしを豊かにするため、
仕事で最大限のパフォーマンスを出すために必須な習慣と考えなくてはなりません。
そのため、就寝前から起床までの一連の過程を見直し、良質な睡眠を得るために意識的に改革することが必要です。
その中で、最も大切なのが「睡眠時間の確保」。
睡眠時間は、短くても長すぎてもよくありません。
最適な睡眠時間は個人差がありますが、理想は合計で約7時間程度の睡眠時間を取ることで、一度目の目覚めで爽快に目覚められたのであれば、それは快眠の証。
最初の深い「ノンレム睡眠」だけでなく、睡眠後半でも多く出てくる「レム睡眠」をとることも意識して、十分な睡眠時間を確保しましょう。
生活リズムを整えて、目覚めたときに熟睡感やすっきりした感覚があることなどを大切にしてみてください。
まとめ:睡眠リズムを整えて質の良い睡眠を
睡眠のリズムを整え、適切な睡眠時間を確保することで、脳と身体が睡眠中に回復し、翌朝に向けて活動する準備ができるなど、
あらゆる側面で効果的であるということを理解いただけましたか?
最後に今回の記事をおさらいしておきましょう。
- 「ノンレム睡眠」は脳の休息と成長ホルモンの分泌
- 脳が活動している「レム睡眠」で記憶力アップ、夢を見やすい、体の休息、すっきり目覚められる
- 睡眠の1周期は約90〜120分で、睡眠後半になるにつれて、ノンレム睡眠よりレム睡眠が長くなる
睡眠周期には個人や年齢により異なりますが、
ノンレム睡眠とレム睡眠の周期は90分程度。もちろん中には70〜120分と個人差もあります。
これを機に、さらに睡眠への認識を深めて、最適な睡眠サイクルが維持できるように、睡眠の深さと長さに気をつけてみてください。
【参考】
※1
レム睡眠が記憶形成に重要な役割=研究