中島 正裕
理学博士/株式会社ブレインスリープ取締役CFO/睡眠健康指導士上級
1983年山口県出身。2007年東京大学理学部物理学科卒業、2012年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修了(理学博士)。 株式会社ブレインスリープには2019年5月の設立時より取締役として参画。CFOとして財務面の統括及びパートナー企業向けの睡眠コンサルティング関連事業に加えて、睡眠偏差値として公表している睡眠関連疫学調査の結果を基にした睡眠研究や企業向け健康経営サポート業務も担当。2021年11月に睡眠健康指導士上級資格を取得。
ダニってどんな虫?
ダニは、家の中でホコリがたまる場所には必ず生息していると言われています。環境適応能力が非常に高いうえ、温暖で多湿な人の住む環境は、ダニにとって快適。ですが、その大半が人の目に見えないほど小さいので、駆除が難しいのが問題です。発生原因は?ダニが好む・繁殖を行う場所や条件
ダニは、世界中に生息し、数万種いると考えられていますが、家庭内に発生する7~8割はヒョウヒダニといわれています。 ヒョウヒダニは、人のフケやアカ、汗などをエサとしているので、エサとなるものが豊富なマットレスは、最高の繁殖場所。さらに、近年は暖房などの住宅環境、加湿器・空調などの普及により、ダニにとって天国のような住環境が1年中保たれているため、繁殖に適した条件が重なると、すぐに大量のダニが発生してしまいます。ヒョウヒダニがもたらす被害は?
人に直接的被害を及ぼさないと言われているヒョウヒダニですが、ダニの死骸やフンが細かい粉末となって体内に侵入すると、喘息、皮膚炎、鼻炎、結膜炎などのアレルギー性疾患を引き起こす可能性があります。 また、小児喘息の原因の50〜80%はダニアレルゲンといわれているので、小さなお子様がいる家庭や、ハウスダストのアレルギーを持っている人は、十分な対策が必要です。ヒョウヒダニ以外のダニは?
家庭内に発生するダニはヒョウヒダニが大半ですが、その他のダニが発生する可能性があります。 ツメダニは、カーペットや畳に生息し、他のダニを捕食します。吸血はしませんが、稀に間違って人を刺して体液を吸うため、刺咬症の原因になることも。 イエダニは、通常ネズミや鳥に寄生していますが、ネズミや鳥が死ぬと、新たな寄生先を求めて人を吸血することがあります。吸血されることにより、感染症を引き起こす可能性があるので、ネズミの死骸を見つけたときや、ネズミを駆除したあとは、部屋全体のダニもしっかり駆除しましょう。 また、マダニは主に屋外に生息していますが、ペットなどに寄生することがあります。肉眼で見える大型のダニで、人が咬まれると感染症の危険性も高く、注意が必要です。マットレスのダニ対策3つのポイント
ダニの種類や被害についてご説明しました。自宅のマットレスで寝るのが怖くなってしまいますよね。ですが、しっかりとダニ対策を行えば問題ありません。ここではマットレスのダニ対策についてご説明します。 ダニ対策は退治、除去、予防の順番で行う必要があります。STEP1:ダニを退治する
掃除機では、生きているすべてのダニを吸い取ることができず、効果が薄いので、先にダニを駆除しましょう。マットレスのダニ退治方法はいくつかあるので、マットレスの種類(コイルorノンコイル)や予算に合う方法でおこなってください。 ■側生地を高温で洗濯&乾燥 側生地を取り外すことができるタイプのマットレスなら、こちらの方法がオススメ。60℃の熱でダニを退治できます。 効果:◎ 費用:低 ■クリーニング業者 費用は高いですが、ダニはもちろん、カビや汗染みなどの汚れも一掃することができます。 効果:◎ 費用:高 ■布団乾燥機で熱処理 朝晩2回の熱処理を、連日行うことで、よりダニ退治効果を見込むことができます。 効果:○ 費用:高 ■薬剤処理 マットレスのダニ駆除が可能な薬剤が市販されています。リーズナブルにダニを退治することができますが、薬剤の使いすぎには注意してください。 効果:○ 費用:低 ■スチームアイロン 殺ダニ効果は高いですが、熱で生地などを痛める恐れがあるので注意。また、マットレスを乾かす手間がかかるのも難点です。 効果:○ 費用:中 ■ダニ取りシート 即効性はありませんが、ダニ予防に取り入れるのはオススメ。本当にダニがいるのかを確認することもできます。ですが、すでにダニが大発生している場合の対策には向きません。 効果:△ 費用:中 ■熱湯 手軽で効果的ですが、素材を傷める可能性が高いので要注意。素材によっては使用感を大きく悪化させるので、あまりオススメできません。 効果:◎ 費用:低 その他では、ダニ対策といえば天日干しが良いというイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、天日干ししただけでは、ダニの体温が上昇する前に奥へ逃げ込んでしまうため、労力のわりに効率がよくありません。 また、アロマは、ダニを追い払う効果はあるものの、殺ダニは不可能で、ダニ対策としては一時しのぎ程度の効果しか見込めません。除湿機は、湿度を抑えることでダニ発生の予防効果は期待できますが、すでに発生してしまったダニの退治には向いていません。 ダニ退治には、熱処理、乾燥、高温洗浄、薬剤などが有効です。また、シーツや枕カバーは週に1回は洗濯をし、布団も定期的に丸洗いするのがオススメです。STEP2:ダニを除去する
STEP1だけでは、ダニの死骸やフンが残ってしまうため、次に除去が必要です。ダニの死骸やフン、抜け殻などは、ダニアレルゲンと呼ばれ、アレルギー性疾患を引き起こす可能性があります。掃除機がけなどを怠ったダニアレルゲンだらけの寝具だと、寝ている間にフンを吸い込んでしまうことがあるので、ダニ退治と除去はセットで行う必要があります。 マットレスクリーナーのような専用のものでなくても、吸引力の高い掃除機であれば十分です。週に1〜2回はていねいに掃除機がけを行いましょう。マットレス表面を満遍なくじっくりと掃除することが大切ですが、ダニが多く潜んでいるポイントは、特に念入りに掃除機がけをしましょう。 ■ダニが多く潜んでいるポイント ・マットレス表面の頭の方 ・マットレスとベッドの隙間 ・キルティング(外カバーの縫い目)の隙間 また、マットレスの側生地が洗濯機で洗える場合、ウレタンの表面も同じように掃除機をかけるのがオススメ。フケや髪の毛も残さず吸い取りましょう。もし、生き延びたダニがいたとしても掃除機の中で乾燥死するので、安心して掃除機がけをしてください。STEP3:ダニを予防する
ダニを除去することができたら、今後の発生を抑えるために予防をしましょう。 ダニが繁殖する原因は、温度(人の体温、気候)、湿度(寝汗、気候、結露)、エサとなる汚れ(剥がれ落ちた皮膚、フケ、皮脂)なので、ダニよけ製品を活用して、ダニを寄せ付けないようにすることが大切です。 また、簡単にできるこまめなお手入れで、ダニの発生を防ぐことができます。 ■マットレスのお手入れ方法 1:【毎朝】起きたら布団をめくって湿気を逃す 2:【週に1~2回】ベッドシーツを交換・洗濯する 3:【2~3週間に1回】マットレスを壁に立てかけて通気する 4:【1ヶ月に1回】ベッドとマットレスに掃除機をかける 5:【2~3ヶ月に1回】敷きパッドを洗濯する 6:【半年に1回】マットレスをローテーションする きちんとマットレスを手入れすることで、湿気や汚れがたまりにくくなり、ダニ予防に効果的です。天日干しは予防には有効!マットレスを干す際のポイント
天日干しは、駆除にはあまり効果がありませんが、予防としては有効な手段です。また、汗を吸い込んだ布団の湿気を取り、乾燥させることで、臭いの予防、殺菌やカビの抑制、布団をふっくらとさせる効果があります。
ですが、正しく干さないと布団の寿命を縮めてしまう可能性があるので注意してください。
1:乾燥した日に干す 布団は湿気を吸いやすいため、早朝や夕方に干すと湿ってしまうので、晴れた日の日中に干しましょう。また、晴れた日であっても前日が雨であれば、干すのに適していません。 2:両面をしっかり乾燥させる 肌に触れる側を表にして長めに干し、途中で裏返して両面をしっかり乾燥させましょう。 直射日光が当たると布団が日焼けして傷んでしまう恐れがあるので、カバーやシーツをつけたまま干します。特に羽毛布団の場合はデリケートなので、注意が必要です。 3:黒い布やビニール袋をかける ダニは50 度以上の熱でないと死滅しません。たとえ布団を天日干ししたとしても、完全にダニがいなくなることはありません。そこで効果的なのが、黒い布やビニール袋をかけて干すことです。黒色は日光を吸収しやすいため、布団にかけて干すことで、布団内部を50度以上にすることができます。布団干し専用のカバーも販売されていますが、家にある黒い布やビニールで代用できます。 4:布団を強く叩かない 布団たたきで布団をたたくとホコリが落ちているように見えますが、実は中わたの繊維がつぶれているだけ。強くたたくことによって布団が傷むだけでなく、ダニの死骸が細かくなって布団の表面に出てきてしまい、アレルギー症状を悪化させる可能性があります。 特に羽毛布団の場合は、目詰め加工した部分から羽毛が吹き出す原因にもなり、布団の寿命が低下することも。布団たたきを使用する際は、強く叩かずに、布団の表面を撫でるように横にすべらせ、ホコリを払ってください。 5:取り込んだ後は、布団の表面に掃除機をかける 掃除機をかけることで、ダニの死骸やホコリを取り除くことができます。その上で、上記のダニ予防をすることで、清潔で快適な寝具を維持することができます。