「毎日しっかりと寝ているのに、日中どうしても眠くなる」そんな眠気の原因は、もしかしたら「低血糖」にあるかもしれません。
眠さと低血糖の関係について、医師にお話を聞きました。
朝食を食べない人、糖質制限をしている人は要注意
そもそも「低血糖」とは、どういう状態を指しているのでしょうか。
一般的には、血糖値が70mg/dl以下になると「低血糖状態」となり、身体が血糖値を上げようとすることで、さまざまな症状があらわれます。発汗や動悸、手足の震えなどの症状から、脱力感や疲労感、眠気やめまいなどが出てきます。
さらに低血糖が進行すると痙攣(けいれん)が起き、昏睡状態に陥ることもあります。
「低血糖とは、血液中の“糖”が足りなくなった状態のこと。身体を動かすエネルギーは、糖質・脂質・たんぱく質の三大栄養素によって作られており、頭や筋肉は主に糖質で、心臓は普段は脂質をエネルギーにして動いています。糖が足りなくなると、頭の回転が遅くなったり、同時に眠気も引き起こしたりしてしまいます」
低血糖を引き起こす原因とは?
では、低血糖を引き起こす原因は何なのでしょうか。
「主な原因は、朝食を抜くなどの不規則な食生活と、炭水化物ダイエットをはじめとした無理な糖質制限。身体を動かすエネルギーとして本来必要とされる糖質が足りないと、いつでも疲労感や脱力感が抜けず、たっぷり寝ているのに眠くなってしまいます」
自律神経の乱れが質の悪い睡眠を招く

眠気には、低血糖に起因するもの以外に「自律神経の乱れ」もあります。
「私たちは、日中の活動を支える交感神経と、睡眠前のリラックスした時間を作る副交感神経を交互にバランスよく出すことで、心身の健康を保っています。
しかし、日中活動しているのに夜きちんと眠っていなかったり、眠る前のゆったりとすべき時間にパソコンやスマートフォンを見たり、仕事を終えた夜にジムなどで激しい運動をしたりすると、交感神経が優位になってしまいます。
交感神経は、アドレナリンを出して血圧や血糖を上げる作用があるので、夜に活発になると睡眠の質が悪くなります。睡眠のバランスが崩れることで、日中の眠気につながるということです」
日々、仕事や家事に追われている現代人は、仕事終わりに走ったりジムに行ったり、テレビだけでなくスマホやPCでインターネットを楽しんだりと、夜遅くに自分の時間を作りがち。
日光を浴びて睡眠の質を改善!
夜にゆっくりできず、「睡眠の質が悪い」と自覚している方は、毎朝しっかり日の光を浴びることが大事です。
日光をしっかり浴びることで、夜になると眠気を引き出すメラトニンというホルモンが分泌されるようになり、深い眠りにつながるといいます。
「夜にメラトニンが多くでるように朝方に日光を浴びながら適度な運動をするといいでしょう。疲労が残るような運動は身体にとってストレスになるので、散歩をして軽く汗をかく程度がベスト。歩く際は、早歩きとゆっくりとした歩きを交互に行うインターバル運動を行うと、交感神経と副交感神経が出るバランスがよくなりますよ」
低血糖症状が出たら、吸収の早いブドウ糖を取ろう

眠気とサヨナラするには、規則正しい食生活と、良質な睡眠が大事。そうはわかったものの、低血糖状態に陥ってしまったら、どうすればいいのでしょう。
「ブドウ糖を摂ることで、低血糖によるだるさや眠気は改善されます。すぐに眠気を改善したい場合はチョコレートなどに含まれる二糖類(ショ糖、乳糖)よりも、単糖類(ブドウ糖)がおすすめ。
吸収がはやく、糖がすばやく体に取り入れられエネルギーに変わってくれますので、『ブドウ糖入り』と書いてある甘い飲料を口にするといいでしょう。
しかし、摂りすぎは禁物です。また、適度なカフェイン飲料が眠気対策にはいいと思います。
避けたいのは、低血糖状態のまま運動をすること。ますます脳に糖分がいかなくなり、ストレスもたまり症状は悪化してしまいます」

糖尿病の方は、インスリン抵抗性といって細胞の中に糖が取り込まれず、糖がエネルギーとしてうまく使われなくなり食後に高血糖状態を呈します。
高血糖状態が続き膵臓から分泌されるインスリン分泌が低下すると専門医による治療が必要になります。
しかし、治療薬が過剰になったり、食事をとらなかったりすると糖尿病の方でも「低血糖発作」を起こすことがあるため注意が必要です。
また、低血糖による症状が毎日出る人は内分泌系の病気の可能性があります。なるべく早く、専門医による診断を受けるようにしましょう。