眠りが浅い人は意外に多い!?
厚生労働省がおこなった睡眠の質に関する調査(※1)によると、「睡眠全体の質に満足できなかった」と回答した方は全体の21.8%、約5人に1人でした。
このうち最も多かったのは30代女性による回答で、32.6%の方が「睡眠全体の質に満足できなかった」と答えています。満足できなかったと回答していない方のなかには、睡眠の質が悪いことを自覚していない方もいると考えると、実際はさらに数は多いかもしれません。
※1:厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査報告」
このように眠りが浅いという悩みは、ときに不眠症と診断されるケースもあります。不眠症の詳細は以下の記事をご覧ください。
眠りが浅い原因とは?
常習的に睡眠の質が悪いと、集中力や記憶力、判断力などが低下して仕事や日常生活のパフォーマンスが落ちてしまうため注意が必要です。しかし、自身の睡眠の質が悪い原因がわからないケースも多いと思います。ここでは代表的な原因をみていきましょう。
精神的な原因
通常、日中は交感神経が、睡眠時は副交感神経が優位に働くのですが、仕事や日常生活で感じるストレスにより自律神経のバランスが崩れてしまうと、眠ろうと思っても交感神経が優位に働き、不眠を引き起こし、睡眠の質を下げてしまいます。
また、コルチゾールと呼ばれるホルモンの分泌も関係しています。コルチゾールはストレスに対応するためのホルモンで、睡眠を抑制してしまうホルモンとしても知られています。ストレスを感じるとこのコルチゾールの分泌量が増加するため、睡眠の質低下につながってしまうのです。
そして、睡眠不足などによりコルチゾールの分泌量が減ると、今度は日中のストレスの影響を受けやすくなります。結果、眠りが浅くなりストレスへの耐性が減るという悪循環に陥ります。
身体的な原因
眠りが浅くなる身体的な原因には頻尿があります。加齢や腎機能の低下などにより頻尿の悩みがあると、夜間に尿意を感じて何度も目が覚めてしまいます。 また、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌異常をはじめとしたホルモンバランスの乱れや、皮膚疾患による皮膚のかゆみも眠りを妨げ、睡眠の質を低下させます。
生活習慣の乱れ
睡眠の質低下につながる生活習慣は数多くありますが、近年は特に、寝る前のスマートフォンやパソコンの操作が問題視されています。就寝前に、スマートフォンやパソコンの画面から発せられるブルーライトを浴びると、質の高い睡眠に不可欠なホルモンのメラトニンを減らしてしまいます。
さらに、眠気が弱まって寝付きが悪くなるので、就寝の1〜2時間前はデジタルデトックスをしましょう。
他には日中の長時間の昼寝や、就寝前のアルコール・カフェインの摂取も眠りが浅くなる原因です。反対に意識したい生活習慣は、日中に太陽の光を浴びることです。夜にメラトニンが分泌されやすくなり、睡眠の質を高めることができます。
深部体温が下がっていないこと
人の身体は、日中は活動するために体温が高く保たれていますが、睡眠時は深部体温(身体の内部の温度)を下げることで眠くなり、脳や身体をしっかり休息させる仕組みになっています。 その際、皮膚表面から熱を逃がすことで深部体温を下げますが、寝具によっては身体に熱がこもってしまい、寝付きが悪く、良質な睡眠を得にくくなります。
睡眠環境が最適でないこと
部屋の温度や湿度が不快、明るすぎる、騒音がひどい、といった環境ではスムーズに入眠できず、やっと寝付けても途中で目を覚ましてしまう原因になります。また、寝具が自分の身体に合っていないと身体が休まらず、疲労回復の妨げになってしまいます。
眠りが浅い人に見られる特徴
眠りが浅い人によく見られる傾向としては、起床時からの疲労感や倦怠感、日中の強い眠気などが挙げられます。仕事場で怒られるような悪夢を見てしまう場合は、日中のストレスが溜まっているのかもしれません。 また、体内時計のリズムや自律神経のバランスが乱れている方、過度な飲酒習慣のある方なども、眠りが浅くなりやすいので注意しましょう。
眠りが浅いことによる影響
では眠りが浅いと、日常生活にどのような支障が出るのでしょうか?代表的な悪影響を以下で解説します。
疲労の蓄積
人の身体にある細胞や筋肉、臓器などは日々働いています。私たち人間が休むことで仕事の疲れをとるように、細胞や筋肉、臓器も睡眠によって休息をとることで疲れを癒やします。逆にいうと、十分に眠れていない状態が続くと疲れがとれず、疲労が蓄積してしまうということです。その結果、老化も早まってしまいます。
生産性の低下
充分な睡眠が必要なのは脳も同じです。日中に活発に働いている脳は、夜間に休むことで記憶を整理し、蓄積します。しかし眠りが浅いと脳が寝不足の状態になり、うまく記憶の整理ができません。結果、学習能力が低下したり注意力が散漫になったりして、生産性の低下を引き起こします。
病気のリスク増大
睡眠の質は免疫力に関係しており、眠りが浅く寝不足の状態では免疫力が低下します。すると感染症にかかりやすくなったり、生活習慣病の発症リスクが高くなったりして、健康に悪影響がおよびます。
なお、睡眠の質低下によって発症リスクが増大する生活習慣病はメタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧などが代表的です。加えて心臓や脳の病気のリスクも高めてしまいます。
参考:睡眠と生活習慣病との深い関係 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
睡眠のメカニズム
睡眠の質を高めるためには、睡眠のメカニズムを理解することが大切です。
睡眠を形作る2つのシステム
人の眠気には、睡眠欲求と覚醒力の2つのシステムが関係しています。
睡眠欲求とは、活動している時間帯に蓄積する疲労によって生まれる欲求で、起きている時間が長いほど強く現れます。そして眠りに入ることで徐々に減少していき、充分な睡眠をとることで消失します。
覚醒力は体内時計の指示による交感神経の活性化、覚醒作用のあるホルモンの分泌、深部体温の上昇などにともなって生まれる力で、睡眠欲求を退け目覚めを促します。
覚醒力は日中に強く力を発揮し、就寝前の睡眠ホルモンであるメラトニンが分泌されるころになると影響が弱まります。このように私たちは、日中は覚醒力によって活発に活動し、夜は睡眠欲求によって眠りに就くというメカニズムに基づいて生活しているのです。
睡眠リズムを決める2つの機能
人の睡眠リズムは、概日リズムと睡眠恒常性制御機構の2つの機能によって決まります。
概日リズムはいわゆる体内時計のことで、約1日の周期で体温、ホルモンの分泌などを整える身体の機能を指します。睡眠恒常性制御機構は前述した睡眠欲求や覚醒力を制御する機能です。
この2つの機能が正常に働くことで、私たち人間は日中に活動し、夜間に眠るという生活リズムを自然に成り立たせています。
ノンレム睡眠とレム睡眠の関係
睡眠には、ノンレム睡眠(脳も身体も熟睡している状態)とレム睡眠(身体は休んでいるが、脳は起きている状態)の2種類があります。
個人差はありますが、一般的に、入眠直後はノンレム睡眠の状態です。そして入眠から約90分後に、レム睡眠に変わります。そのあとは約90分ごとにノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返します。このような約90分の周期が、一晩に4~5回繰り返され、睡眠の前半3時間は深いノンレム睡眠が多く、明け方に近づくにつれ、レム睡眠が多くなっていきます。
“黄金の90分”とは?
皮膚や骨、筋肉などの身体に必要な要素を作るほか、細胞増殖や正常な代謝促進、アンチエイジングなどの大切な役割も果たすと言われているグロースホルモン(成長ホルモン)が、黄金の90分にしっかり深く眠ることでより多く分泌されたり、そのあとの睡眠の質を改善したりするため、全体のスリープサイクルが整います。
一方でノンレム睡眠が浅かったり、レム睡眠の割合が多いと、長時間眠っても脳が十分に休まりません。また、夜中にちょっとした光や物音で目が覚めてしまうことが増え、目覚めたときの熟睡感が得られにくくなります。
脳と睡眠の関係ははっきりしないこともまだまだ多いですが、うつ病や統合失調症の患者は最初のノンレム睡眠が不十分なまま、すぐにレム睡眠が出現することがわかっています。こうしたことからも、最初のノンレム睡眠の質はとても重要なのではないかと考えられています。
眠りが浅いことと夢ばかり見ることの関連性
自分の眠りが浅いかどうかを知りたいと思ったとき、「頻繁に夢を見るかどうか」が判断材料の一つになります。夢とはレム睡眠の状態、つまり脳が活動している眠りの浅い状態で見る頻度が高くなると言われています。このため、眠っているときに夢ばかり見るという方は眠りが浅い可能性が高いです。毎日夢を見るうえに日中に強い眠気を覚えるという方は、睡眠の質を高めるための生活や環境づくりを意識しましょう。
眠りが浅いときの改善方法5選
睡眠の質のアップのための改善方法を5つご紹介します。「眠りが浅い」「睡眠の質が悪い」と感じる方はぜひ試してみてください。生活リズムの見直し
生活リズムを見直すことは、簡単にできる睡眠の質改善方法の一つです。特に意識したいのは、眠る1〜2時間前からスマートフォンやパソコンの画面を見るのをやめることです。
ついSNSやメッセージをチェックしたくなりますが、液晶画面の明るい光を見ると、脳が昼間と勘違いして眠りに就きにくくなります。液晶画面を見ず、やや暗めの暖色系の光のなかで過ごすと寝付きがよくなります。 また、日光を浴びない生活や電気をつけたままの就寝は、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を抑制すると言われているので止めるようにしましょう。
食習慣の見直し
食習慣も睡眠の質に関係する大事な要素です。例えば就寝前の飲酒や、コーヒーなどカフェインが含まれている飲み物の摂取は、深い眠りを妨げてしまうため控えましょう。
食べるものに関わらず、就寝直前の食事もNGです。寝る前に食べ物を食べると、寝ている間も胃が消化のために働き続けるため脳が充分に休めません。食事は就寝の2〜3時間前までに済ませましょう。
入浴習慣の見直し
深部体温は、上げた分だけ下がるという性質があるので、就寝の90分前までに38〜40度のぬるめのお風呂に入浴して、一時的に体温を上げ、睡眠時に下がるように調節しましょう。ぬるめのお湯は副交感神経を優位にするので、心身ともにリラックスして寝付きが良くなります。
また、身体が温まって末梢血管が広がると、手足からの熱放散がスムーズになるので、基本的には就寝時には靴下などは履かない方が深い睡眠に入ることができ、睡眠の質が高まります。
一方、42度以上の熱い湯に浸かると交感神経が優位となり、眠りにつきにくくなってしまいます。熱いお湯は気分がスッキリして疲れがとれた感じがしますが、入眠前の入浴にはおすすめできません。
室温と湿度の見直し
夏や冬は寝室の室温と湿度のチェックが重要です。夏は室温26度程度がよいとされ、28度を超えると睡眠の質が低下します。一方、冬は16〜19度が安定した睡眠を得られると言われています。また、湿度は50〜60%が理想的です。
まくらの見直し
体に合わないまくらを使っていると、寝返りがしにくい、寝心地が悪いなどの原因で睡眠の質が低下します。自分に合ったまくらを使用しましょう。
まくら選びは高さ、大きさの2点が特に重要です。高さは仰向けの状態で頭を乗せたときに、首から頭にかけての角度が10~15度、顎の先が額より0~5度程度下がる形状のものが理想です。標準体型の方であれば6cm程度の高さが目安です。大きさは頭3つ分の幅(60cm)以上、奥行き35cm以上が理想です。
この他、睡眠を考えてデザインされたまくらや、オーダーメイドまくらなどの選択肢もあります。少しでも質の高い睡眠を得られるまくらを探してみてください。睡眠の質を上げるまくらの選び方については、以下の記事をご覧ください。
アテネ不眠尺度(AIS)で不眠症判定をしてみる
WHO(世界保健機関)が作成した、不眠度の判定を行えるアテネ不眠尺度をご紹介します。不眠症かどうかが心配、眠りが浅く満足感が足りない、長時間寝ても疲れが取れない、といった人は8つのセルフチェックを試してみましょう。 過去1か月間で、少なくとも週3回以上経験したものを選択し、右のスコアの合計を計算してみてください。
いかがでしたか?スコアの合計が4点未満の人は、良質な睡眠をとれていると言えます。 4~5点の人は、やや不眠症の疑いがあるので、心配なら専門医に診てもらいましょう。 6点以上の人は、不眠症の可能性が高いので、無理をせずに専門医に診てもらいましょう。
浅い眠りを改善しよう!おすすめアイテムをチェック
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浅い眠りから深い眠りを獲得するために
眠りが浅いと、長時間眠っても十分な休息感を味わうことができず、日中のパフォーマンスが落ちてしまいます。いつものことだからと放置せず、原因究明や対策をして、満足度の高い、深い眠りを手に入れましょう。
また、生活習慣や睡眠環境を見直しても睡眠が改善しない場合は医療機関の受診も検討してください。重大な病気が隠れていたり、深刻化して睡眠障害になってしまったりする恐れがあります。
睡眠は健康に深く関わる大事な習慣です。毎日を元気に過ごすために、睡眠の質向上を意識した生活を送りましょう。