株式会社ブレインスリープ(本社:東京都千代田区、代表取締役:道端孝助、以下「ブレインスリープ」)は、全国47都道府県の1万人(性別・年齢・都道府県で割付)を対象に、個々の睡眠習慣など睡眠状態を直接的に判定する項目のみならず、生産性やストレスの程度、また睡眠時無呼吸症候群 (SAS)のリスクなど、を調査した「睡眠偏差値」2021年版を、2020年に引き続き実施しました。 今後この調査結果を活用し、睡眠が不安定になりやすい昨今の状況を踏まえ、睡眠の課題を解消すべく様々な活動を行っていきます。 【調査結果サマリー】
ブレインスリープ社は、睡眠に関する様々な尺度から「睡眠偏差値®」を構成し、日本人の睡眠実態を把握する試みや企業の従業員様向けの健康経営サービスなどへの展開を進めてきました。今回、2021年版の睡眠偏差値の測定を実施し、新たに下記5つの項目について、日本人の睡眠における特徴を明らかにしました。
① 日本の平均睡眠時間の変化
② 在宅勤務の頻度と睡眠の質の関係性
③ 免疫と睡眠の関係性―症状別(風邪・インフルエンザ・新型コロナウイルス)の睡眠偏差値
④ 業種年代別の睡眠偏差値の傾向
⑤ 睡眠偏差値の都道府県別ランキング
日本の平均睡眠時間:破綻傾向だった睡眠負債は改善傾向に
ブレインスリープの昨年の調査では、日本の平均睡眠時間は6時間27分となっていました。これは、世界一睡眠時間が短いとされたOECD発表のデータよりもさらに55分も短い結果でありました。今年の調査の結果、日本の平均睡眠時間は6時間43分と、昨年より16分長くなっていることが分かりました。
大きな改善の一歩を踏み出した日本の睡眠時間ですが、OECD加盟国の平均睡眠時間は8時間25分と、今年の日本の平均睡眠時間と比べると、その差はまだ1時間42分もあります。また最低睡眠時間として推奨される睡眠時間7時間を超える人は全体の40%に留まりました。 今後、さらに日本の平均睡眠時間が延びるよう、ブレインスリープとして、最低限の睡眠時間を確保することの重要性を積極的に発信し、啓蒙活動を続けて参ります。
在宅勤務と睡眠の質の関係性:変則的な働き方が睡眠の質を低下させる可能性
新型コロナウイルスは人々の生活に大きな変化をもたらしましたが、働き方も同様で、特に「在宅勤務」という新たな勤務形態が急速に広まったことが大きな特徴となりました。2020年4月にブレインスリープが行った調査では、新型コロナウイルスの影響で在宅勤務が広がった結果、生活全体が後ろ倒しの夜型傾向になり、生活リズム・睡眠リズムが乱れ、睡眠の質の低下が見られましたが、今回の調査では、「在宅勤務」と関係して、睡眠の質に新たな傾向が見られました。
在宅勤務の有無・頻度と睡眠の質の関係性を分析した結果、「ほぼ毎日在宅勤務を行っている人」と「在宅勤務を全くしたことがない人」の睡眠の質が、他の勤務形態の人の睡眠の質と比べて有意に高いことがわかりました。特に、睡眠の質が最も悪いのは「週に1~2回在宅勤務を行っている人」であり、この結果は在宅勤務の有無そのものではなく、毎日一定のリズムで生活ができているかどうかが睡眠の質にとってより重要であることを示唆していると考えられます。 * エラーバーは標準誤差を表示
免疫と睡眠の関係性―症状別(風邪・インフルエンザ・新型コロナウイルス)の睡眠偏差値
前節でもみたように、新型コロナウイルスは2020年以降世界中で猛威を振るい、人々の生活スタイルも大きく変え、睡眠にも大きな影響を与える結果となりました。一方で、人々の睡眠状態の違いが、コロナ禍における体調変化と強く関係する可能性があることが、今回の調査から分かってきました。
2020年1月~2021年1月末の期間、風邪・インフルエンザ・新型コロナウイルスにより体調不良があった/体調不良を感じた人とそうでなかった人で睡眠偏差値を比較すると、体調不良を感じた人の方が有意に睡眠偏差値が低い結果となりました。
特に、新型コロナウイルスの疑いがあった人、その中でもホテル療養を行った人の睡眠偏差値がとりわけ低い結果となりました。今回の睡眠偏差値はあくまで現時点の数値を測定するものであり、過去1年間の体調不良と睡眠偏差値の間の因果関係を示すものではありませんが、体調不良があった/体調不良を感じた人は免疫力が低下しており、それが睡眠の問題に起因しているために睡眠偏差値が低くなっている可能性があると考えられます。
業種年代別の睡眠偏差値の傾向
調査対象者を業種別・年代別に分類し、各分類での睡眠偏差値の平均値を調べました。 特定の年代に焦点を当てると、20代で偏差値50を上回ったのは1業種のみで、その他すべての業種で平均の偏差値50を下回った一方で、50~60代においては、逆に1業種以外すべてで平均を上回りました。
全年代での平均値を業種別にみると、「マスコミ・広告」業種に従事している人の睡眠偏差値の平均値が47.89と、全業種で最も低いことがわかりました。また時差が伴うことが多い「商社」業種の人も、「マスコミ・広告」に続いて低いことが判明しました。
「マスコミ・広告」の睡眠偏差値は世代によって大きな差があった点も注目すべき点として挙げられます。「マスコミ・広告」の50~60代の睡眠偏差値は52.63と全てのカテゴリーの中で一番高かった一方で、20代、30~40代の睡眠偏差値はそれぞれ46.58、46.76と、全カテゴリーの中でも最も低い睡眠偏差値となりました。
業種によっては夜勤や昼夜逆転の業務を強いられ、質の高い睡眠をとることができず、睡眠負債が日々蓄積することが避けられない方々がいます。また新型コロナウイルスによって、働き方が大きく変化せざるを得ない業種もあったと思われ、こういった業種の方々は睡眠偏差値においても大きな影響が出ていると考えられます。こういった点について、今後さらに詳しい解析を行い、職種別の影響を明らかにしてきたいと考えています。
睡眠偏差値の都道府県ランキング:1位三重県・47位徳島県
1位と47位の都道府県の睡眠偏差値については昨年発表の結果と同様に大きな差はなく(1位三重県で51.16/47位徳島県で48.47)、日本人の睡眠の課題は全国的なものだと思われます。日本全体の特徴として、47県中46都道府県の睡眠時間が長くなっており、一方、睡眠の質に繋がる睡眠習慣においては、29の都道府県で悪化しており、新型コロナウイルスの影響により、睡眠前の習慣が乱れた可能性が考えらます。都道府県別に見ると、全国1位の三重県は睡眠偏差値を構成するすべての項目において昨年より改善されており、特に睡眠習慣において他県を上回る得点率でした。
一方、最下位の徳島県については、睡眠時間は長くなっていたものの、その他すべての項目がワースト5位内となっています。特に睡眠の質と日中のパフォーマンス(生産性)の両項目において最下位となりました。
睡眠偏差値® 調査結果ページ
https://brain-sleep.com/sleep-deviation/research2021/
ブレインスリープでは本調査に関する様々な情報提供が可能です。
西野精治コメント/ブレインスリープ創業者、「スタンフォード式 最高の睡眠」著者
前年の調査に引き続き、いくつかの興味深い結果が明らかになりました。睡眠の質が最も悪かったのは「週に1~2回在宅勤務を行っている人」でした。ほぼ毎日在宅勤務を行っている人と、在宅勤務をまったくしたことがない人たちで、睡眠の質がよかったことより、睡眠の質の確保には、規則正しい生活が不可避で、不定期に在宅勤務を行っている人たちは、生活のリズムを保ちにくかったのではないかと考えられます。また、新型コロナウイルスやインフルエンザ等の感染症罹患に関連して、体調不良があった人や、新型コロナウイルスの疑いがあった人や、その中でもホテル療養を行った人たちの睡眠偏差値がとりわけ低い結果がでています。特に米国では新型コロナウイルス感染以前にも、季節性インフルエンザで、毎年2万人から6万人程度亡くなっており、その対策に関連して、十分で良質な睡眠が、風邪やインフルエンザの感染を予防するといった結果が強調されてきました。今回、日本でも同様の結果が得られたことが興味深く、コロナ禍では特に、規則正しい生活を心がけ、生活リズムを保ち、良質な睡眠を得ることにより、免疫力をアップさせることが大切だと考えられます。たとえワクチン接種が始まってもこの心がけは同様に重要で、新型コロナウイルス感染症のワクチンを接種しても十分な睡眠を取らないと抗体ができにく、感染予防が十分でない可能性があります。
睡眠偏差値®とは
睡眠を評価する際、しばしば睡眠時間などの単純な定量データだけに注目が集まりますが、ブレインスリープは、もっと多角的で総合的な観点から睡眠を評価することが重要だと考えました。そこで、睡眠に関する自覚症状や睡眠習慣を含む幅広い視点で睡眠の主観的評価を定量化する質問群を作成し、さらに日本人に馴染みのある「偏差値」として数値化することで、日本人全体の中での相対的な睡眠状態を把握することを可能にするシステムを構築しました。それが「睡眠偏差値®」です。現在は、NTT東日本をイノベーションパートナーとして、企業向け健康経営サービス「睡眠偏差値for Biz」を展開しております。従業員の「睡眠」から企業との「エンゲージメント」を可視化し、さらに、全国の睡眠偏差値と比較することで、自社だけでは表面化されていない課題に新たに気づくことができ、プレゼンティズムを改善することができるサービスです。
調査概要
調査手法:web調査
対象地域:全国
対象者条件:男女
サンプル数:n=10,000ss
調査実施期間:2021年1月
※集団間の睡眠偏差値、スコアの比較においてはt-検定を行い、有意水準5%以下を統計的に有意な差と判定し記載しました。
※昨年と一部対象者、調査項目を変えて調査を行っております。