睡眠の悩みは人それぞれありますが、「眠ってから2時間・3時間ほどで目が覚めてしまう」、「何度も夜中に目が覚めて、その後寝付けない」などの症状に悩んでいる方は「中途覚醒」という不眠症のひとつかもしれません。
この記事では、中途覚醒の原因や治し方を、解説します。
中途覚醒とは?
中途覚醒(ちゅうとかくせい)とは、一度眠りについたあと、翌朝起床するまでの間に何度も目が覚めてしまうことです。ただし、一晩に数回、数秒程度目覚めたり、一度目が覚めても数分ですぐに寝付けたりする場合は、基本的に問題ありません。あくまでも、本人が自覚するくらいハッキリと目が覚め、再度寝付けなかったり、寝てもまたすぐ起きてしまうことを指します。
中途覚醒の症状としては、朝まで熟睡できないことから日中の眠気や疲労感、集中力の低下などが見られます。また、症状が続くとストレスや不安感の増大にもつながるため注意が必要です。中途覚醒は、睡眠の質を大きく損なう症状で、心身の健康に悪影響を及ぼします。
早朝覚醒と中途覚醒の違い
似た症状として、早朝覚醒(そうちょうかくせい)があります。
早朝覚醒は、想定している起床時刻の2時間以上前に目が覚めてしまい、そのあと眠れないか、入眠できても熟睡できない症状のことで、中途覚醒とは区別されています。
これまでどちらの症状も、高齢者に多いとされていましたが、コロナ禍以降、20代から30代の若者にも早朝覚醒の症状が多く見られるようになったと言われています。また、男性よりも女性の方が多いこともわかっています。特に20代後半から30代の女性は、子どもに起こされることが多いのも要因の一つです。
時々目が覚めてしまうくらいなら深刻に考える必要はありませんが、日中の不調や、週に3回以上の中途覚醒や早朝覚醒が3ヵ月以上続く場合は、不眠が慢性化しているといえます。
中途覚醒の原因
中途覚醒の原因は加齢やストレスなど複数あります。
- 加齢
- ストレス
- 病気や治療薬などの副作用
- 生活習慣の乱れ
- 睡眠習慣
自分がどの原因に当てはまるのかそれぞれ見ていきましょう。
加齢
加齢にともなう睡眠の変化は、中途覚醒の主要な原因の一つです。高齢になるにつれ、睡眠時間の減少や徐波睡眠(深いノンレム睡眠)の減少、睡眠効率の低下といった睡眠構造の変化が起こります。これらの生理的変化により、高齢者は寝付きが悪くなり、何度も目が覚めてしまう中途覚醒に悩まされやすくなります。
また、頻尿も中途覚醒の原因の一つとして挙げられます。高齢になると膀胱容量の低下や認知症、前立腺肥大などによって頻尿が起こりやすくなります。夜間頻尿がひどい場合は、泌尿器科などの医療機関を受診することをおすすめします。
ストレス
一般的に、睡眠時は体をリラックスさせる副交感神経が優位になります。ですが、ストレスは交感神経を優位にさせるため、自律神経のバランスを崩して睡眠の質を下げてしまいます。さらに、ストレスによってコルチゾールなどのストレスホルモンが過剰に分泌されることで睡眠の質が低下し、途中で目が覚めやすくなるので注意が必要です。
ストレスを引き起こす原因は主に以下のような項目が挙げられます。
- 職場の人間関係や仕事内容による悩みがある
- 新しい職場環境で仕事に慣れない
- 疲れて自宅に帰ってもリラックスできない
- コロナ禍による環境変化や、将来への不安を抱えている
- 寝る前に覚醒を促すお酒・カフェイン・タバコ(ニコチン)を摂取している
- 在宅ワークで日中の運動量が減った
最初はストレスで眠れなかった状態が、次第に眠れないことがストレスとなることもあります。「眠らなくては!」と、プレッシャーや不安に感じることで眠りが浅くなり、悪循環に陥ることもあるので、就寝前はリラックスするように心がけましょう。
病気や治療薬などの副作用
中途覚醒を引き起こす原因として、睡眠時無呼吸症候群や周期性四肢運動障害、うつ病などが挙げられます。ここではそれぞれ異なる症状を解説します。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に繰り返し呼吸が停止する病気のことです。夜間に繰り返す呼吸停止によって睡眠が浅くなり、夜中に目覚めてしまうことがあります。主に気道が狭まることで生じるため、一般的に、肥満体型の方や、顎が小さい方がかかりやすいのが特徴です。
ただし、加齢によって気道を支える力が弱まり、症状が出る場合もあります。毎晩のように大きないびきをかいている方は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
周期性四肢運動障害
周期性四肢運動障害(PLMD)とは、足を中心とする四肢の筋肉が急速に収縮し弛緩する不随意運動が、睡眠中に何度も起こる睡眠障害のことです。
この運動により深い眠りが妨げられ、中途覚醒が増加します。この周期的な四肢運動にともない脳波上の覚醒反応が生じるため、睡眠の質が低下し、中途覚醒が頻発するのです。
通常、PLMDは単独で発症しますが、むずむず脚症候群などの他の睡眠障害と合併することもあり、適切な診断と治療が必要です。
高血圧
高血圧の方は、交感神経が優位になって緊張や興奮しやすいため、中途覚醒が増加する傾向にあります。
うつ病
うつ病患者は、交感神経の優位や神経伝達物質の異常により、睡眠中の覚醒反応が増加し、中途覚醒が生じやすい傾向にあります。また、うつ病にともなう精神的ストレスや不安感が、睡眠の質を低下させ、中途覚醒を引き起こすとされています。
さらに、うつ病になると徐波睡眠(ノンレム睡眠:深い睡眠)が減少し、浅い眠りになりやすいため、外部刺激に対する反応性が高まり睡眠障害が生じてしまうのです。
生活習慣の乱れ
厚生労働省の健康情報サイトによると、質の悪い睡眠は生活習慣病の罹患リスクを高め、かつ症状を悪化させることがわかっています。
生活習慣の乱れは以下のような例が挙げられます。
- ブルーライトの影響(就寝直前までPCやスマートフォンを見る)
- 不規則な食事
- 運動不足
- ニコチン・アルコールの過飲
- 寝る前のカフェイン
これらの生活習慣の乱れを改善することが、良質な睡眠を保つことにつながります。特に就寝前のスマートフォンやパソコンの画面の光を見ることによって脳が刺激され、脳は昼間だと錯覚することが中途覚醒の原因になるので注意しましょう。
また、朝に日光を浴びることで、脳から睡眠に関わるホルモン「メラトニン」が分泌されます。ですが夜勤や夜更かしなど、生活リズムが乱れて日光を浴びる機会が減ると「メラトニン」が分泌されず、睡眠の質が下がります。20代などの若い方でも、活動する時間帯が一定でなければ、中途覚醒になる可能性があるのです。
睡眠環境
騒音や窓から入るネオンなどの光によって目が覚めてしまうこともあります。換気扇やテレビの音、ドアの開閉音などの生活機器が発する程度の音量でも、半数の方は睡眠が阻害されるとも言われているので、睡眠時には、家の外からの騒音や光を遮断し、テレビやラジオを消しましょう。
また、高温多湿の環境では体温調節が困難になり、深い睡眠が得られにくくなります。そのため、エアコンの設定や寝具の選択、寝衣の素材など寝室の温湿度環境を整えることが大切です。
自分の体型に合っていない寝具では眠りの質が低下してしまい、朝までぐっすりと眠ることができません。
中途覚醒を予防するには
寝付きを良くし、朝までぐっすり眠るには、原因の明確化と自律神経のコントロールがポイントです。簡単にできる予防策を6つご紹介します。
ストレスを減らす
日常生活におけるストレス要因を見つけ出し、適切な対処法を見つけることで中途覚醒の改善につながります。例えば、仕事や人間関係のストレスを軽減するために、リラックスできる時間を設けたり、瞑想やヨガなどのストレス解消法を取り入れたりすることが効果的です。
また、睡眠の質を高めるためには、就寝前のルーティンを整えることも重要です。読書やお風呂など、リラックスできる行動を意識することで、心身ともに落ち着いた状態で就寝できるようになります。
さらに、適度な運動や食事管理など、生活習慣の改善にも取り組むことで、ストレスの軽減と良質な睡眠の確保につながります。このようにストレスマネージメントを意識しながら、総合的なアプローチをおこなうようにしましょう。
生活習慣を見直す
中途覚醒に対処するには、ストレスマネージメントに加えて、生活習慣の改善にも取り組むことが重要です。まず、カフェインの摂取を控えましょう。カフェインは睡眠の質を低下させ、中途覚醒を引き起こす主な要因の一つです。就寝前は特に気をつける必要があり、コーヒーやエナジードリンクなどのカフェイン含有飲料の摂取を避けることも大切です。
また、寝る前のスマートフォン操作や過度なニコチン・アルコールの摂取も睡眠の妨げになるため控えるようにします。そのうえで規則正しい生活リズムを心がけることで体内時計が整い、良質な睡眠が得られるようになります。就寝時刻と起床時刻を固定し、日中の活動量を適切に保つことができれば中途覚醒の改善につながるでしょう。
無理に寝ようとしない
眠気を感じないのに、無理に寝ようと横になっていると、焦りが出てしまい、身体が緊張状態になります。
「また寝れなかったらどうしよう」といった不安感が高まり、逆に眠れなくなってしまうのです。これにより不眠の悪化や熟睡感を感じにくくなってしまうのでおすすめできません。
また、適切な睡眠時間は人によって異なるので、無理に長く眠る必要はありません。
ぬるめのお湯に入る
眠る1〜2時間程度前に、38度程度のぬるめのお湯で25〜30分ほど入浴すると、副交感神経が優位になってリラックス効果が高まるので、ストレスで睡眠が浅くなっている方におすすめです。
また、入浴によって一時的に上がった体温が下がるタイミングで眠気を誘発させられます。腹部までつかる半身浴の場合は、40度程度のお湯に30分ほど入浴すると同様の効果があります。ただし、入眠直前に42度以上の熱いお風呂につかると、交感神経が働くので気をつけましょう。
睡眠環境や寝具にこだわる
睡眠の質を高めるためには、寝室の温度や湿度を適切に調整することが重要です。室内の許容温度は13度~29度で、布団の中の温度は33度前後が良いとされています。また、光や音といった外部刺激も睡眠の質に影響するため、暗くて静かな寝室環境を作ることを意識しましょう。遮光カーテンの設置も有効です。
さらに、
枕やマットレスといった寝具の選択も睡眠の質に大きな影響を与えます。マットレスは自分に合った硬さであるか、枕は適切な高さのものか、体温調節に適した素材の寝具かどうかなど、選び方によって快適な睡眠環境を整えられます。
リラックスアイテムを使う
入眠前にリラックスする方法として、アロマや音楽を活用するのがおすすめです。アロマテラピーは、心身をリフレッシュさせる効果が期待できます。好きな香りのアロマオイルを使ってマッサージしたり、アロマディフューザーで部屋に香りを広げたりするのがよいでしょう。
特に、ラベンダーやカモミールなどの香りは、リラックス効果が高いと言われています。一方、音楽を聴くのもよい方法です。ゆったりとしたテンポの曲や自然音を聴くことで、脳がリラックスした状態に導かれます。
夜中に目が覚めた場合の過ごし方
夜中に目が覚めてしまった場合、焦らずに落ち着いて対応することが大切です。まずは深呼吸をして心を落ち着かせましょう。
眠れそうにない場合は無理に寝ようとせず、布団から出て本を読んだり静かな音楽を流したりするなどして、リラックスできる空間を整えます。その他に軽いストレッチや瞑想をおこなうのも効果的です。
そして、再び眠くなったら寝室に戻り、リラックスした状態で就寝するようにしましょう。このように焦らずに自身のリズムに合わせて対応することが、質のよい睡眠につながります。
また、下記では眠れない夜にできる対処法を解説しているので、ぜひ参考にしてください。
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中途覚醒は睡眠の量だけでなく質にもこだわる
一般的に、成人で必要な睡眠時間は7時間程度と言われています。ですが年齢や体質、体調、日中の活動量などによって、体が回復するために必要な睡眠時間は異なります。そのため、眠れない時間があっても焦る必要はありません。
最近では、睡眠時間だけではなく、睡眠の質に注目が集まっています。睡眠時間は確保した方がよいことはもちろんですが、睡眠の質が高ければ少ない睡眠時間内でも効率的に体や脳を休めることができ、翌朝、頭がクリアな状態を維持できます。集中力アップ、イライラしない安定したメンタルなど、仕事のパフォーマンスにもつながります。
睡眠の質を高めるために、中途覚醒を治す方法を試すほか、睡眠環境や寝具にこだわることが大切です。
人生の3分の1を占めるといわれる睡眠時間を、より快適な時間にするためにも、生活習慣、枕やマットレスなどを見直してみてはいかがでしょうか。
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