仕事や家事などが忙しく、睡眠時間が短くなったタイミングで頭痛にも悩まされるようになった…という悩みを持っている方に、この記事では、睡眠時間と頭痛の関係性について詳しく解説しています。
寝不足と頭痛は関係している?
睡眠は、起きているあいだに働いた脳や身体を休ませるために必要な時間なので、寝不足が続くことによって、頭が痛くなってしまうことがあります。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針 2023」によると、「睡眠不足は、日中の眠気や疲労に加え、頭痛などの心身愁訴の増加、情動不安定、注意力や判断力の低下に関連する作業効率の低下・学業成績の低下など、多岐にわたる影響を及ぼし、事故などの重大な結果を招く場合もある」と記されています。
適切な睡眠時間には個人差がありますが、日本人の平均睡眠時間は6~8時間と言われています。
また、睡眠時間が長ければよいというわけではなく、睡眠の質がよくなければ十分に休息を得ることができず、睡眠不足になるので、睡眠の質にこだわることも大切です。
寝不足による頭痛とその原因
寝不足による頭痛には、大きく分けて「緊張型頭痛」と「片頭痛(偏頭痛)」の2種類があります。
緊張型頭痛
緊張型頭痛が起こる主な原因は、筋肉の疲労で、ギリギリと締め付けられるような痛みが断続的に続きます。30分程度の短い時間から数日間続くこともあり、頭痛のなかでは最も多いと言われています。
また、ストレスも緊張型頭痛の発症リスクの一つとされています。さらに、睡眠不足自体がストレスを引き起こして蓄積させる要因の一つであることから、一度発症してしまうと改善が難しいといえるでしょう。
加えて寝不足によるひどい頭痛があると、身体の疲れがとれず自律神経が乱れ、吐き気をともなう場合もあります。
メカニズム
緊張型頭痛は、寝不足により、頭や首、肩周りの筋肉が過剰に緊張し、周囲の血管や神経が圧迫されることで発生する頭痛です。そのため、緊張型頭痛は、頭痛だけでなく、肩こりや眼精疲労、全身倦怠感などをともなうこともあります。 長時間の同じ姿勢や、目の疲れ、ストレス、冷房による冷え過ぎなどに気をつけましょう。片頭痛
片頭痛が起こる主な原因には、三叉神経(さんさしんけい)と呼ばれる顔の感覚を脳に伝える末梢神経が関係していて、こめかみにズキズキした痛みが生じます。片側に起こることが多いですが、まれに両側に症状が現れます。また、痛みの強さとして、少しズキズキと感じる程度から吐き気や嘔吐をともなう激しい痛みまであります。
片頭痛は頭痛の発作を繰り返すのが特徴です。要因はストレス、天候の変化、温度、音、光などいくつかありますが、そのうちの一つが睡眠の過不足と言われています。片頭痛患者を対象とした海外の調査では、49.8%が睡眠障害を有していたとの報告もあります。
参考:「The triggers or precipitants of the acute migraine attack」L Kelman
なお、緊張型頭痛、片頭痛はともに睡眠をとりすぎたときにも起こります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
寝すぎで頭痛が起こる原因とは?タイプ別の治し方や予防策について
メカニズム
片頭痛では、ストレスや疲労により脳の血管が拡張し、拡張した血管が顔の感覚センサーの役割を担っている三叉神経を圧迫します。三叉神経が圧迫を受けると痛みの原因物質を放出するため、血管が炎症を起こします。
長時間眠ると副交感神経が優位になって血管が拡張しやすくなるので、寝不足だけではなく寝過ぎたときにも起こりやすいと言われています。
また、枕などの寝具が自分に合っていないために頭痛が発生する場合もあります。高さや固さが合わないとスムーズな寝返りを打つことができず、睡眠の質が悪くなるので、長時間眠っても疲れが取れません。 短い時間でしっかりと休息を取るために、枕などの寝具にこだわりましょう。
寝不足による頭痛は病気の兆候?
寝不足による頭痛かと思ったら、実は病気の兆候だったというケースも考えられます。以下に頭痛をともなう病気の一例をご紹介します。
うつ病
うつ病は症状の一つとして頭痛をともなうことがあります。また、うつ病の症状自体が睡眠に悪影響を及ぼし、眠りの質を低下させて不眠の原因になります。うつ病は睡眠障害の合併が多いので、よく注意しなければなりません。
自律神経失調症
自律神経失調症とは、自律神経系がうまくコントロールされずに引き起こされる様々な症状の総称です。具体的な症状には動悸、発汗、めまい、ほてり、胃痛、腹痛、下痢、吐き気などがあり、頭痛もそのうちに一つに該当します。自律神経失調症として頭痛を発症すると、それが原因で睡眠不足に陥ってしまうケースもあります。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群は、寝ている最中になんらかの原因で気道が塞がれ、いびきや無呼吸の症状が生じる病気です。酸素を取り込むことができないので高炭酸ガス血症が起き、頭痛を発症します。
くも膜下出血
くも膜下出血は脳出血の一種で、「脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)」と呼ばれる血管のふくらみが破裂することで起こります。近年の調査・研究により、くも膜下出血の特徴的な前兆の一つとして、激しい頭痛があることが判明しました。強烈な痛みが続くようであれば医療機関の受診を検討しましょう。
寝不足による頭痛の対処方法
寝不足による頭痛を緩和させる対処法をご紹介します。頭痛の種類によっては合わない方法もあるので、気をつけましょう。
緊張型頭痛は温める、片頭痛は冷やす
心身の緊張から起こる緊張型頭痛は、首や肩周りの筋肉の血行が悪くなることで起こるので、お風呂に浸かって身体を温めたり、肩や首に蒸しタオルなどを当てて温めるのがおすすめです。 反対に、血管が拡張して痛みが起こる片頭痛は、冷やすことで痛みが軽減されることが多いので、冷却シートや氷枕などで冷やしましょう。
軽めの運動をする
緊張型頭痛の場合、ウォーキングやジョギングなどのほどよい運動をすると症状が軽くなることがわかっています。緊張型頭痛の予防にもつながるので、気分転換や体力向上もかねて、無理のない範囲でエクササイズを取り入れましょう。
ただし、片頭痛の場合は身体を動かすことで痛みがひどくなるケースがあります。こめかみが痛む頭痛の場合は運動を避けたほうがよいでしょう。
カフェインを摂取する
血管が拡張して痛みが起こる片頭痛には、脳の血管を収縮させる作用があるカフェインの摂取がおすすめです。ですがカフェインを摂取しすぎると頭痛を悪化させることもあります。そして治癒する成分は含まれていないので、あくまでも緩和の目的程度にして、痛みが続く場合は医療機関に相談しましょう。
また、脳の血流が悪くなることによって起こる緊張型頭痛は、カフェインの摂取で悪化する可能性があるので気をつけましょう。
カフェインに関しては、摂取する時間が遅いとかえって睡眠の質を下げる要因になります。カフェインの血中濃度は摂取後30分~2時間程度で最大になり、効果が半分になる半減期は2~8時間と幅があるため、夕食後はカフェイン摂取を控えると質のよい睡眠を得やすいです。
頭痛薬を利用する
痛みを我慢したくないときは、頭痛薬に頼りましょう。緊張型頭痛には、市販されている薬で対応できる、ロキソプロフェンやイブプロフェン、アセトアミノフェンが配合されたものが効果を発揮します。一方、片頭痛には、トリプタン系と呼ばれる医薬品がおすすめなので、早めに医療機関を受診しましょう。
ただし、頭痛薬を月に10日~15日以上内服することを3か月以上続けた結果として頻繁に頭痛が発生する場合、「薬剤乱用頭痛」が起きている可能性があります。頭痛に対して鎮痛剤を何度も内服している場合は、早めに頭痛外来を受診することをおすすめします。
頭痛を軽減するツボを押す
頭部や肩周りには、頭痛が軽減するツボがあります。 ツボを押すときは、照明を暗くし、身体の中の余分なものを出すような気持ちで深呼吸しながらおこないましょう。息を細く長く吐きながら押しやすい指でツボを押し、ゆっくり息を吸いながら圧迫を緩めてください。それぞれ、5秒くらい刺激し、5~10回程度繰り返します。
頷厭(がんえん)
左右の耳のうえから、こめかみの辺りにかけての髪の生え際で、口を開け閉めしたときに動く部分。 頭痛や眼精疲労、耳鳴りなどに効果があるとされています。
百会(ひゃくえ)
鼻の延長線上と左右の耳を頭上で結んだラインが交差する頭頂部のぼぼ真ん中で、少し凹んでいる部分。 寝不足でぼんやりした気分をスッキリさせてくれると言われています。
風池(ふうち)
首の中心にある太い筋肉から指2本分外側、後頭部の髪の生え際の左右にあるくぼんでいる部分。頭痛や目の疲れ、鼻づまり、首や背中の疲れ、身体のだるさ、不眠、そして、風という文字が使われている通り、風邪の初期症状にも効果があるとされています。
天柱(てんちゅう)
首の後ろにある、2本の太い筋肉の外側のくぼみの部分です。風池より、やや内側かつ下側です。 頭痛や眼精疲労、顔のむくみなどに効果があるとされています。
肩井(けんせい)
首を前に倒した際に出っ張る骨と、肩先を結んだラインの中央部分、肩の筋肉の中央部分。 肩周りの血流を促すことで、頭痛を和らげます。指先で軽く揉んだり、拳で軽く叩くほか、ツボを刺激しながら首をすくめるように肩を上げ、力を抜いてストンと落とす方法もおすすめです。
医療機関を受診する
緊張型頭痛、片頭痛はどちらも予防薬の内服、ストレスマネジメント、理学療法など医療的に対処できます。しかしこれらの対処をおこなうには医師の診断を受けなければなりません。セルフケアで頭痛症状が改善しない場合は早めに医療機関を受診することをおすすめします。
寝不足の頭痛を起こさないためにできる予防方法
本章では寝不足の頭痛を起こさないためにできる予防方法を3つご紹介します。
生活習慣を整える
まず努力したいのは生活習慣を整えることです。規則正しい起床時間や就寝時間を心がけ、寝すぎに注意しつつ充分な睡眠時間を確保することで頭痛の予防につながります。この他、1日3食をバランスよく摂ることも大切です。
ストレスを解消する
前述の通りストレスも頭痛の原因になり得ます。仕事や家事、育児などのストレスをなるべく溜め込まないようにしましょう。例えば趣味に没頭する時間を作ったり、仲のよい家族や友人と交流したりすることがストレスの解消につながります。
睡眠の質を高める
睡眠は時間だけではなく質も大切です。日々の睡眠の質を高めることも効果的な頭痛対策になります。睡眠の質を高める方法には入浴や運動をする、睡眠環境を整えるなどがあります。睡眠環境を整える方法は次の章を参考にしてください。
寝不足で頭痛を起こさないためには睡眠環境を整えよう
睡眠を測って深く眠れているかチェックする
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部屋の温度と湿度を整える
部屋の温度と湿度は睡眠の質に大きく影響します。一般的に、快適に眠るには部屋の温度を25〜26度、湿度を40〜60%に保つのがよいと言われています。寝具や空調機器を活用して適切な室温・湿度を保ちましょう。