そもそも寝汗とは?
寝汗は、年齢や季節にかかわらず、誰にでも生じる生理現象です。 日中に体内にこもった熱を放出する体温調節の役割があり、健康な大人の場合、一晩にコップ1杯程度の寝汗をかくといわれています。このため寝汗をかくこと自体は問題ありません。 しかし、着替えが必要になるほどひどい寝汗は、東洋医学で「盗汗(とうかん)」と表現され、生理現象とは別の良くない汗として区別されることもあります。 盗汗とは、眠っている間に人体に必要な水分と気がこっそりと盗み出されたという意味で、何らかの病気が原因となる可能性もあるため注意が必要です。ひどい寝汗の原因
「寝汗のために着替えが必要」「朝には寝具が寝汗でぐっしょり濡れている」「寝汗のために何度も目が覚めてしまう」などのひどい寝汗には、主に以下のような原因が考えられます。- 過度なストレス
- 過度なアルコール摂取
- 睡眠時無呼吸症候群などの病気
- 睡眠環境
- 妊娠中・更年期のホルモンバランスの乱れ
- 生理前に起こるPMS(月経前症候群)
過度なストレス
寝汗には、自律神経の副交感神経の働きが関係しています。 自律神経には睡眠中に優位に働く副交感神経と、日中に優位に働く交感神経があり、この2つがバランスよく働くことで心身ともに元気に過ごすことができます。 しかし、過度なストレスを受けると自律神経が乱れ、交感神経と副交感神経の切り替えがうまくできなくなります。その結果、睡眠中の体温調整がスムーズにおこなわれず、多量の寝汗をかくことがあります。過度なアルコール摂取
アルコールを摂取すると、体内で「アセトアルデヒド」という有害物質が発生します。 アセトアルデヒドは、肝臓などの臓器の働きによって分解され、汗や尿、呼気となって体外に排出されます。 このためアルコールを摂りすぎると、大量のアセトアルデヒドが発生し、分解するために寝汗が増える可能性があります。睡眠時無呼吸症候群などの病気
ひどい寝汗=盗汗(とうかん)は、睡眠時無呼吸症候群や多汗症、何らかの感染症の症状としてあらわれることもあります。 睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に何度も呼吸が止まる病気です。医学上は、1時間に5回以上無呼吸がある場合に軽症と診断され、回数が増えるごとに、中等症、重症となります。 就寝中に無呼吸が起きると体が低酸素状態となるため、苦しくなって寝汗の量が増えることがあります。 その他にも、室温が高い、ストレスがある、アルコールの飲みすぎなど、ひどい寝汗の原因が思い当たらない場合は、自律神経や甲状腺、感染症など、何かしらの病気が原因の可能性が考えられます。 ひどい寝汗が毎日のように続いたり、睡眠環境を変えても寝汗がおさまらない場合は、早めに医療機関を受診しましょう。睡眠環境
睡眠時のスムーズな体温調節には、寝室の温度や湿度を快適に保つことが重要です。 寝室の室温は季節により変わり、夏は25〜27℃前後、冬は15〜18℃前後となります。また、湿度は通年50〜60%が理想です。 また、寝具と人との間にできる空間の温度や湿度を指す寝床内温度は30℃前後、湿度は50%前後が快適とされています。 ただし、一晩中エアコンを一定温度にすると睡眠中の体温調節がうまくいかないこともあるようです。その場合は、タイマー機能や寝始めと入眠後で室温を調整できる「ねむり運転」などの設定を季節に応じて活用するとよいでしょう。 また、室温や湿度に合った寝具、衣類を選ぶことも大切です。 暑い日に冬用寝具を使ったり、厚手のパジャマを着るなど、季節に合わない睡眠環境で眠ると、寝汗をかきやすくなります。妊娠中・更年期のホルモンバランスの乱れ
妊娠や更年期障害など、ホルモンバランスの乱れも寝汗の量が増える要因です。ホルモンバランスが乱れると自律神経にも悪影響を及ぼすため、発汗が多くなります。 とくに妊娠初期は、ホルモンバランスの乱れだけでなく基礎体温も上がるため、寝汗の量が多くなるでしょう。 更年期障害では、加齢によってホルモンバランスが乱れることで、筋肉痛やイライラ感、ほてりなど、さまざまな身体的・精神的な症状があらわれます。汗をかきやすくなるのもその症状の一つのため、多量の寝汗の原因として考えられます。生理前に起こるPMS(月経前症候群)
女性の場合、生理前に起こるPMS(月経前症候群)も、一時的に寝汗がひどくなる原因の一つです。 月経前症候群(PMS)とは、生理前の3~10日間から始まる、身体的あるいは精神的な不調を指します。個人差はありますが、女性は生理前の高温期は、体温が0.3~0.5度上昇するため、寝汗が多くなるのです。 なお、月経前症候群(PMS)の原因は女性ホルモンの変化だけでなく、様々な要因が関連するとされています。ひどい寝汗を放置すると何が起こる?
ひどい寝汗を放置していると、以下のように健康への悪影響を及ぼしたり、トラブルを招いたりするおそれがあります。- 睡眠の質が低下する
- 体臭や寝具のニオイの原因になる
- 風邪をひきやすくなる
- 肌トラブルを引き起こしやすくなる
1:睡眠の質が低下する
多量の寝汗をかくと、布団の中が蒸れて不快に感じます。その結果、夜中に目が覚めてしまったり、眠りが浅くなったりすることがあります。2:体臭や寝具のニオイの原因になる
寝具やパジャマが寝汗で濡れると、雑菌が繁殖してニオイの元となります。寝具をこまめに洗濯をしないと、嫌なニオイが染み付いて、睡眠の妨げになることも。 また、ストレスや過度な疲労が寝汗の原因の場合、汗の臭いが強くなることもあります。3:風邪をひきやすくなる
大量にかいた寝汗が冷えると、体温を奪うため、風邪をひきやすくなります。4:肌トラブルを引き起こしやすくなる
ひどい寝汗は放置すると、あせもやニキビなど肌トラブルの原因にもなります。 あせもは、大量の汗をかくことで汗の通り道である「汗管」が詰まってしまい、炎症を起こしている状態です。かゆみを伴うこともあるため、それで寝つきが悪くなると睡眠の質の低下にもつながります。寝汗がひどい場合には病気が隠れている可能性もある
ひどい寝汗が続く場合は、その陰に重大な病気が潜んでいる可能性もあります。 ひどい寝汗の原因として考えられる病気としては、先述した睡眠時無呼吸症候群のほかにも、必要以上に汗をかいてしまう多汗症や自律神経のバランスが乱れることによる自律神経失調症、膠原病(こうげんびょう)やバセドウ病などの甲状腺の病気、逆流性胃腸炎などが挙げられます。 寝汗の量は年齢差や個人差が大きいため、明確な受診の目安はありません。 しかし、寝汗の不快感を含め、微熱や倦怠感、体重減少など気になる症状が続いている場合は一度医療機関を受診するようにしましょう。寝汗がひどい時の対策方法
寝汗がひどい時は、まずは原因となっているものが何か考え、それに合ったアプローチをすることが大切です。 寝汗がひどい時に簡単に取り入れられる対策としては、主に以下のようなものが挙げられます。- ストレスの解消
- 生活リズムの改善
- 寝る前の水分補給
- 睡眠環境や寝具の見直し
- 病院の受診