睡眠不足による影響は?リズムの崩れによる疾患の可能性
睡眠については様々な研究がなされていますが、明らかになっていることは決して多くありません。しかし、睡眠と病気リスクが密接に関係していることは色々な報告により明確になってきました。睡眠には、大きく分けて以下の5つがあります。
(1)眠気や疲労を回復させる
(2)記憶の整理や定着を促す
(3)自律神経やホルモンバランスを整える
(4)免疫力を高める
(5)脳の老廃物を除去する
睡眠障害や、慢性の睡眠不足“睡眠負債”により、充分な睡眠が確保できないと、これらの機能が傷害され、様々な疾患のリスクが高まることが判明してきました。
この記事では睡眠負債が招く様々な病気について説明していきます。
睡眠不足が招く様々な疾患
睡眠不足は肥満や高血圧、糖尿病など多くの生活習慣病に直結しています。また、眠らないことで精神的に不安定になり、鬱、アルコール依存、薬物依存にもなりやすくなり、短命傾向にもあるのです。
睡眠不足は脳に悪影響!
脳は体の中でも一番活発な臓器で、使えば使うほど老廃物も産生されます。脳に溜まった老廃物は覚醒時にたまり、就寝時に多く排出されています。
脳脊髄液が脳を洗い流すようにして老廃物が除去されますが、この働きは脳のグリア細胞が担うリンパ管様システムという意味で、グリンパティック・システムと言われています。
睡眠が十分でないと、アミロイドβ等の脳の老廃物がきちんと排出されず沈着し脳にダメージが与えられ、アルツハイマーなどの認知症や精神疾患の引き金になるのです。若い頃は無理がきくように思われがちですが、睡眠不足によってこういったダメージは蓄積されますので 、目に見えない形で病気のリスクが高くなっているのです。
睡眠負債の原因の代表例である、睡眠時無呼吸症候群とは?
睡眠障害によっても睡眠負債は生じ、その原因の代表例が睡眠時無呼吸症候群です。睡眠中に呼吸が頻回に止まり、その度に覚醒反応が生じ、持続する深い睡眠がとれないのです。
睡眠時無呼吸症候群は、太った中年男性がかかるものというイメージがないでしょうか?しかし、日本人は元来、顎が小さく奥まっているので気道が狭く、年齢や性別に関係なく、また痩せていても生じます。大人だけでなく勿論、小児でも罹患し、心不全などにも合併しますので、お年寄りにも発症ピークがあります。
生活習慣病、脳血管障害、心虚血性疾患など様々な病気のリスクが2−4倍になることもあり、中等度以上で治療せずに放置すると8年の間に約4割が死亡する非常に危険な病気です。
睡眠リズムが崩れると…
また、シフト体制の不規則勤務の人たちにも体調不良を伴う睡眠障害は多く発生しています。概日リズム睡眠障害とも言われ、体温などの体内リズムと、睡眠のリズムがずれる〔脱同調〕ことで起きる病気です。時差のある地域に旅行した際に生じる時差ボケも、体内リズムと睡眠・覚醒相がずれることで生じ、交代勤務では慢性的に時差ぼけに近い状態が引き起こされています。
子供の睡眠不足はより深刻
子供でも睡眠障害は生じ、特に体や脳が急速に成長する時期にいる子供の睡眠不足は、大人のものよりも深刻です。因果関係ははっきりしていないものの、発達障害では睡眠障害が生じることが多く、逆に睡眠障害が発達障害を引き起こす可能性も指摘されています。
大阪府堺市では、生活習慣による睡眠不足や リズムの乱れが不登校につながることも多いことから、子供達に睡眠の大切さを知ってもらう「眠育」プロジェクトを立ち上げ、地域をあげて、子供と両親に睡眠教育を行っています。この結果、学校不適応や情緒障害、特に不登校が明らかに減少したそうです。日常の生活態度が改善し、成績にもいい影響がでています。
睡眠時無呼吸症候群のように、専門施設での治療の必要な睡眠障害も多くありますので、睡眠障害の治療をするためには、専門の医療機関で日本睡眠学会の「睡眠医療専門医」をしっかり選ぶことが重要です。
【参考】
※ http://jssr.jp/data/list.html