スギやヒノキなどといった植物の花粉が飛散する季節、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどのアレルギー症状が現れる病気を「花粉症(アレルギー性鼻炎)」と呼びます。花粉症の症状を抑えるため、内服薬や点鼻薬、目薬などを活用する方も多いのではないでしょうか。
でも副作用が少ない薬を飲んでいるはずなのに、日中にボーッとしてしまったり、睡魔に襲われることもしばしば……。
この記事では、そんなお悩みを抱えている方に、花粉症による眠気の原因と対処法を解説しています。
花粉症シーズンに眠くなるのはなぜ?

花粉が飛散する時期は花粉の種類によって異なりますが、日本で花粉症の主な原因となっているスギ花粉が飛散するのは2〜4月頃がピークです。
スギ花粉の飛散が多い季節は、「普段よりも眠くなる気がする……」と感じる方が多いかと思います。
様々な理由が考えられますが、その一つに「自律神経の乱れ」があります。春先は気温差が激しく、自律神経の乱れによる眠気やだるさが起こりやすい時期です。
睡眠と深い関わりのある自律神経は、身体を動かすときに優位になる交感神経と、身体を休めるときに優位になる副交感神経の2種類に分かれており、互いにバランスをとりながら身体の調整をしています。春先の激しい気温差により自律神経のバランスが崩れることで、眠気やだるさを感じやすくなると考えられています。
また、眠くなる原因はほかにも以下のようなものがあげられます。
- 花粉症の症状
- 花粉症の薬の影響
花粉症の症状で眠くなる?
花粉症の症状は、アレルギー性鼻炎とアレルギー性結膜炎の組み合わせです。花粉が鼻に入った直後にくしゃみや鼻水が生じ、少し遅れてから鼻づまりが生じます。
これらの症状により酸素不足になったり、熟睡できずに寝不足になってしまうことがあり、その結果、日中に眠気が生じてしまうと考えられています。
酸素不足による眠気
鼻の粘膜が炎症を起こして腫れ上がると、鼻の通り道が狭くなって取り込める酸素量が減るため、自然と口呼吸をするようになります。ですが、口呼吸では取り込める酸素の量が減ってしまいます。
また、喉の乾燥により花粉が付着しやすくなるので炎症が悪化し、取り込める酸素量も減るという悪循環。その結果、脳への酸素が不足することで、日中でも眠気を感じるようになると言われています。
花粉症の症状による寝不足
花粉症の症状が強い方は、鼻がつまって呼吸がしにくい、絶えず鼻をかみたくなる、くしゃみが止まらないなどの症状が夜間も続き、なかなか寝付けなかったり、睡眠中に目が覚めてしまった経験があるかと思います。十分な睡眠がとれないことで身体の疲れが取れず、日中でも眠気を感じるようになります。
また、花粉症の諸症状により、集中できなかったり、頭がボーッとしてしまうなど、仕事や日常生活で悪い影響が出てしまう方もいます。
花粉症の薬で眠くなる?

花粉症の薬を飲むと眠くなる理由を理解するには、花粉症の仕組みと、花粉症の薬として処方されることの多い「抗ヒスタミン薬」を知っておく必要があります。
花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)の仕組み
アレルギーとは、外部からの抗原(花粉の他にもハウスダスト、ダニ、飲食物、動物、金属などの異物)を排除しようと、身体が過剰反応した状態です。 抗原自体は無害ですが、様々な条件が揃ってしまうと、肥満細胞から放出された「ヒスタミン」という化学伝達物質が、体内の「ヒスタミン受容体」と結合してアレルギー反応が起こります。
鼻のなかでアレルギー反応が起こると、鼻水や鼻づまり、くしゃみなどの症状が出ます。また、目でアレルギー反応が起こると、目の痒みや異物感などの症状が出ます。
抗ヒスタミン薬の働き
アレルギー反応を引き起こす化学伝達物質「ヒスタミン」と体内の「ヒスタミン受容体」が結合するのをブロックし、ヒスタミンの作用を抑える(抗ヒスタミン作用)のが「抗ヒスタミン薬」です。
しかし、ヒスタミン受容体には脳の働きを活発にする作用もあるので、抗ヒスタミン薬がヒスタミン受容体と結合することで脳の働きが低下し、眠気やふらつきなどの副作用が出る場合があります。
特に、抗ヒスタミン薬を飲み始めてからの数日は、血中濃度が急激に高まるので、眠気やふらつきなどが出やすい傾向にあります。数日飲み続けると、血中濃度が一定になるため、症状は出にくくなります。
花粉症の薬を飲んでいないとどうなる?
「今日は症状が軽いから」「大事な予定があって眠くなりたくないから」と、薬の服用を中断しようと考える方も少なくありません。
しかし、花粉症の薬を飲んでいない期間があると、花粉が多い日に症状が悪化したり、悪化した症状に対して薬の効果があまり発揮されなかったりするおそれがあります。
抗ヒスタミン薬の服用をはじめた場合は、症状の重さや眠気に関わらず継続して服用することが花粉症の症状を抑えるためのポイントとなります。
花粉症による眠気対策1:花粉の吸引量と花粉症の薬に気をつける
眠気を予防するには、基本的な花粉症対策が重要です。厚生労働省の「平成22年度花粉 症対策」をもとに説明します。
花粉を吸わない
まず、アレルギー症状の原因となる「抗原=花粉」を吸わないことが大切です。花粉症の方はもちろん、現在花粉症でない方も、花粉を必要以上に吸わないことが今後の発症予防となります。
マスクや鼻マスクを使う
花粉を吸わないためには、マスクや鼻マスクを使うことが効果的です。マスクの着用は、花粉を吸い込む量を3分の1から6分の1程度まで減らす効果があると言われており、布やウレタン製のマスクより、不織布マスクの方が花粉を防御できると言われています。また、自分の顔のサイズに合ったマスクを着用することで隙間からの花粉の侵入を防げます。
屋外での滞在時間を減らす
花粉の飛散量が多い日は、屋外での滞在時間を減らしましょう。花粉が多い日とは、気温が高い晴れの日や、空気が乾燥して風が強い日、雨上がりの翌日や気温が高い日が2〜3日続いたあとです。特に、3月頃はスギ花粉のピークとなるので気をつけましょう。
また、時間帯でいうと昼前後と夕方に多く花粉が飛散することがわかっているため、外出の際はこれらの時間帯を避けるとよいでしょう。
参考:花粉症対策 スギ花粉症について日常生活でできること|環境省・厚生労働省
花粉をつけない・持ち込まない
花粉の吸引を予防するためには、花粉をつけない・部屋に持ち込まないことも大切です。
花粉を身体につけない
目に花粉が付着すると、目の痒みや充血を引き起こすので、メガネの着用が効果的です。目に入る花粉の量は、使用しない場合と比べて、通常のメガネでも40%程度減少し、防御カバーのついた花粉症用のメガネでは65%程度減少すると言われています。
また、コンタクトレンズによる刺激がアレルギー性結膜炎を悪化させる可能性があるため、花粉が飛散する時期はメガネを利用しましょう。
ついた花粉を落とす
身体についてしまった花粉を落とすために、ウイルス対策の基本である手洗いやうがいも効果があります。
鼻の粘膜についた花粉は、生理食塩水での鼻うがいがおすすめです。ただし、冷たい水や水道水は刺激になって鼻炎が悪化する可能性があるため避けましょう。
目が痒いときは、洗顔して目の周りの花粉を落としたり、涙の成分に近い点眼液で花粉を洗い流してください。
また、皮膚からも花粉などの抗原が侵入してアレルギーを引き起こすと言われています。肌が乾燥するとバリア機能が弱まるので、しっかり保湿しましょう。
花粉を部屋に持ち込まない
服の素材によって花粉のつきやすさが異なります。一般的にウール製は木綿や化繊と比べて花粉が付着しやすいので、アウターはウール素材ではなくツルツルした素材がおすすめです。
さらに花粉を部屋に持ち込まないために、玄関前で花粉をはらい、玄関まわりで上着を脱ぐようにしましょう。 花粉は髪や顔などにも付着しているので、帰宅後すぐにシャワーを浴びて着替えることで、花粉を部屋にまき散らさないことができます。
また、部屋干しや、乾燥機や浴室乾燥などの利用により、洗濯物への花粉の付着を防ぎましょう。
眠くなりにくい花粉症の薬を使う
前述した通り、脳の働きを活発にする作用のあるヒスタミン受容体が抗ヒスタミン薬と結合することにより、脳の働きが低下して、眠気を誘発してしまいます。しかし最近では眠くなりにくい薬も多く取り扱われているため、ご自身の生活スタイルに合った成分を選びましょう。
内服薬で改善したい方には、第二世代の抗ヒスタミン薬がおすすめです。市販されている第二世代抗ヒスタミン薬は、フェキソフェナジン、セチリジン、エピナスチン、エバスチンなど様々です。とはいえ、完全に眠気を感じないわけではないので、絶対に眠くなりたくない方は漢方薬を服用してもよいでしょう。 また、点鼻薬や目薬であれば、眠気が出る心配はほとんどありません。
自分にどのような薬が適しているかがわからない場合は、自己判断せずに耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。
質の高い睡眠を取る
日中の眠気を防ぐためには、質の高い睡眠を取ることも重要です。花粉シーズンは鼻づまりで眠れない方も多いでしょう。その場合、鼻や目元の血流を促進すると症状が緩和するとされています。
ブレインスリープでは、花粉シーズンにおける睡眠の質を高めるアイマスクを提供しています。丸洗いできるうえ、静電気の発生を予防する特殊な加工がされているため、室内の花粉が付着しにくいのが特徴です。また、温冷ジェルが付属しており、シーンに合わせて使い分けができます。
ブレインスリープ アイマスク ホット+クール花粉症による眠気対策2:睡眠環境を整える

花粉症の症状により熟睡できない可能性があるため、そもそもの睡眠環境を整えておくことも大切です。
厚生労働省健康局が発行した「健康づくりのための睡眠指針2014」では、室温や湿度、寝床内温度が寝つきや睡眠の深さに影響することや、就寝前の寝室の照明や睡眠時に聞こえる音環境などによっても睡眠の質が左右されると記されています。
部屋の明るさ(光)
夜になると分泌される、睡眠を促すホルモン「メラトニン」は、照度が高い光を浴びると分泌が抑制されて脳が覚醒し、スムーズな入眠を妨げるので、眠る1時間前からは強い光を浴びないようにしましょう。
また、入眠前は色温度が高い白色や青色といった寒色系の明かりよりも、色温度の低いオレンジ色に近い暖色系の明かりの方がリラックスできるとされています。 眠るときに真っ暗が苦手な方は、間接照明を顔から離れたところに置いて調節するのがおすすめです。
音
WHOの欧州地域向け環境騒音ガイドライン(2018)の解説によると、睡眠中の音量は、一般的に40dBA(デシベルエー)以下の音環境(図書館の中程度の静かな音量)が望ましいと発表されています。0dBA以上の音は睡眠に影響し、50dBA以上(換気扇程度の音量)になると、半数の人は睡眠が阻害されるとも言われています。
また、テレビやラジオをつけたまま眠ると、脳が覚醒して睡眠の質が悪くなってしまうため、睡眠時には、家の外からの騒音を遮断し、テレビやラジオは消しましょう。感覚刺激の少ない、暗く無音の環境では覚醒度が高まり、些細な音が気になったり、不安感や緊張感が高まって眠りにくい場合があります。
電化製品などの小さな音が気になって眠れない場合は、睡眠用のヒーリング音楽などを流し、タイマーで切れるように設定しておくのがおすすめです。
参考:欧州地域向け環境騒音ガイドライン(2018)の解説|横島潤紀、森長誠
寝具
マットレスや枕は体格や睡眠の悩みに合ったものを選び、掛布団は肌触りや軽さ、暖かさを意識しましょう。さらに、吸湿性や放湿性に優れた寝具を選ぶことで、湿気を溜め込まずに良質な睡眠を得られます。
また、私服のTシャツやスウェットではなく、睡眠の質を高めてくれるパジャマを着用することも大切です。パジャマは不必要な装飾や締め付けがなく、寝返りが打ちやすくなります。
室温
寝室の室温は、夏は25〜27度前後、冬は15〜18度前後、湿度は通年50〜60%が理想と言われています。また、寝床内温度は30度前後、湿度は50%前後が快適とされています。
入眠時は、深部体温が下がることによって眠気が促されるので、室内温度と湿度に気を配りましょう。温度が低すぎても高すぎても、深部体温が下がらず、寝つきが悪くなり、睡眠中の覚醒が増えるなど、睡眠の質が低下する恐れがあります。
また、夏と冬では外気温が異なるので、各シーズンに応じて寝具やエアコン、加湿器などをうまく利用して睡眠環境を調整しましょう。
参考
健康づくりのための睡眠指針 2014|厚生労働省
Effects of thermal environment on sleep and circadian rhythm|岡本和恵・水野航
花粉症による眠気は予防できる!
花粉症を予防する方法は複数あります。いろいろと試しながら自分に合った方法を見つけて、花粉症とうまく付き合いましょう。
また、そもそもの睡眠の質を高めることは花粉症シーズン以外でも役立つので、この機会に睡眠環境や、睡眠をサポートしてくれる商品を検討してみてはいかがでしょうか。
花粉症による眠気対策3:睡眠環境の向上をサポートする商品を取り入れる
快適な睡眠を得るためには、睡眠環境も整える必要があります。ここでは、ブレインスリープが提供している、睡眠環境をサポートしてくれる商品をご紹介します。賢く取り入れて、花粉症の季節でも快適な睡眠を手に入れてください。