花粉が飛散する季節になると悩まされる「花粉症」。鼻水や鼻づまり、目の痒み、喉の痛み、肌荒れなど、様々な症状が現れるため、内服薬や点鼻薬、目薬などを活用する人が多いかと思います。
副作用が少ない薬を飲んでいるはずなのに、日中にボーッとしてしまったり、睡魔に襲われる事もしばしば…この記事では、そんなお悩みを抱えている方に、花粉症による眠気の原因と対処法を解説しています。
花粉症シーズンは眠くなる?
スギ花粉の飛散が多く、一般的な花粉症シーズンとされる冬から春にかけては、普段よりも眠くなる気がする…という方が多いかと思います。様々な理由が考えられますが、春先は気温差が激しく、自律神経の乱れによる眠気やだるさが起こりやすい時期でもあります。
睡眠と深い関わりのある自律神経は、体を動かすときに優位になる交感神経と、体を休めるときに優位になる副交感神経の2種類に分かれており、互いにバランスをとりながら体の調整をしています。ですが、春先の激しい気温差により自律神経のバランスが崩れることで、眠気やだるさを感じやすくなると考えられます。
花粉症の症状で眠くなる?
花粉症の症状として、鼻水や鼻づまり、目の痒みなどが一般的に知られていますが、酸素不足になったり、熟睡できずに寝不足になってしまうこともあり、その結果、日中に眠くなる場合もあります。
酸素不足による眠気
鼻の粘膜が炎症を起こして腫れ上がると、鼻の通り道が狭くなって取り込める酸素量が減るため、自然と口呼吸をするようになります。ですが、口呼吸では取り込める酸素の量が減ってしまいます。
また、ノドの乾燥により花粉が付着しやすくなるので炎症が悪化し、さらに取り込める酸素量が減るという悪循環。その結果、脳への酸素が不足することで、日中でも眠気を感じるようになると言われています。
花粉症の症状による寝不足
花粉症の症状が強い方は、鼻がつまって呼吸がしにくい、絶えず鼻をかみたくなる、くしゃみが止まらないなどの症状が夜間も続き、なかなか寝付けなかったり、睡眠中に目が覚めてしまった経験があるかと思います。十分な睡眠がとれないことで体の疲れが取れず、日中でも眠気を感じるようになります。
また、花粉症の諸症状により、集中できなかったり、頭がボーッとしてしまうなど、仕事や日常生活で悪い影響が出てしまう方もいます。
花粉症の薬で眠くなる?
花粉症の薬を飲むと眠くなる理由について、花粉症の仕組みと、花粉症の薬として処方されることの多い、抗ヒスタミン薬について解説します。
花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)の仕組み
アレルギーとは、外部からの抗原(花粉の他にもハウスダスト、ダニ、飲食物、動物、金属などの異物)を排除しようと、体が過剰反応した状態のことを言います。
抗原自体は無害なのですが、様々な条件が揃ってしまうと、肥満細胞から放出されたヒスタミンという物質が、体内のヒスタミン受容体と結合してアレルギー反応が起こります。
鼻の中でアレルギー反応が起こると、鼻水や鼻づまり、くしゃみなどの症状が出て、目でアレルギー反応が起こると、目の痒みや異物感などの症状が出ます。
抗ヒスタミン薬の働き
アレルギー症状の発症を防いだり改善する薬が、抗ヒスタミン薬です。抗ヒスタミン薬がヒスタミン受容体と結合することによって、アレルギー反応を和らげます。
ですがヒスタミン受容体には脳の働きを活発にする作用もあるので、抗ヒスタミン薬がヒスタミン受容体と結合することで脳の働きが低下し、眠気やふらつきなどの副作用が出る場合があります。
特に、抗ヒスタミン薬を飲み始めてからの数日は、薬の血中濃度が急激に高まるので、眠気やふらつきなどが出やすい傾向にあり、数日飲み続けると薬の血中濃度が一定になるため、症状が出にくくなります。
花粉症による眠気対策1:花粉の吸引量と花粉症薬に気をつける
眠気予防のためにも、基本的な花粉症対策を行いましょう。厚生労働省の「平成22年度花粉症対策」では、花粉症の症状や悪化しないための注意点、治療などについて記されています。
1:花粉を吸わない
まず、アレルギー症状の原因となる「抗原=花粉」を吸わないことが大切です。花粉症の方はもちろん、現在花粉症でない方も、花粉を必要以上に吸わないことが今後の発症予防となります。
マスクや鼻マスクを使う
花粉を吸わないためには、マスクや鼻マスクを使うことが効果的です。マスクの着用は、花粉を吸い込む量を3分の1~6分の1程度まで減らす効果があると言われており、布やウレタン製のマスクより、不織布マスクの方が花粉を防御できると言われています。また、自分の顔のサイズに合ったマスクを着用することで隙間からの花粉の侵入を防ぐことができます。
屋外での滞在時間を減らす
花粉の飛散量が多い日は、屋外での滞在時間を減らしましょう。花粉が多い日とは、気温が高い晴れの日や、空気が乾燥して風が強い日、雨上がりの翌日や気温が高い日が2~3日続いた後です。特に、3月頃はスギ花粉のピークとなるので気をつけましょう。
2:花粉をつけない・持ち込まない
花粉の吸引を予防するためには、花粉をつけない・部屋に持ち込まない意識も大切です。
花粉を体につけない
目に花粉が付着すると、目の痒みや充血を引き起こすので、メガネの着用が効果的です。
目に入る花粉の量は、使用しない場合と比べて、通常のメガネでも40%程度減少し、防御カバーのついた花粉症用のメガネでは65%程度減少すると言われています。また、コンタクトレンズによる刺激がアレルギー性結膜炎を悪化させる可能性があるため、花粉が飛散する時期はメガネを利用しましょう。
ついた花粉を落とす
ついてしまった花粉を落とすために、ウイルス対策の基本である手洗いやうがいも効果があります。鼻の粘膜についた花粉は、生理食塩水での鼻うがいがオススメです。冷たい水や水道水で行うと刺激になって鼻炎が悪化する可能性があるので気をつけましょう。
目が痒い時は、洗顔して目の周りの花粉を落としたり、涙の成分に近い点眼液で花粉を洗い流しましょう。また、皮膚からも花粉などの抗原が侵入してアレルギーを引き起こすと言われています。肌が乾燥するとバリア機能が弱まるので、しっかりを保湿しましょう。
花粉を部屋に持ち込まない
服の素材によって花粉のつきやすさが異なります。一般的にウール製は木綿や化繊と比べて花粉が付着しやすいので、アウターはウール素材ではなくツルツルした素材がオススメです。さらに花粉を部屋に持ち込まないために、玄関前で花粉をはらい、玄関まわりで上着を脱ぐようにしましょう。
花粉は髪や顔などにも付着しているので、帰宅後すぐにシャワーを浴びて着替えることで、花粉を部屋にまき散らさないことができます。また、洗濯物は、部屋干しや、乾燥機や浴室乾燥などを利用して、花粉の付着を防ぎましょう。
3:眠くなりにくい花粉症の薬を使う
花粉症の症状を和らげるための「抗ヒスタミン薬」は、副作用に眠気を誘発するものが多いのですが、眠くなりにくい薬もあるので、ご自身の生活スタイルに合った成分を選びましょう。
内服薬で改善したい方には、第二世代の抗ヒスタミン薬がオススメです。市販されている第二世代抗ヒスタミン薬は、フェキソフェナジン、セチリジン、エピナスチン、エバスチンなど様々です。とはいえ、完全に眠気を感じないわけではないので、絶対に眠くなりたくない方は漢方薬を服用してもよいでしょう。
また、点鼻薬や目薬であれば、眠気が出る心配はほとんどありません。
花粉症による眠気対策2:睡眠環境を整える
花粉症の症状により熟睡できない可能性があるため、そもそもの睡眠環境を整えておくことも大切です。
厚生労働省健康局が発行した「健康づくりのための睡眠指針2014」では、室温や湿度、寝床内温度が寝つきや睡眠の深さに影響することや、就寝前の寝室の照明や睡眠時に聞こえる音環境などによって睡眠の質が低下する可能性があるため、睡眠環境が大切だと記されています。
1:部屋の明るさ(光)
夜になると分泌される、睡眠を促すホルモン「メラトニン」は、照度が高い光を浴びると分泌が抑制されて脳が覚醒し、スムーズな入眠を妨げるので、眠る1時間前からは強い光を浴びないようにしましょう。また、入眠前は色温度が高い白色~青色の寒色系の明かりよりも、色温度の低いオレンジ色に近い暖色系の明かりの方がリラックスできるとされています。
眠る時に真っ暗が苦手な人は、間接照明を顔から離れたところに置いて調節するのがオススメです。
2:音
睡眠中は、一般的に40dBA(デシベルエー)以下の音環境(図書館の中程度の静かな音量)が望ましいと言われています。40dBA以上の音は睡眠に影響し、50dBA以上(換気扇程度の音量)になると半数の人は睡眠が阻害されるとも言われています。
また、入眠前にリラックスする音楽を聴くことは良いとされていますが、テレビやラジオをつけっぱなしにして眠ると、覚醒が促されて睡眠の質が悪くなってしまうので、睡眠時には、家の外からの騒音を遮断し、テレビやラジオを消しましょう。
感覚刺激の少ない、暗く無音の環境では覚醒度が高まり、些細な音が気になることや不安感や緊張感が高まって眠りにくい場合があります。電化製品などの小さな音が気になって眠れない場合は、睡眠用のヒーリング音楽などを流し、タイマーで切れるように設定しておくのがオススメです。
3:寝具
マットレスや枕は体格や睡眠の悩みに合ったものを選び、掛布団は肌触りや軽さ、暖かさを意識しましょう。さらに、吸湿性や放湿性に優れた寝具を選ぶことで、湿気を溜め込まずに良質な睡眠を得ることができます。
また、私服のTシャツやスウェットではなく、睡眠の質を高めてくれるパジャマを着用するようにしましょう。パジャマは不必要な装飾や締め付けがなく、寝返りが打ちやすくなります。
4:室温
寝室の室温は、夏は25〜27℃前後、冬は15〜18℃前後、湿度は通年50〜60%が理想と言われています。また、寝床内温度は30℃前後、湿度は50%前後が快適とされています。
入眠時は、深部体温が下がることによって眠気が促されるので、室内温度と湿度に気を配りましょう。温度が低すぎても高すぎても、深部体温が下がらず、寝つきが悪くなり、睡眠中の覚醒が増えるなど、睡眠の質が低下する恐れがあります。
また、夏と冬では外気温が異なるので、各シーズンに応じて寝具やエアコン、加湿器などをうまく利用して睡眠環境を調整しましょう。
花粉症による眠気対策3:睡眠環境をサポートする商品を使用する
快適な睡眠を得るためには、様々な睡眠環境を整える必要があります。最近では、睡眠環境をサポートしてくれる商品がたくさん販売されているので、賢く取り入れて、花粉症の季節でも快適な睡眠を手に入れましょう。
花粉症の眠気は予防可能
花粉症による眠気を完全に無くすことはできないかもしれませんが、予防策はあるので色々と試しながら自分に合った方法を見つけて、花粉症とうまく付き合いましょう。
また、そもそもの睡眠の質を高めることは花粉症シーズン以外でも役立つので、この機会に睡眠環境や、睡眠をサポートしてくれる商品を検討してみてはいかがでしょうか。
【参考】
厚生労働省健康局:
「健康づくりのための睡眠指針2014」
厚生労働省:
「平成22年度花粉症対策」