2024年版有職者10,000人の睡眠調査結果報告~睡眠の質のいい人と悪い人では年間経済損失額の差は76万円~

株式会社ブレインスリープ(本社:東京都千代田区、代表取締役:廣田敦、以下「ブレインスリープ」)は、全国47都道府県の有職者1万人(性別・年齢・都道府県で割付)を対象として、「睡眠偏差値®」調査を2020年から実施しており、2024年で5年目を迎えました。睡眠偏差値は、睡眠習慣や睡眠負債など睡眠状態を直接判定する項目に加えて生産性やストレスの程度、睡眠時無呼吸症候群(SAS)のリスクなどを総合的にスコアリングする手法です。今後この調査結果を活用し、日本の睡眠のさらなる改善を目指すべく、様々な活動をおこなっていきます。
睡眠偏差値® 調査結果ページ https://brain-sleep.com/service/sleepdeviationvalue/research2024/

 

  • 調査結果サマリー

ブレインスリープは、睡眠に関する様々な尺度から「睡眠偏差値®」を構成し、日本人の睡眠実態を把握する試みや企業の従業員様向けの健康経営サービスなどへの展開を進めてきました。今回、2024年版の睡眠偏差値の測定を実施し、新たに下記5つの項目について、日本人の睡眠における特徴を明らかにしました。

1.日本の睡眠時間の変化
2.生産性(経済損失額)と睡眠の関係性
3.  出社するのが憂鬱に感じる日数と睡眠の質の関係性
4.睡眠偏差値TOP1,000とWORST1,000の特徴

 

  • 西野精治コメント/ブレインスリープ最高研究顧問、「スタンフォード式 最高の睡眠」著者

 

本年度の調査結果でも、日本の睡眠時間に増加傾向が見られ、2024年の睡眠時間は2020年に比較し23分増えていることが確認されました。しかしながらOECD加盟国の平均睡眠時間に比べ、依然として1時間38分も短い傾向が認められ、理想の睡眠時間として50分程度長い睡眠時間をあげています。7割の人の睡眠が生産性に影響を与えると実感し、睡眠の質に課題がない人の経済損失額は年間89万円で、要改善の人では年間165万円と76万円もの差があることがわかりました。睡眠偏差値の悪い人は、睡眠時間が短く、睡眠の質が悪いことで特徴づけられますが、時間外労働などによる、総労働時間の長い人が多く、就寝前のスマホの使用率が極端に高いことが判明しました。企業の労働生産性の向上を目指すには、個人の生活習慣改善のみならず、時間外労働の軽減など、会社全体として取り組むべき課題も明確になりました。

 

1.日本の睡眠時間の変化:2023年と比較して+7分。理想の睡眠時間との差は50分。
2024年の有職者1万人における平均睡眠時間は6時間50分と、過去5年の調査において最も長い時間となりました。調査開始時の2020年と比較すると23分と睡眠時間は増加していますが、OECD加盟国の平均睡眠時間である8時間28分よりも圧倒的に短く、依然として日本の睡眠は世界でも最低レベルにあると言えます。また理想の睡眠時間を調査したところ、7時間40分と実際の睡眠時間との差が50分あったこともわかりました。
また、2023年12月に厚生労働省から発表された「健康づくりのための睡眠ガイド2023(案)」において、成人の推奨睡眠時間は6時間以上とされていますが、本調査において6時間未満の睡眠時間の割合は23.7%を占めており睡眠不足は今なお日本における大きな課題であると考えられます。

*全データにおいて一元配置分散分析を行い有意差ありと確認(p<0.01)。また、前年との睡眠時間の比較についてはBonferroni補正したt検定を実施し、有意差ありと確認(いずれもp<0.01)

 

2.生産性(経済損失額)と睡眠の関係性:睡眠の質が悪いと経済損失額が高い
睡眠の質の悪化は、仕事のパフォーマンスにも大きな影響を与え、企業の損失にも繋がることが近年報告されています。産業事故の多くも睡眠不足や睡眠障害が原因で起きているといわれています。
今回の調査では改めて、生産性と睡眠の関係性を調査したところ、「睡眠が生産性に影響を与えているか」という設問に対して、回答者の70.0%が「強く影響している」または「影響している」と回答し、睡眠と生産性の関係に対する理解が進んでいることがわかりました。
また、睡眠の質のランク別に経済損失額※1を調査したところ、睡眠の質と経済損失額に相関が見えてきました。睡眠の質に課題がないAランクの人の経済損失額は年間89万円で、要改善のDランクの人では年間165万円と76万円の差があることがわかりました。これは睡眠の質を改善することで、従業員の経済損失額が低減し、ひいては企業の労働生産性の向上につながる可能性を示唆する結果といえます。

※1経済損失額:自身の生産性を0-100%で表現した際の回答値と年収を掛け合わせ経済損失額を算出

睡眠の質(ランク):オリジナルの質問の回答結果をスコアリングし、さらに4段階A~Dランクに置き換えました。(A:課題なし B:軽度な課題あり C:課題あり D:要改善)

*睡眠の質と経済損失額との関係性においては、一元配置分散分析を行い有意差ありと確認(p<0.01)。また、ランク間の比較については、Bonferroni補正したt検定を実施し有意差ありと確認(いずれもp<0.05)

 

3.出社するのが憂鬱に感じる日数と睡眠の質の関係性:睡眠の質が悪い人ほど出社することに対して憂鬱に感じている
メンタルヘルスと長時間労働の関係性は以前より注目されていますが、近年の研究で長時間労働はメンタルヘルス悪化の直接的な原因ではなく、長時間労働から起こる睡眠不足がメンタルヘルス悪化を引き起こしていることが報告されています※2。本調査では、出社するのが憂鬱に感じる日数と睡眠の関係性について調査しました。
出社することに対して憂鬱と感じている日数が週1回以上と回答された方は全体の約6割となり、その中でも週5日以上と回答された方は2割以上に達しました。また、出社するのが憂鬱と感じる日数が0日の人(n=3,931)は睡眠の質スコアが平均76.6でしたが、憂鬱と感じる日数が多くなるにつれて同スコアの平均点は減少し、週5日以上憂鬱と感じる人と比べると、8.7ポイントもの差があることが確認されました。
なお、本調査では、出社することが憂鬱と感じる日数と睡眠時間には同じような関係性は見られませんでした。

* Games Howell法による多重比較を実施し、0-1日間、1-2日間で有意差ありと確認(いずれもp<0.01)
※2 Tenshi Watanabe,et al. https://www.mdpi.com/1660-4601/19/11/6715

 

4.睡眠偏差値TOP1,000とWORST1,000の特徴
睡眠偏差値TOP1,000人とWORST1,000人について、睡眠時間、睡眠の質、睡眠習慣、働き方などを比較したところ、多くのポイントで特徴がみられました。
まず、平均睡眠時間においては、TOP1,000は7時間12分と本調査全体の平均睡眠時間6時間50分より22分長く、比較的十分な睡眠がとれていました。一方、WORST1,000は6時間32分と全体平均と比較して約18分短い結果となりました。
睡眠の質スコアにおいては、TOP1,000とWORST1,000には28.6ポイントの差がありました。睡眠の質スコアに影響を与える睡眠習慣の中でも特に「就寝前のスマホの利用率」に関しては明確な差異が確認されました。TOP1,000の就寝前のスマホ利用率が7.7%と低いのに対して、WORST1,000は50.5%と半数以上が利用していることがわかりました。スマホの使用に関しては、ブルーライトが悪影響を及ぼすと言われることが多くありますが、最近は画面上でブルーライトはカットされていることもあり、ブルーライトの影響よりもSNSやメールを確認すると脳が覚醒してしまうことの方が睡眠に影響を与える傾向にあります。入眠困難や中途覚醒の要因にもつながるなど、睡眠の質が悪くなってしまいます。
また、働き方にもおいても差が確認されました。TOP1,000とWORST1,000では、総労働時間は1時間20分、特に時間外労働時間では1時間33分の差があり、いずれもWORST1,000の方が長い時間働いていることが確認されました。長時間労働すると人は睡眠時間を削る傾向にあり、睡眠不足を招きやすくなります。さらに不規則な働き方でもあるシフトワーカーの割合もWORST1,000の方が8.5%多い結果となりました。

* t検定を実施し有意差ありと確認(p<0.01)

 

  • 睡眠偏差値® 調査結果ページ

https://brain-sleep.com/service/sleepdeviationvalue/research2024/
2024年度は睡眠全体に加え、睡眠環境における調査を重点的に行いました。発表した内容とは別に誰と一緒に寝ているか、温湿度、就寝環境のこだわり、入浴方法などのデータを業種・職種・性年代・地域別にご提供が可能です。
※本調査内容をご利用の際、出典元として『睡眠偏差値®2024 ブレインスリープ調べ』と必ず記載いただくようお願いいたします。

【調査概要】
調査手法:web調査   対象地域:全国   対象者条件:男女   サンプル数:n=10,000ss
調査実施期間:2024年1月
※集団間の睡眠偏差値、スコアの比較においては、一元分散分析、あるいはt-検定を行い、有意水準5%以下を統計的に有意な差と判定し記載しました。
※昨年と一部対象者、調査項目を変えて調査を行っております。

 

  • 睡眠偏差値®とは

 
 

睡眠に関する自覚症状や睡眠習慣を含む幅広い視点で睡眠の主観的評価を定量化する質問群を作成し、さらに日本人に馴染みのある「偏差値」として数値化することで、日本人全体の中での相対的な睡眠状態を把握することを可能にするシステム。睡眠に関する商品やサービスの検証や研究領域、企業の健康経営サービス「睡眠偏差値for Biz」として展開しております。睡眠の主観評価として幅広くご活用いただくことが可能です。

ブレインスリープ健康経営コンサルティング:https://brain-sleep.com/service/sleepdeviationvalue/