豊島の和紙糸「WAGAMI」を使用した「和紙糸製寝具カバー」の効果検証を実施~寝苦しさが改善し、さらに睡眠の質が向上する可能性を確認~

株式会社ブレインスリープ(本社:東京都千代田区、代表取締役:道端孝助、以下「ブレインスリープ」)は、快適なライフスタイルの提案を目指す豊島株式会社(代表取締役社長:豊島半七、名古屋市中区、以下「豊島」)が(株)ITOI生活文化研究所より技術サポートを受け共同開発した和紙糸「WAGAMI」が表面を覆う「和紙糸製寝具カバー」の睡眠への効果検証(以下「本取組み」)を行いました。本検証から寝具カバーの素材の違いが、睡眠潜時*1・離床潜時*2の改善に寄与する可能性が確認されました。
*1睡眠潜時:就床から入眠までに要した時間
*2離床潜時:最終覚醒から起床までの時間

 

  • ブレインスリープ×豊島の取り組み背景

ブレインスリープは、OECD加盟国の中で睡眠時間が最も短い日本の睡眠課題を解決するために、睡眠医学に基づいたプロダクト開発、正しい睡眠情報の発信、睡眠に関する正しいエビデンスの取得支援を行っています。
豊島は2021年8月より、(株)ITOI生活文化研究所のサポートの下、新たに開発されたDIRECT和紙糸製造装置*3を使った和紙糸素材の開発に着手してきました。当初より和紙の持つ吸水・速乾、サラッとした感触、汗をかいてもベト付かない、保湿性、消臭性などの特長を活かすには寝具類が最適と考え、理想的な寝具用素材の開発に成功しました。今回、眠りの深さや快適さを数値化し、快適な睡眠に繋がる商品製作を実現していきたいという豊島からの依頼を受けて、ブレインスリーブは和紙素材の睡眠への効果検証を実施しました。
*3 (株)ITOI生活文化研究所が特許(特許第6822708号)を有する”世界初”の和紙糸製造機。薄い原紙(10gr/m2)を細くスリットしながら(スリット糸を巻き取らず) 、 直接撚りをかけ、 糸づくりが可能な装置

 

  • 検証対象製品:和紙糸製寝具カバーの特徴

豊島が開発した和紙糸製寝具カバーの特徴は以下の通りです。
和紙糸製寝具カバーは、和紙糸「WAGAMI」が表面を覆う生地構造で設計。和紙の持つ“夏は涼しく冬は暖かい”といった機能や、高い吸湿性と放出性を持っています。また、管理された森林で伐採の際に排出された廃材を、和紙の原材料となる木材パルプとして使用。和紙と撚り合わせるポリエステルにもリサイクルPET原料を採用しています。機能性とサステナビリティが両立している寝具カバーです。

 

  • 検証内容

本検証では、上述の「和紙糸製寝具カバー」と一般的な「綿ポリ製寝具カバー」を比較し、寝具カバー素材の違いが睡眠に与える影響の検証を行いました。20~60代の男女6名を対象に、同一環境(温度・湿度指定)*4にて和紙糸製寝具カバーと一般的な綿ポリ製寝具カバーの2種類の異なる寝具カバーを使用して就寝し、睡眠状態を測定いたしました。

対象となる2つの寝具については以下の通りです。
1 和紙糸製寝具カバー:和紙糸製の枕カバー・シーツ・布団カバー
2 綿ポリ製寝具カバー:綿・ポリエステル素材の市販品(枕カバー・シーツ・布団カバー)
(枕カバー・シーツ:綿70%/ポリエステル30%、布団カバー:綿50%/ポリエステル50%)

睡眠状態の評価は、客観的指標として活動量計による測定、主観的指標としてOSA睡眠調査票(MA版)
*5を用いました。また温湿度計による就床内の温湿度測定も行いました。
*4約27℃、相対湿度(RH)80%となるよう温湿度を調整した部屋
*5睡眠感を統計的に尺度化したもので、一般社団法人日本睡眠改善協議会から提唱されている一般的な睡眠評価方法。起床時の睡眠内省を評価する心理尺度で、起床時に「起床時眠気」「入眠と睡眠維持」「夢み」「疲労回復」「睡眠時間」の5因子にカテゴライズされた16項目の質問で評価

 

  • 検証結果

結果①:活動量計による客観データ
綿ポリ製寝具カバー群と比較して和紙糸製寝具カバー群は睡眠潜時と離床潜時が短縮する傾向が見られました。また、統計学的に有意ではなかったものの、睡眠潜時・離床潜時が短縮した結果、睡眠効率*6も改善する可能性が示唆されました。よって、和紙糸製寝具カバーを使用することで、寝つきの良さ・目覚めの良さが改善する傾向であることがわかりました。
*6 睡眠効率:就床時間に対する睡眠時間(中途覚醒時間を除く)の割合

 

結果②:就床内環境測定による客観データ
温度と湿度の変化量においては、綿ポリ製寝具カバー群と和紙糸製寝具カバー群の間に差は見られませんでした。
一方、睡眠中、寝苦しさを起因とする何らかの動作を行った回数を評価するために、就床内温度が大きく変動している回数を比較したところ、和紙糸製寝具カバー群は、綿ポリ製寝具カバー群に対して、変動回数が少なくなる傾向にあることがわかりました。この結果から、和紙糸製寝具カバーの速乾性および吸湿性に優れた機能面の特長により、寝苦しさが軽減したのではないかと考えられます。

 

結果③:VASを用いたアンケートによる主観データ
本検証では主観的評価として、OSA睡眠調査票(MA版)を用いました。その結果、和紙糸製寝具カバー群は綿ポリ製寝具カバー群と比較して、「疲労回復」項目の点数が有意に高いことが確認されました。また、「寝付きの良さ」に関しても改善傾向が見られました。このことから和紙糸製寝具カバーによって睡眠の質が高まり、起床後の疲労回復に繋がったと推察できます。

 

結果に関する考察
上記の検証の結果、「和紙糸製寝具カバー」は、一般的な「綿ポリ製寝具カバー」と比べて、①寝つきの良さ、②睡眠の質向上に寄与する可能性が確認されました。
① 睡眠指標および主観評価の結果より、寝つきの良さが改善する傾向にあることが確認されました。
② 温湿度測定・睡眠指標・主観評価から、速乾性といった和紙糸製寝具カバーの機能によって、体表面の不快感が抑えられ、寝苦しさが軽減することで、疲労感が軽減し、目覚めの良さが向上する可能性が示唆されたと考えられます。

 

試験概要
被験者:20~60代 男女6名
試験方法:クロスオーバー試験
測定項目:活動量、VAS(Visual Analogue Scale)法を用いたアンケート評価、就床内温湿度
試験環境:約27℃、相対湿度(RH)80%となるよう温湿度
試験品:
– 和紙糸製寝具カバー:和紙糸製の枕カバー・シーツ・布団カバー
– 綿ポリ製寝具カバー:綿・ポリエステル素材の市販品(枕カバー・シーツ・布団カバー)
(枕カバー・シーツ:綿70%/ポリエステル30%、布団カバー:綿50%/ポリエステル50%)

 

【ブレインスリープ(最高研究顧問/西野精治氏)コメント】

睡眠はフラジル(壊れやすい)だといわれます。寝室環境などの外的な要因や、不安、緊張など内因的な要因、痛みなどの身体因が良い睡眠を妨げます。特に蒸し暑い日本の夏では、寝室や、寝具などの環境が睡眠に影響を与える事が指摘されています。
今回の検証で、速乾性および吸湿性に優れた、和紙糸製寝具カバーを使用することで、寝つきの良さ・目覚めの良さが改善する傾向がみられ、「疲労回復」が自覚できたことから、良質な睡眠における寝具の重要性が再確認できただけでなく、寝具への新素材応用の可能性が広がり、大変興味深い結果であると思われます。

<西野 精治氏>
スタンフォード大学医学部精神科教授、同大学睡眠生体リズム研究所所長
株式会社ブレインスリープ 創業者 兼 最高研究顧問
認定資格 精神保健指定医、日本睡眠学会専門医、産業医、医師、医学博士

 

■共同検証パートナー
豊島株式会社
代表取締役社長 豊島半七
〒101-0033 東京都千代田区神田岩本町2番1
TEL:03-4334-6100
URL: https://www.toyoshima.co.jp/